済生会中和病院

柴田優先生

済生会中和病院
指導医
柴田 優 先生

済生会中和病院 小児科 部長
(※所属・役職は2013年3月インタビュー当時)

〒633-0054 奈良県桜井市阿部323番地
TEL:0744-43-5001(内線7909)
FAX:0744-42-4430
病院URL:http://www.chuwa-hp.jp/

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  • プロフィール
    1965年に奈良県橿原市に生まれる
    1993年に奈良県立医科大学を卒業後、奈良県立医科大学附属病院小児科で研修を行う。
    1996年に奈良県立医科大学で血液疾患の研究に従事し、2000年に国保中央病院医員を経て2002年からカナダクイ-ンズ大学で血友病の遺伝子治療の研究。2005年に奈良県立医科大学小児科助手に就任し、講師を経て、2011年に済生会中和病院小児科部長として着任する。専門は小児血液学、アレルギー。日本小児科学会専門医、日本血液学会専門医・指導医・奈良県立医科大学非常勤講師・など。
  • 当院の特徴やポジションについてお聞かせください。
    柴田:地域医療に根ざして全人的医療を実践し、地域医療に貢献できる人材の育成を目指しています。
    急性期疾患を中心に市民病院としての役割を果たし、市民から信頼を得られる医療を提供するとともに、地域医療に貢献することを目指しています。
  • 先生のサブスペシャリティについて教えてください
    柴田:当時は色々な病院を今みたいに見て回るということもなく、スーパーローテート制度も無かったので、イメージで決めました、ひらめきと言いますか。姉が、子どもを産んで実家に連れて帰ってきていたとき、その子たちの世話をしていて子どもって非常にかわいいな、おもしろいなって漠然と思っていました。そのイメージと、子どもは、全人的医療といいますかジェネラルに身体全体を診るので、それが良いところではないかと思って小児科に決めました。
    実は、「こんなはずじゃなかった」ということもあってずいぶん悩んだこともあり、「変わった方がいいのではないか」と思ったこともありました。というのも、小児科医たちの力だけではあまり何もできないというのがよくわかってきたからです。手術する場合は外科に頭を下げないといけないし、泌尿器科の病気だったら泌尿器科の先生にお願いしなければいけない、放射線科の先生に検査のお願いするなど。小児科って本当に必要なのだろうかと思って、他の科の専門家が診たらすむことではないのかと、悩んだこともありました。
    当時は総合内科という概念なんかなかったですけれど、今は、内科も細分化されてきて、全体的にジェネラリストというのが見直されてきました。今、内科で総合診療内科が見直されてきているように、子どもの疾患についても幅広い知識を持ち的確な対処をできる医者は必要です。
    内科の先生には、患者が子どもということで簡単に断る医者もいると聞きます。小児科ってない方がいいのじゃないかな?と思った時期もありましたが、子どもと大人では生理的にも違うところがあり、そこに小児科の役割があると今は思っています。
    最初に考えたとおり、小児科は、やはり子どもの総合診療科として必要です。
    小児科を選んで良かったなと思っています。
  • 先生の受けた初期研修について教えてください
    柴田:当時、医局制度の全盛期でしたからね。今の研修医は非常にうらやましいです。
    今だったら研修医のいろんな希望を聞いて研修は行なわれていますよね。僕たちも救急科や麻酔科で研修したい気持ちもありましたが、とても言える雰囲気ではなかったですね。とにかく下働きのように働かされてですね。当直要員として当てにされていただけだったのかなという気がしますね。当時、ほとんど指導医という言葉も聞かなかったかな。指導医といってもほとんど論文を書いていたり、他の病院でのアルバイトをしてばっかりという医師もいましたね。研修プログラムなどは、あって無いようなものだったのかな。十分な指導もないままに1年目の7月頃から1人で奈良県の1次から3次救急までを当直しないといけない状態でしたね。当時あんまり大学病院以外にそういう救急体制をやっている病院もなくて、1年目の医者が1人で奈良県の子どもの救急医療を背負って、よく医療事故をおこさなかったなと。そういった矛盾を感じる制度でしたね。
    今は、1年目2年目では1人で医療行為をしたらいけないという時代になりました。本来研修とは、そうあるべきだと思いますが、みなさんには、自分で考えて1人で患者を診なければいけない状態になったときに対処できるようなるように初期研修の2年間を過ごしてほしいと思いますね。僕の研修医時代は、受け身では自分の身が危ないですから、自分で考えて頼れるものは片っ端から電話したり、頼れそうな先輩の医師や同級生との繋がりで乗り切ってきました。そういう意味ではかえって昔の放任主義的なところが良かったのかなと思うところもあります。
    新しい研修制度になって、当初、非常に混乱はありましたが、研修医の採用という意味では適正な競争が取り入れられる時代になったのかなと。その点は良いところだと思いますね。
    また、スーパーローテートについても良いことだと思いますね。大人の疾患も知って子どもの疾患も知って救急の対処も覚えて必要な手技を覚えて、その過程で自分のやりたいことを見出してやっていくことで、途中でドロップアウトするようなことも少なくなるのではないかなと思います。
  • 初期研修の特徴を教えてください。
    柴田:本院は、地域の色々な疾患の方がたくさん来院されます。日常遭遇する頻度の高いコモンディディーズをたくさん経験できます。そういった疾患を中心に診断と治療を経験してもらい、知識と技能を習得してもらうには良い環境と思います。
  • 大学病院と市中病院での研修がよく比較されますが、どのようにお考えでしょうか。
    柴田:小児科でも大学病院で診るべき疾患は市中病院とは大きく異なります。市中病院では一般的には、胃腸炎や肺炎、急性の感染性の症状の患者が多いので、適切に治療する力をつけることが大事です。
    大学病院は、難病として診断がつかないような疾患が集まり、そういう疾患をじっくり診る専門家が集まっている、そういう点で診断治療技術を深めていく、特殊な治療も身につけていくことになりこのことも大事と思います。
    初期研修、後期研修で両方の良いところを経験していただければいいのではないかと思いますね。相互に補完しあっているようなところがありますから、どちらも経験すればより良いと思います。
    当院の小児科では後期研修のプログラムがありますが、当院で色々なコモンディディーズを経験することと、大学病院で難病の治療と診断を取り入れています。その過程で専門医たる十分な能力は身につけていただけると信じています。
  • 指導の際に心がけていらっしゃるのはどんなことでしょうか。
    柴田:済生会中和病院は大学に近いのでたくさんの医学生がポリクリにきてくれるのですが、僕が感じるのは、見学したときのことは身についていないものです。僕もそうだったように。
    仮説を立てて仮説が正しいかどうかを判断するには、どういう検査をするべきなのか、診断をどう考えるかということを常に考えて参加してもらうように、緊張感を持った指導を心がけています。
  • 「すごい研修医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。
    柴田:当初小児科は、新臨床研修制度が始まったときには必修でした。そのため、小児科に興味の無い、まったくやる気のない研修医もちらほら回ってきていました。当直のPHSも出ずに、耳掃除をしているような困った人もいました。
    大学病院でメチルマロン酸血症という代謝異常の女の子を診ていた時のことです。どんどん状態が悪くなり、呼吸状態も悪くなって生死をさまよっていました。私と後期研修医で毎日毎日原因を探っていました。様々な先生に相談したり、呼吸器内科の先生や放射線科の先生に相談し、他の病院の先生にコンタクトをとったり、循環器の先生に協力してもらい検査をして、ようやくメチルマロン酸血症のなかでも非常にまれなビタミンB12の代謝異常で、ホモシスチン尿症を合併し、それが原因で肺に微小な血栓を形成し、肺内シャントをきたして呼吸不全をおこしていたという病態をつきとめることができました。それを治療することで劇的に改善し退院することができました。あまりたいした事は教えられなかったですが、一緒に悩み考え、答えを出せたということで、その研修医にとっては良い経験をしてもらったのではないかと思います。それまであまり評価の高くなかった研修医でしたが、それからは、まわりの見る目も変わってきたかなと思いますね。
    一つ一つの疾患を一生懸命問題解決していくというプロセスを大事にしてほしいと思いますね。
  • 研修医に対して、これだけは肝に銘じておくべきだということをお聞かせください。
    柴田:研修病院を選ぶときに一番重要なファクターは症例が豊富なことだと聞くのですが、彼らも年数が経つと、これは専門でないからとか、これは関わったら面倒くさそうと思うようになってきます。今のいわゆる救急車たらいまわしとか言われるような一因にもなっているのかなと思います。 医師としての研鑽というのは医師である限り続けていかなければいけないと思います。研修医になったときの初心忘るべからず、患者さんから学ぶという姿勢を持ち続けて欲しいと思いますね。
  • これから研修病院を選ぶ医学生に対し、研修病院を選ぶポイントはどのようなことでしょうか
    柴田:研修病院の特徴をよく知ってもらって、できればそこの各科の先生と直接コンタクトをとって色々なアイデアを聞いてもらいたいですね。市中病院はコモンディディーズが豊富あって良いですし、大学病院には専門家がたくさん集まって解明できたり、治療できたりする疾患があります。両方経験してもらうのがいいと思います。
  • 最後に、再度病院のPRお願いします。
    柴田:地域の人に信頼される病院を目指しています。病院をあげて地域医療支援病院の指定を目指しているところです。
    また、救急医療にも力を入れています。専門科がすごく細分化されているような大学病院や大病院では、消化器内科ではないので腹痛は診ないというようなこともあるようですが、当院ではそういうことはありません。地域の人々の信頼を得られるように内科・外科・小児科などたくさんの救急患者を受け入れていますので、豊富な症例からたくさんのことを学べる環境です。

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