平成21年8月21日(金)、22日(土)に地域医療ワークショップ「水と緑とやすらぎの郷で医療を語る」を開催しました。(当日の様子は こちら )
その中で奈良県立医科大学の藤本眞一先生の司会進行のもと、札幌医科大学の夏目寿彦先生に基調講演をしていただき、へき地医療における問題点の解決策を探るワークショップを行いました。医学生、研修医、実際にへき地医療に関わっている病院や診療所の医師、へき地市町村の医療行政担当者で構成する6~7人のグループに分かれ、KJ法(※1)を用いて問題を明確化し、二次元展開法により優先順位を決定し、解決策を検討しました。各班の検討結果は以下のとおりです。(詳しい検討結果は こちら ※2)
※1 KJ法
問題解決のためにアイディアを出す手法の1つで、考案者・川喜田二郎氏のイニシャルに由来。意見・発言を紙
に書き出し、それぞれをグルーピングすることで、解決すべき問題の正体を明確にする方法。
※2 情報検索ツールもなく、また限られた時間の中での討議であったため、事実が正しく認識されていない場合
や、意見をまとめきれなかったグループもありましたが、ご了承ください。
A班
問題点:へき地医療に対する教育が不足している。
解決策:・医学生及び看護学生にへき地医療の重要性・使命感を養う。
・研修医・医療従事者に適切な教育をする。
→その教育は、大学及びへき地支援病院が担う。→強化していく。
・行政がバックアップをする。
B班
問題点:へき地における医師の不足。
解決策:・へき地診療所勤務医師が、へき地から1、2年で都市病院へ
戻ることができるシステムを考案する。
・医師がへき地診療所に勤務することを義務化する。
・へき地診療所勤務医師が、医師としての技能を高めることが
できるような体制を考案する。
・画像診断等の際に、医療機器が十分でないへき地診療所を
大病院がバックアップする体制を考案する。
・福利厚生を充実させる等、へき地診療所勤務医師にとって、
住み良い環境を整備する。
C班
問題点:へき地における人材の不足。
解決策:・スーパーローテートで、地域重点コースを作る。
・へき地ローテートを評価するシステムを構築する。
・開業医と密に連携を取る。
・地域医療従事者(看護師も含む)を、都市部の医療従事者よりも
金銭的に優遇する。
・へき地での勤務経験を国レベルで資格認定し、標榜化できるようにする。
D班
問題点:地域医療への無関心。
解決策:・早い時期から医学生が地域医療の現場・へき地を
経験するようなカリキュラムを作る。
(現在の奈良医大カリキュラムでは、6年生時に経験する。)
・各市町村、県及び国レベルで地域医療及びへき地に関する情報を発信する。
E班
問題点:行政のへき地診療所勤務医師の待遇への配慮が不十分である。
解決策:・へき地診療所の医療機器等の設備を整備する。
・へき地診療所に複数医師を配置し、また中核病院を整備する。
・へき地診療所勤務医師の処遇を改善する。
・地域医療に関する研修体制を整備する。
F班
問題点:へき地における医師不足(特に産科)。
解決策:・計画的に各へき地診療所へ医師を派遣する。
・女性医師が働きやすい環境を作る。
・看護師及び助産師の医療行為を拡大する。
・患者さんの意識を改革する。
G班
問題点:へき地において医師が不足している。
解決策:・へき地診療所で必要となる総合医を、都市部病院内でも育成する。
・開業医を救急に参加させる体制を整備する。
・期間を限定して、へき地へ医師を派遣する。
問題点:地域医療に関する行政の施策が不十分である。
解決策:・へき地の、特に山間部の、道路を整備する。
・地域医療に対する正しい広報をする。
問題点:患者を受け入れる環境が整っていない。
解決策:・介護施設を充実させる。
・救急隊を整備する
H班
問題点:へき地における高齢化。
解決策:・教育体制の充実、子供を生み育てやすい環境の整備及び雇用創出等、
へき地を若年者が住みやすい地域にする。
・へき地の高齢者の方に、シニアボランティアとして活躍してもらう。
・財源の確保。
・都市部に村の施設を作る。
I班
問題点:医師及び医療スタッフの不足。
解決策:・出産等で一度現場を離れた女性医療スタッフが、
再就職しやすい体制を整備する。
・医学部(地域枠等)の定員を増やす。
・医療機関の連携を強化し、医師及び医療スタッフの派遣システムを整備する。
J班
問題点:へき地勤務後の医師としての将来が不安である。
解決策:・研修に、へき地医療コースがあれば、
医師がへき地に不安なく来ることができる。
・行政が、へき地勤務後の医師に、次の勤務先の病院を紹介するようにする。
・へき地勤務中の医師が、研修を受けに行きやすいシステムを確立する。