人権コーナー

2020年11月号

　国内で初めて新型コロナウイルスの感染が確認された頃、日常生活で、マスクを着用する人は少なかったですが、「初」という言葉に、それまで漠然と抱いていた不安や恐れが人々の中で急に増したように感じます。
　その頃、県外で習い事を始めた友人が、「こちらへはどうやって来たの？」と聞かれ、「奈良から電車で来ました。」と答えると、「え、奈良…。」と、一瞬相手が身を引いたことがあったそうです。友人はそれまでそんな対応をされた経験がなかったので、それ以降、奈良から来たと言わないようにしました。また、別の友人は、他府県ナンバー車への危害を恐れて、隣県に独居する高齢の親を訪ねることに今でも抵抗を感じるそうです。
　初対面の人についてごく限られた情報しかない時、私たちは年齢、性別、職業、居住地、印象などでその人がどんな人か判断する傾向があります。そこに恐れや不安が入り交じると、偏見や差別に発展することがあります。本人に悪意はなくても、偏見や差別の矛先を向けられる人にとっては生命にも関わる問題です。
　一人一人が正しい情報や知識をもって冷静に行動することにより、そのような偏見や差別がなくなる日が来ることを心から願います。