許してはならないネット上の人権侵害



-許してはならないネット上の人権侵害-


 情報通信の高度化により、情報の受発信の範囲が飛躍的に広がるなど利用者の利便性が向上しています。特に、インターネットの発展にともない、誰もが自由に様々な情報に接することができるようになり、個人の意見なども発表できるようになりました。
 しかし、一方では、情報通信サービスを用いた他人への誹謗中傷、プライバシー侵害等、サービスの悪用、濫用によって、他人が被害を受けるという社会的に大きな問題も生じてきています。
 その内容も、
1)名誉毀損問題、2)プライバシーの侵害、3)性に関する有害表現、4)差別表現 等
と多様なものになっています。

 では、このようなネット上での人権侵害等は何が恐ろしいのでしょうか。もし誰かが自分の思いつきやふとした感情、不満のはけ口という形で情報を発信したら、もう取り返しのつかないことになりかねないことなのです。それは、以下のインターネットの特性をご覧いただけれはご理解いただけるでしょう。
1) 瞬時にして非常に広範囲に情報が伝達されること
2) 誰が発信したかなかなか特定できない性質を持つこと
3) 機器の使用さえできれば、誰でも簡単に情報発信できること
 ですから、ネットワーク上であっても、たとえ相手が見えないとしても、常に“お互いの人権”が存在していること、また、尊重し合わなければならないことを認識しておかなければなりません。自ら、他者の人権を侵害する情報を発信しないことはもちろん、どうすればインターネットを通して「お互いを支え支えあえる社会」にすることができるのか、ぜひ考えていただきたいと思います。


1 奈良県内で起こった人権侵害事例

ある団体への電子メール差別事件(1999年5月28日発生)
(概要)
 ある団体に「請求書」と題する電子メールが送付された。
 「請求書
 ○○の私に対する不当な暴力に対する慰謝料として300万円請求する。
 平成4年△△勤務時代、私は同和地区出身である○○にいやみを言われた上に一方的になぐられ蹴られた。
 当時の上司は一切を見ていたが、ある団体の暴力を恐れて私が悪いことにして、本来被害者である私が○○にあやまらさせられた。
 このときの精神的屈辱が遠因となり、わたしはうつ病にかかり今現在休職中である。○○個人に請求するとどんな暴力を振るうかわからないから、そちらに請求する・・・・・・・・・・・(省略)」
 以後、この類似文がいろいろな掲示板に書き込みがなされた。


2 県外での名誉毀損事例

事例1 「パソコン通信名誉毀損訴訟」(94年4月21日提訴)
(概要)
 「リー将軍」というハンドル・ネームの者が、ある人を(これもハンドル・ネームで)名指しで批判するような書き込みをした。その批判された側の女性が、「あなたについての誹謗中傷の書き込みがある」と聞き、大手プロバイダーに対して情報開示を求めた。
 大手プロバイダーは、誰が書き込みをしたか分かるが、「電子通信事業者は通信の秘密を守る義務」があり、法を侵すことになるのでできないと答えた。
 原告は、その書き込みをした被告を別の方法で調べだし、それから、このパソコン通信の運営者である大手プロバイダーとその大手プロバイダーから電子会議室の管理を任されているシステムオペレーターの三者を相手取って、名誉毀損だと主張して、損害賠償請求をした。
 裁判判決で、名誉毀損が成立したのは言うまでもありません。
     ・・・・・・・1999年「ヒューマンライツ」NO、130より要約抜粋

事例2 「朝日新聞掲載記事」(98年10月19日付け)より要約抜粋
(概要)
 ある人の家に突然不審なハガキが送りつけられてきた。その内容は、「その人が同和地区出身であるということを知っている。それを日本中に知らされたくなければ即金で500万円もってこい。」というもので、ハガキの追伸に「日本中に暴露」とあった。(インターネット使用を指す)

事例3 「朝日新聞掲載記事」(99年9月22日付け)より要約抜粋
(概要)
 ネットで「女性殺して」・・・・・・容疑の女性書類送検「批判されて腹が立った」
 殺人依頼の書き込みは7月下旬、北海道警の警察官がインターネット上で偶然見つけ、本人や当該署に知らせた事件です。その事件概要は、7月18日他の人が作成したホームぺージの掲示板に、ある女性が知人の名前や住所とともに「殺してほしいのです(中略)でも彼女の家族や他の人は傷つけずに抹殺することができますか/そうであればお願いします」などと書き込んで脅したものです。