奈良県は、「名勝奈良公園保存管理・活用計画」、「奈良公園基本戦略」に基づき、奈良公園の価値を高め、奈良公園を名実ともに「世界に誇れる公園」となるよう、様々な取り組みを進めてきました。そのあらましをご紹介します。





目次





1.これまでの取り組み

奈良公園の歴史は、明治13214日、興福寺旧境内地等の風致景観をまもるため、その一画を公園としたことに始まります。その後、明治期に行った公園の拡張整備を経て、今日の奈良公園の姿を形成し、当時より、わが国を代表する公園として広く親しまれてきました。

また、奈良公園は優れた名勝地として、大正11年に国の名勝に指定されて以降、文化財として保存されてきました。さらに平成10年には、春日大社、興福寺、東大寺、春日山原始林などが、世界遺産「古都奈良の文化財」に登録されています。

このように、多くの先人達に愛され、その方々の努力により、社寺と一体となって守られてきた奈良公園には、今日も世界中からたくさんの人たちが訪れています。

 

1-1 「名勝奈良公園保存管理・活用計画」とは

「名勝奈良公園保存管理・活用計画」は、名勝奈良公園の有する本質的価値を適切に保存管理するとともに、地域の共有財産として有効に活用する指針を定めるため、奈良県が平成233月に策定したものです。

より良い計画となるよう、平成19年から4年間、学識経験者などに意見を伺いながらしっかりと議論を深め策定に至りました。

 

      ※ 上図は、奈良市長の承認を得て、平成20年5月奈良市都市計画課の地形図に情報を付加したものです。    

 
      名勝奈良公園保存管理・活用計画について、詳しくはこちら(pdf 2544KB)


1-2 「奈良公園基本戦略」とは 

奈良公園は、春日山原始林の荒廃や、奈良のシカの保護・育成、公園内でも充分に活用できていない土地が存在するなど、多くの課題を抱えています。

「奈良公園基本戦略」は、公園の抱える課題を解決し、一人でも多くの方に公園へ訪れてもらえるよう、名実ともに「世界に誇れる公園」にしていくことを目指すものとして、基本的な考え方や今後の方向性、重点的な取り組みを定めるため、奈良県が平成24年2月に策定したものです。
   基本戦略の策定に当たっては、「名勝奈良公園保存管理・活用計画」を踏まえ、広くご意見を伺いながら、より具体的な取り組みを位置づけられるようしっかりと議論を深めました

 

   ※ 上図は、奈良市長の承認を得て、平成20年5月奈良市都市計画課の地形図に情報を付加したものです。
 
     奈良公園基本戦略について、詳しくはこちら(pdf 2900KB)

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2.取り組みによる成果

奈良県が、「名勝奈良公園保存管理・活用計画」、「奈良公園基本戦略」に基づき、今日までに実施してきた取り組みの一例をご紹介します。

2-1 「維持」:価値を守る 

 




2-2 「利活用」:魅力を活かす 

 

 



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3.「奈良公園地区整備検討委員会」とは

 

奈良公園地区整備検討委員会は、「名勝奈良公園保存管理・活用計画」及び「奈良公園基本戦略」に基づき、奈良県が行う取り組みについて幅広く意見を伺うため、平成22年に設立しました。

検討委員会の委員には、学識経験者のほか、新しい奈良を支える経済界の若い方々の代表者、奈良公園の魅力向上のために活動いただいている団体の代表者など、12名の方々に就任いただいています。

さらに、平成26年に設立した奈良公園地区整備検討部会は、奈良県が行う取り組みについて専門的な見地から意見を伺っています。

 

 奈良公園地区整備検討委員会及び検討部会について、詳しくはこちら(pdf 244KB)

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4.「吉城園周辺地区」、「高畑町裁判所跡地」

「吉城園周辺地区」と「高畑町裁判所跡地」は、名勝地として歴史的・文化的価値は認められるものの、有効に活用されているとは言えない状態です。

特に「高畑町裁判所跡地」は、名勝として価値の高い大正期に作庭された“近代の奈良公園を代表する庭園”が放置されたまま閉鎖されており、誰の目にも触れない状態が続いています。

 4-1 現状と課題 

吉城園周辺地区

吉城園周辺地区は、奈良公園の玄関口に位置し、興福寺、県庁舎を経て、東大寺に至る公園の主要ルートに面しています。興福寺旧境内地の良好な風致景観が残っていることから、大正11年に名勝の指定を受け、昭和2年に追加指定を受けました。

「御認証の間」を残す知事公舎をはじめ、独特な邸宅の佇まいが残る一方で、旧青少年会館をはじめ、一部の建物は老朽化が著しく、また、樹林地も鬱蒼としており、名勝地としての価値を十分に維持できていない状況にあります。
 

 

 

吉城園周辺地区について、詳しくはこちら(pdf 2273KB)

高畑町裁判所跡地

高畑町裁判所跡地は、奈良公園の南端に位置し、鷺池や浮見堂に隣接しています。鷺池と風致林が一体となる良好な風致景観が残る名勝地であったことから、昭和2年に名勝の指定を受けました。

敷地内には、大正期に財閥が作庭した庭園が現存しています。志賀直哉や武者小路実篤など、日本を代表する文化人が交流した場として、近代の奈良公園を代表する庭園と高く評価されています。

しかしながら、近年は竹林の繁茂や塀の倒壊等により、名勝地の環境を損ねているだけでなく、倒木による人身事故も発生しており一般公開も出来ておらず、十分に維持できていない状況にあります。

 

高畑町裁判所跡地について、詳しくはこちら(pdf 511KB)

 

4-2 整備内容

奈良県は、両地区の課題を解決し、名勝地としての価値を高めるとともに、維持・利活用を進めるため、平成22年より8年に渡り、両地区の整備内容について奈良公園地区整備検討委員会に意見を伺いながら議論を深めてきました。

その上で、奈良県は両地区の整備内容が公園の価値を高め、世界に誇れる公園づくりにつながるものと確信し、両地区を奈良公園に編入して取り組みを進めることとしました。

民間活力の導入

両地区のように、名勝の指定受けている文化的価値の高い庭園を有する箇所を維持していくことは、管理者にとって、費用面を含み非常に大きな負担となっています。

このため、奈良県は、将来にわたり両地区を独自に維持していくことは限界があると考え、必要な手段として民間活力を導入することとしました。

民間事業者の公募に当たっては、法規制に定められた規制を遵守することを要求水準とするのはもちろん、奈良公園地区整備検討委員会に幅広く、深く意見を伺いながら、両地区の価値を高めるために求められる前提条件を要求水準とすることを本県が定めました。

平成28年度に選定委員会を開催し、厳正な審査のもと民間事業者を選定した後に、再度、奈良公園地区整備検討委員会で開催し、よりよい整備内容となるよう議論を深めました。

今後は、民間事業者の整備内容も併せて、奈良県がトータルにマネジメントしながら取り組みを進めるとともに、奈良公園地区整備検討委員会を継続的に開催し、整備内容のチェック、ブラッシュアップをしていきます。 

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事業者選定委員会について、詳しくはこちら(pdf 94KB)





「吉城園周辺地区」の整備内容

 

吉城園周辺地区の整備内容について、詳しくはこちら





「高畑町裁判所跡地」の整備内容

 

 

高畑町裁判所跡地の整備内容について、詳しくはこちら
 

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5.奈良公園の価値をさらに高めるために

奈良県は、奈良公園地区整備検討委員会で広く、深く意見を伺いながら、奈良公園の価値を高め、さらに保存管理・活用につながるよう取り組みを進めています。このことについて、「高畑町裁判所跡地」を事例に紹介します。

計画地の価値を正確に把握し、整備内容に活かしています。

高畑町裁判所跡地において保存すべき価値は、名勝指定当時の「(1)庭園遺構」、「(2)地形・地割」、「(3)風致林」です。具体には、大正期に作庭された庭園遺構の他、以前より塀に囲まれており奈良のシカが入れない環境であったことから残っている豊かな植栽環境が価値として評価を受けています。

このため、奈良県は、整備内容の検討に先立ち、専門的な見地から意見を伺いながら植物、樹木、野鳥の調査を実施し、保存すべき樹木、また、伐採すべき枯死木、外来樹木、繁茂した竹林を選定しました。

この結果を踏まえ、奈良県は、名勝に指定された往時の建物(茶室、雪隠(や文化的価値の高い庭園の復元、樹木の適正な管理や塀の補修を行うとともに、往時の風情、佇まいを醸し出す宿泊施設を整備することが名勝奈良公園の価値を高め、継続的に維持できと判断したものです。

建物は、奈良公園の風致景観に調和したデザインとします。

高畑町裁判所跡地の整備内容の主役は、志賀直哉や武者小路実篤などの文豪が茶の湯文化を楽しんだ文化的価値の高い庭園の復元です。その脇役として、庭園の両脇のかつて裁判所官舎があった場所へ宿泊施設と交流・飲食施設をつくります。

これらの建物のデザイン(意匠、形態、規模)は、既存の法規制に定められた基準を遵守することはもちろんのこと、当該地の価値を踏まえ、その風致景観をより高められるものとします。なお、高畑町裁判所跡地につくる建物は、高さ8メートル以内の2階建ての和風のものを予定しており、さらに、民間事業者においても、奈良県と奈良公園地区整備検討委員会の意向を組み込み、建物のボリューム感を抑える工夫をしています。

 世界遺産及び緩衝地帯に影響しないよう、慎重に取り組みます。

奈良公園及びその周辺には、世界遺産「古都奈良の文化財」に指定されている「春日大社」、「興福寺」、「東大寺」、「春日山原始林」をはじめ、それらの緩衝地帯(バッファゾーン)が存在します。これらは、既存の各種規制(文化財保護法や古都保存法、奈良市風致地区条例など)により適切に保存管理されています。

具体には、既存の各種規制により、建物の高さ、建ペイ率、緑地率はもちろんのこと、屋根や外壁の形状、色、材質などをきめ細かく定め、景観を保全しています。なお、世界遺産「古都奈良の文化財」の緩衝地帯(バッファゾーン)には、ならまちの他、西の京駅周辺など既に市街地を形成している地域も、多く含まれています。
 このため、奈良県は、既存の各種規制を遵守することはもちろん、現在よりさらに良い環境や景観になるよう、奈良公園地区整備検討委員会で幅広く、深く意見を伺いながら、慎重に議論し取り組んでいます。このことにより、高畑町裁判所跡地の取り組みは、世界遺産の保護に貢献し、その価値をさらに高めるものになっていると考えています。


 

  ※ 上図は、奈良市HPに掲載されている図面を引用したものです。
  
  世界遺産「古都奈良の文化財」の管理について、詳しくはこちら

 

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6.「高畑町裁判所跡地」に対するご意見について

奈良県は、当該地の価値を守り高めるために進めてきた取り組みについて、期待する声がある一方で、一部には「奈良公園に“巨大なリゾートホテル”はいらない」「景観を破壊する」といったご意見があります。ご意見に対する奈良県の考えをご説明します。  

Q1:奈良公園に”巨大なリゾートホテル”が建つの?


A:断じて違います。建てるのは、平屋の茶室、低い2階建ての和風の宿泊施設と、交流もできて飲食もできる施設です。 

当該地の主役である庭園には、志賀直哉など、日本を代表する文化人が茶の湯文化を楽しんだ場である平屋の茶室を復元します。また、その両脇のかつて裁判所の官舎があった場所へ宿泊施設と交流・飲食施設を建てます。ともに、高さ8メートル以内の2階建ての和風の建物を予定しています。



Q2:宿泊者以外も利用できるの?


A:利用できます。再現した庭園の一般公開をはじめ、より多くの方に利用いただける環境となります。 

現在、当該地は塀に囲まれており維持管理も十分にできていないため、一般の方は敷地内に立ち入れず、庭園に触れていただけない状況にあります。
 
当該地の取り組みを進めることで、今まで閉鎖していた庭園を一般公開し多くの方に楽しんいただくことはもちろん、宿泊施設と交流・飲食施設も一般の方に利用していただくことができるようになります。



Q3:奈良公園の美しい環境を壊すのでは?


A:絶対に景観を壊すことはありません。むしろ、名勝として高く評価された風致景観を高めるものとなります。 

当該地の主役である庭園では、石灯篭が倒れる、竹林が繁茂する、枯死木が増加するなど、名勝として高く評価された風致景観を十分に維持できていない状況にあります。

奈良県は、これらの状況を改善するため、毀損している石積みや石灯篭を積み直し、庭木を剪定し庭園を復元するとともに、広く一般の方に公開するために維持管理していきます。さらに、庭園の両脇に建てる宿泊施設と交流・飲食施設は、庭園はもちろん、鷺池や飛火野など周辺の風致景観と調和したデザインとし、奈良公園全体の風致景観をより高めます。

 

Q4:法規制を緩和するの?

 

A:緩和できません。世界遺産への影響のないよう、その緩衝地帯(バッファゾーン)として法規制をしっかりと守ります。 

当該地は、世界遺産「古都奈良の文化財」の緩衝地帯(バッファゾーン)に位置します。緩衝地帯(バッファゾーン)には世界遺産の構成資産を保護するため、既存の法規制(文化財保護法や古都保存法、奈良市風致地区条例など)できめ細かく定められた規制を守ることが求められています。

 

当該地は、既存の法規制をしっかりと守ることは当然のこと、さらに上乗せして、名勝としての価値を高めるために求められる基準を、奈良公園地区整備検討委員会で幅広く、深く意見を伺いながら定めています。

 

 

Q5:住民の意見はしっかり伝わっているの?

 

A:地元説明会を開催するなど、以前から説明の機会を持っています。今後も、議会、地元説明会など、様々な機会を通じて説明していきます。 

奈良県は、当該地の整備内容について、奈良公園地区整備検討委員会で幅広く、深くご意見を伺うとともに、より多くのご意見を伺えるよう、議会での説明、地元説明会(平成28年3月、同年6月)を2回開催して参りました。

特に、平成28年6月の地元説明会においては、自治会長のみならず自治会全ての住民の方々にお知らせをするとともに、より多くの方に出席いただけるよう、休日の夜間開催、ご意見を伺う時間をしっかりと設けるなどの工夫をしてまいりました。

今後も、議会で説明を継続することはもちろん、整備内容がより具体になった段階には、地元説明会を再度開催し、多くの方のご意見を伺っていきたいと考えております。

 

Q6:国指定天然記念物「奈良のシカ」が住む場所はなくならないの?

 

A:以前から塀に囲まれた場所でシカはいません。今後も、シカが入らなかったことで守られてきた豊かな植栽環境を保護します。

当該地は、以前から塀で囲まれた場所でシカが入ることができませんでした。採食圧等、シカの影響を受けてこなかったことから、奈良公園では珍しい豊かな植栽環境が残っていることが、奈良県が実施した調査からも明らかになり、価値が高いと評価も受けています。

このため、整備内容の検討に当たっては、以前と同様にシカを入れないよう風致景観と調和した塀を再現するとともに、豊かな植栽環境の保護を前提としています。

 

Q7:国指定特別天然記念物「春日山原始林」を壊さないの?

 

A:当該地は春日山原始林ではありません。しかしながら、豊かな植栽環境の保護を前提に、風致景観を高められるよう植栽を維持管理します。

当該地は、国指定特別天然記念物「春日山原始林」の指定範囲に含まれていません。奈良県が実施した調査結果を見ても、その樹種構成は、春日山原始林とは大きく異なっています。

また、当該地は、江戸期までは興福寺の子院、明治期から大正期にかけては財閥の別荘地、昭和7年までは家庭裁判所の官舎がありました。以前より植栽の維持管理が行われており、原生的な植生とは言えません。その一方で、当該地は、鷺池などと一体となった風致林や、シカの影響を受けずに守られてきた奈良公園では珍しい豊かな植栽環境が残っており、価値が高いと評価を受けています。

このため、整備内容の検討に当たっては、豊かな植栽景観の保護を前提に、保存すべき樹木をしっかりと残すとともに、繁茂した竹林や枯死木の伐採を行うこととしています。

 

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7.今後の取り組みについて

地元住民の方から多くの賛成の声をいただいておりますが、一部に強い批判のご意見があることについては、われわれも真摯に受け止めなければなりません。

今後、様々なメディアを通じて、奈良公園の価値をさらに高めていくものであることを、より正しく、より丁寧にお伝えし、皆さまのご理解とご協力をいただけるよう、一層努力してまいります。

改めて、「吉城園周辺地区」、「高畑町裁判所跡地」の整備内容をご覧いただければ幸いです。宜しくお願いいたします。

「吉城園周辺地区」の整備内容について、詳しくはこちら
「高畑町裁判所跡地」の整備内容について、詳しくはこちら

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平成29年5月
奈良県まちづくり推進局 奈良公園室