ドクターバンク利用医師へのインタビュー

山添村波多野診療所
水口 先生

1983年3月 奈良県立医科大学 卒業
診療所勤務前 医真会 八尾総合病院 副院長 心臓血管外科部長
2015年4月 山添村波多野診療所 就業

(2016年2月インタビュー)

  • 現在の波多野診療所で勤務するきっかけは何ですか。
     もともと心臓外科医だったんです。奈良医大を1983年に卒業し、2002年に医真会八尾総合病院に就職しました。ずっと手術をしてきましたが、退職にあたって次に何をしようかと考えたときに、学生の頃にへき地に行きたいという気持ちがあったことを思い出したんです。そこで、奈良県立五條病院の中村達先生に直接、お会いし、話を伺いました。中村先生から「そんなにやりたいなら、医療政策部に登録したら早いのでは」と言われ、登録したところ、こちらが空くことになったんです。その後、天川村も空く予定になりましたが、こちらを選びました。
  • へき地に興味を持たれたきっかけを教えてください。
    水口 先生 学生時代に寄生虫の実習があり、十津川に2泊3日で出かけたんです。希望者だけなんですけど、30人くらいで行きました。自分達同士で採血をしたことはありましたが、初めて患者さんの採血をさせてもらったり、血圧を計ったりしたんです。寄生虫を顕微鏡で見たりする実習などもありましたし、4年生になって細菌学や伝染病について学び出したんですね。5年生のときに兵庫医大の学生と合同10名でフィリピンにも勉強に行き、そういう経験がきっかけとなりました。へき地では一人で何でもできないといけないなと思いましたね。1983年の卒業ですので、既に自治医大はあったんですが、私は存在を知らなかったんです。大学を出て、いきなりへき地へ行っても、何ができるわけではありませんから、命に繋がる科ということで心臓血管外科に進みました。
  • 診療所はどんなところですか。
     やはり高齢の方が多いです。このあたりの高齢化率は40%らしいですから、20~30年先ぐらいの日本の現状ですよね(笑)。一方で、小学校や高等学校の健康診断に行っていますので、風邪やインフルエンザになったり、怪我などをすると、ここへ来てくれますから、子どもの診察もあります。高齢者でも動ける方は自分で畑をして、野菜を作って、元気にしてくれているので、寿命や健康寿命が極端に長い地域というわけではないんですが、20~30年先の日本もこれぐらいでやっていけるのではと思っています(笑)。
  • 一日の仕事の流れを教えてください。
     研修の日はいないので、一日診察しているのが月曜日と水曜日です。朝は9時から始まります。下宿を確保していただいていますが、木曜日の夜に自宅へ戻ります。金曜日は自宅から県立奈良病院へ研修に行き、土曜日、日曜日は講演会があれば参加して、日曜日の夜に下宿に帰ります。テレビも置いていなくて、食事をしたら寝るだけなんです(笑)。朝起きるのも早いです。21時ぐらいに寝て、4時ぐらいに起きるんですよ。早く寝ると4時ぐらいに目が覚めるので、それからお弁当を作って、早い日は6時半から7時ぐらいに診療所へ来ます。火曜日は往診や胃カメラの検査です。木曜日の午前中が普通の診療で、午後から往診をしています。
  • 診療所での勤務はいかがですか。
    水口 先生 今は問題なくやっていますが、他のスタッフは地元の方々なので、当初はコミュニケーションをとる手助けをしていただいて、とても助かりました。患者さんは高血圧、糖尿病、脂質異常症がメインですね。ほかは脳梗塞に少し後遺症がある方や、整形外科的な膝の痛みがあるので注射をしてほしいとか、肩や腰に注射をしてほしいとか、たまに怪我があるぐらいですね。冬は風邪や肺炎が多いです。
     子どもはもう少し多いと思っていましたが、ここはほかのへき地に比べてアクセスが良く、名張市などにも15分くらいで行けるんですね。喘息であるとか、はっきりとした疾患があって、定期的に通わないといけないような人は小児科の専門医に行っているみたいです。ここで定期的に診ている子どもはいないですね。
     医局にもよりますが、心臓血管外科医の中には手術だけして外来を診ないとか、新しい患者さんが来ても手術が終わったら、あとは内科医に任せてしまう人もいます。私は「先生が手術したんだから、先生が診てよ」と患者さんに言われていたので、手術後も外来で診ていましたし、血圧や糖尿病の薬も管理していたので、成人の診療については問題なかったです。ここに来て増えたのは皮膚科と整形外科の対応ですね。それから、今、県立奈良病院で腹部エコー検査の勉強をさせてもらっています。近々新しい装置が入るので楽しみです。
  • へき地での生活はいかがですか。
     村の行事にはできるだけ参加しています。お祭りも行きますし、マラソン大会にも参加しました。実際のところは転んだ人の手当に来ているようなものですがね(笑)。
     自然がいっぱいあるので2年目からは村の中をうろうろ探索したいと思ってます。
  • 休日などは何をして過ごされますか。
     東大阪市の実家に母親が一人でいるんです。父親は私が37歳のときに亡くなりましたので、墓参りと称して、月に2回は見に行っています。残りの2回は勉強したり、何もないときは家でゆっくりしていますね。週末、私がいないときに悪くなる人が多くて、そうならないように、水曜、木曜あたりに今週末が危ないと思われる場合は手を打っておきますが、急に悪くなる人もいますから、そのあたりの対応は難しいです。
  • 最後に、へき地医療に関心のある学生、また、へき地医療勤務を希望される医療従事者の方へメッセージをお願いします。
     内科を全てマスターするのはなかなか難しいです。もちろん、そのために勉強もしているんですが、「これ以上分からない」というようなときは、紹介して診てもらったりしています。そのためにはバックアップして下さる地域の病院のカンファレンスや勉強会に積極的に参加する事が大切です。また、至らない面があっても、積極性と意気込みさえあれば、患者さんに迷惑をかけずにやっていける仕事です。

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