はじめての万葉集
わが背子(せこ)が古家(ふるへ)の里の明日香(あすか)には
千鳥鳴くなり島待ちかねて
長屋王(ながやのおおきみ)
巻三 二六八番歌
【訳】あなたのもと住んでおられた家のある里の明日香では千鳥が鳴いているようです。山斎(しま)のできるのを待ちかねて。
千鳥の鳴く「島」
 千鳥の名前は「チ、チ」という鳴き声に由来するとも言われます。千鳥の鳴くようすは『万葉集』にも多く詠まれ、「淡海(あふみ)の海(うみ)夕波(ゆうなみ)千鳥(ちどり)汝(な)が鳴けば情(こころ)もしのに古(いにしへ)思ほゆ」(淡海の海の夕波を飛ぶ千鳥よ、お前が鳴くと心もしなえるように昔のことが思われる。巻三・二六六番歌)とあるように、その鳴き声は万葉人の心に訴えかける情緒的なものだったようです。
 さて、本歌は長屋王が「わが背子」と呼ぶ親しい男性の故郷である明日香で、千鳥が「島」を待ちわびて鳴いているようすを詠んだ歌です。明日香から藤原京へ遷都した後のものではないかとされています。
 この「島」はもとは「嬬(つま)」と書かれており、書写の際に誤って「島」とされたとする説もあります。その場合、長屋王の友人の妻が夫の帰りを待ちわびているようすを歌ったものということになるでしょうか。
 一方、「島」だとすると、それは山斎(しま)、すなわち庭園のことだとされます。その場合「背子」が住んでいた明日香の庭園が、遷都によって荒廃していくことの物悲しさを千鳥に託した歌ということになります。
 明日香には飛鳥京(あすかきょう)跡(あと)苑池(えんち)のように、宮などに伴う庭園が多くありました。また、この「島」は、草壁皇子が住んだ嶋宮(しまのみや)の、池の中に島をもつ庭園を指すという解釈もあります。こうした庭園の寂れゆくようすが離郷の感傷を誘ったのでしょう。
 ところが、文献史料や発掘調査の成果からは、飛鳥京跡苑池や嶋宮など明日香の複数の施設が遷都後も維持されたことが分かっています。
 長屋王が実在の荒廃した「島」を詠んだのか、それとも明日香を離れた感傷の中で心に描いた架空の「島」を詠んだのか…千鳥の声に聞いてみたいものです。
(本文 万葉文化館 吉原 啓)
写真
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