土庫病院

清水一範先生

土庫病院
指導医
清水 一範(しみず かずのり)先生

土庫病院 内科
(※所属・役職は2011年3月インタビュー当時)

〒640-8390 奈良県大和高田市日之出町12番3号
TEL:0745-53-5471
FAX:0745-22-0517
病院URL:http://www.kenseikai-nara.or.jp/dongo/

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  • プロフィール
    1977年に奈良県大和郡山市に生まれる。
    2003年に福井大学を卒業後、医療法人健生会土庫病院で初期研修を行う。
    2005年に医療法人健生会おかたに病院で初期研修を経て、2007年に土庫病院に勤務し、初期研修指導医となる。
    2008年に大阪府立呼吸器・アレルギーセンターで呼吸器内科の専門研修を行う。
    2010年に土庫病院に帰任し、初期研修指導医となる。専門は内科、呼吸器内科。
  • 先生の研修医時代のお話を聞かせてください。
    清水:奈良県に戻りたかったので、奈良県の病院を探していました。卒業時には、今後、どういう医療をしていきたいのかというビジョンなど、自分の医師像が見えていなかったし、専門にしたい科も決まっていなかったので、できるだけ多くの科を経験したうえで決めたかったんですね。いくつかの病院に見学に行きましたが、土庫病院のスタイルに惹かれるものがありました。一つは内科が専門分化していないこと、もう一つは診療所と連携していて、退院後の患者さんを継続的に診ていけるということです。訪問診療も見学させていただき、地域医療が楽しそうだと思いました。
     実際に研修が始まってみると、現実と理想のギャップはありましたが、経験させていただけることはイメージどおりでしたね。患者さん、ご家族、周りのスタッフの協力やアドバイスなど、医師一人で医療をやっているわけではないことを強く実感しました。患者さんの病態が悪くなったときに、先輩の先生方やスタッフから温かい励ましの言葉をもらって、頑張ったことがありました。
  • サブスペシャリティとして呼吸器内科を選ばれたのはどうしてですか。
    清水:おかたに病院に行ったときに、呼吸器内科の 井上 登太 先生に熱心に指導していただいたことが大きいですね。井上先生は嚥下障害が専門で、病院外の老健やNGOなどで、地域として嚥下障害をケアしようという活動を積極的にされ、個性的な先生です。地域の病院では肺炎の患者さんの嚥下障害が多いので、私も井上先生に教わったことを土庫病院で実践しています。
     呼吸器内科は、患者さんの状態がリアルタイムで変化していくことに関われることに面白さがあります。身体所見をしっかり行い、レントゲンやCTと比較するのですが、臨床症状が検査結果を的確に表しているので、診察が大事な分野だと思いますね。
  • 土庫病院の初期研修プログラムの特徴について、お聞かせください。
    清水:まず、「屋根瓦式の良さ。」が挙げられます。1年目の研修医は細かい日常業務や患者さんの病態管理など、色々と困ることがあります。そこに学年の近い医師が近くにいて、日常的なアドバイスを受けることができることで、ストレス軽減に繋がります。そのうえ、さらに上の医師もいて、難しい病態の把握をフォローしてもらえます。2、3年目の研修医にとっても、1年目の研修医を教えることは自らの成長に役立つんですね。
     次に「主治医制」です。研修医が主治医となって、患者さんの目の前で医療を行い、ある程度の責任を持って決断を下していく経験は、良い教育となっているのではないでしょうか。最初から全部はできないので、上級医がバックアップして患者さんに対してフォローを行っています。研修自体は病棟研修がメインなのですが、患者さんが退院した後でも外来や訪問診療で経過観察する機会があるのもいいですね。
    訪問診療は指導医と研修医の2人で行きます。病棟から自宅まで一連の流れがつかめます。また、土庫病院は患者会の活動が活発です。会には定例的に医師が出席し、疾患や救急の初期対応などについてのレクチャーを行っています。患者さんや地域の方々の声を聞く機会は貴重で、医療が病棟だけのものではないことを実感できるはずです。
  • 土庫病院での研修の方針や教育理念について、お聞かせください。
    清水:「地域医療を担う人材を育てる。」ことにあります。様々な職種の人たちとコミュニケーションを取り、医療全体を見ていこうとする意識のある医師に育てていきたいと考えています。医局に診療科ごとの垣根がなく、医師同士が顔の見えるコミュニケーションを取れているんですね。風通しがいいですから、コンサルトもしやすいですよ。全く知らない医師にコンサルトするとなると、敷居が高くなってしまいますからね(笑)。上の先生が皆さんで研修医を育てようという意識を持っていますので、直接の指導医でない先生が食事に連れていってくれることもあります。医局の雰囲気も明るくて、暑いぐらいですね(笑)。
  • 指導するお立場として心がけていらっしゃることはどんなことですか。
    清水:私もまだ経験が浅いので、研修医と一緒に考えながら、解決策を探していきたいと思っています。そして、そういった「考える過程」を大事にしていきたいです。
  • 研修医に対して、「これだけは言いたい」と思っていらっしゃることをお聞かせください。
    清水:医療は医師だけでやっているわけではないということです。ほかの職種のスタッフ、ご家族と積極的にコミュニケーションを取っていきましょう。私もそんなに得意というわけではありませんが、患者さんやご家族のお話をしっかり聞こうと思っています。患者さんやご家族が何を言いたいのかを聞き取って、ニーズを汲み上げることですね。それは医療的なことだけに限らず、全般的に聞かないといけないのではないでしょうか。
  • これまでに印象に残っている研修医はいますか。
    清水:医学生がよく見学や実習に来るのですが、そこで「コミュニケーションが苦手で、患者さんとうまくやっていけるか不安です」という相談を受けることがあります。しかし、実際に研修医として働き始めると、苦手と言いながらも、患者さんやご家族とうまくコミュニケーションを取っている印象を受けます。患者さんのところで話を聞く時間を長く取っている研修医は、自分では苦手と言いながらも、実はうまいですね。
  • 土庫病院の勤務環境などについて、お聞かせください。
    清水:土庫病院は働きやすい病院ですよ。女性医師も多いですし、看護師さんも含めて、女性が元気な病院だと思います(笑)。育児と勤務の両立は医局全体で配慮していますし、出産後の医師も活躍しています。カンファレンスも豊富です。内科は症例検討会を週に1回、呼吸器疾患のカンファレンスを2週間に1回、行っています。胃カメラの画像から病理組織を検討するカンファレンスもありますし、退院が困難な患者さんや病状が難しい患者さんについては看護師、リハビリスタッフ、ソーシャルワーカーなど医師以外のスタッフも集まって、今後の方針を決めたりするカンファレンスも不定期に開催しています。オスキーやICLSコースの受講など、勉強の機会も多いです。勉強会後は打ち上げもありますよ(笑)。
  • 現在の臨床研修制度について、ご意見をお願いします。
    清水:福井大学は名古屋出身の人たちが多くて、名古屋大学で以前から行っていたスーパーローテートの話をよく聞いていたんですよ。それで、スーパーローテート自体はいいなと思っていました。現在の臨床研修制度は私の1年下の学年から始まったんですが、初期研修の中で基本的な臨床能力や学ぶ姿勢を身に付けることが定められたということはどの診療科に行くにしろ、良いことだと思いました。1年、遅らせたかったぐらいですね(笑)。
  • 奈良県での初期研修を考えている医学生にメッセージをお願いします。
    清水:患者さんの様々な問題に対して考えていくスタッフや、地域の方々の協力で土庫病院は成り立っています。初期研修を考えるうえで、その一員として加わっていただけると有り難いです。医療全体を見渡せる視野ができることは、将来、高度な専門性を持てることにも繋がるはずです。

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