土庫病院

山西行造先生

土庫病院
指導医
山西 行造 先生

土庫病院 院長
(※所属・役職は2013年3月インタビュー当時)

〒640-8390 奈良県大和高田市日之出町12番3号
TEL:0745-53-5471
FAX:0745-22-0517
病院URL:http://www.kenseikai-nara.or.jp/dongo/

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  • プロフィール
    石川県辰口町出身、趣味は読書
    1976年、奈良県立医科大学卒、内科循環器
    吉田病院院長 に就任
    土庫病院院長 に就任
  • 当院の特徴やポジションについてお聞かせください。
    山西:私どもの病院は、地域の住民の健康を守りたいという願いの中で50数年前に六畳一間の診療所から生まれた病院です。規模は199床、内科を中心に外科にも力を入れています。大腸肛門病センターを有しており消化器分野も力を入れています。
    特に大切にしているのは、「地域医療に力をつくしたい」いうことです。そのため、救急・急性期の医療から隣接する老健施設、地域の介護施設と連携した地域で療養される方の後方施設の役割までも果たしています。
  • 先生のサブスペシャリティについて教えてください
    山西:今のような研修制度のない時代に、大学に残らずに地域の病院での研修を選びました。その時、急性心筋梗塞の人の症例が心に残り、その患者さんの治療をやりながらここで力を尽くしたいなと思ったのがきっかけで循環器内科を学ぼうと思いました。当時、まわりにスペシャリティを持った先生がいなかったので、専門施設の研修にも出させてもらいながら自分で勉強しました。
    これから、この年になって診療の幅を広げたいということで、普通の先生は卒後10年目くらいで取る内科総合専門医というものにもチャレンジしています。循環器内科だけではなく内科全般の力量を上げたいと感じています。
    中小病院での展開ということを考えると、専門医がいっぱい集まるいわゆるセンター的な役割ではなく、総合診療の役割が重要です。
  • 大学には行かずに最初から地域医療を志していたわけですね?
    山西:はい、当時、同期の4人と一緒に「地域医療をやろう」という志を持って地域の病院の研修を選びました。それから天理や大阪にある施設で専門研修を受けました。
    当時は、奈良医大に残る方は半分くらいで、残り半分は自分の生まれ故郷に帰るなど出身大学以外のとこへ行かれていました。
    私は、患者さんがどんなふうに思いをもって医療機関にかかるのか、患者さんが望むことは何かということを知りたくて、その中で自分のやるべきことを考えながら、自分の力を高めていこうと思って、地域の病院に飛び込んだのです。
  • その魅力や面白さについて教えてください
    山西:最近は総合診療ということで、精神疾患・小児科・整形を含めた力量も求められますが、やはり中核になるのは内科だと思っています。患者さんが最初に診察に来られたときに、まずベースになる学問領域だと思っています。また、内科というのは深みがあり、いろんな症状から更にその病態生理など、学問的な面白さも深みもあります。
    日進月歩の変化に、すべて、ついていこうとしたら大変なことですが、日々新しい発見があり、何年やっていても教えてもらうことが非常に多いと思います。
    私のサブスペシャリティの循環器内科の面白さは、急性期から慢性期を含めて医者の力量が問われるところが多いことと感じています。特に患者さんの話を聞いて理学所見をとるという点は、循環器は重視しないといけないです。最近は、血液検査や画像診断、心臓カテーテル検査などやっていますが、患者さんの診察も重視して欲しいです。循環器では様々なことを要求されますので、内科でも中心的なところだと思っています。極端にいうと聴診器一本でもどこまでやれるかという点をトレーニングのやり方によって求められると思います。お話を聞いて診察をさせていただき、そこからどれだけ多くの情報を自分で捉えるか、その力が非常に求められると感じます。そして、その裏付けになる知識や経験には、深いものがあると感じています。
  • 先生の受けた初期研修について教えてください
    山西:当時は臨床研修制度というのはなかったので、私たちは自分たちが研修しながら制度を作っていくつもりで地域の病院で研修してきました。症例検討やカンファランスを重視することだとか、今は少なくなっていますが、お亡くなりになった後の解剖・CPCなどをきっちりやることなども重視していました。
    症例から学ぶ姿勢を重視することと、研修のときにこれが専門だと思ってやるのではなく、まずは患者さんの病気が何かということ、同時にその病気を治すためにどんな力量が必要なのかという点を見極めて修練をすることと、自分に足らないことは人に聞くこと、専門の施設の先生に教えてもらいながら、患者さんに返していくという立場で研修をしていました。
    教えていただけることと自分が勉強しないといけないことを明確にし、すべてのことはできないが自ら学び成長するように心がけていました。こういうことは必要だと、僕らがこういう疾患は診なければならないと考えて制度をつくってきた時代だったと思いますね。
  • 現在の研修制度についてはどう思われますか?
    山西:以前の制度では、大学での研修が主流で、各医局の専門医の先生がいる中での研修だったので、患者さんの訴えを聞いてやっていくという面では不十分さがあるなとは感じていました。 新医師臨床研修制度では、患者さんの必要な知識を身につける、医者としての診療態度を学ぶということがうたわれた。これは今まで自分たちがやってきたことと非常に合致しているな、正当化されたと大歓迎したわけです。しかし、制度ができて1、2年してから、次第に幅広く学んでいくことが少し軽んじられる傾向となり、必修科目が少なくなったり修練期間も短くなったりという動きがある。そうではなく、もう少しそういうことを重視して臨床研修の期間を広くしっかり学んでいく方向で充実させていくことが必要じゃないかなと感じています。そのうえで専門的な教育機関である大学とかそういう専門のところで高い段階の専門研修をすることをやればいいんじゃないかと考えます。
    初期研修というのは規模が小さくても、アンケート満足度をみると、300床以下での病院の研修について研修医は高い評価をしています。初期研修という点に限れば、規模はあまり関係せず、教える体制、いろんな症例をちゃんと教える体制、勉強できる体制が大切です。地域に密着している病院だからこそ、いろんな職種との連関もわかるし、地域もわかるし、患者さんの生活実態も分かるという点で良いと思っています。
    また、さらに専門を高めるため大きな病院や専門の医療機関に修練に行く、勉強に行くという場合のステップアップという意味でも、地域に密着している病院で初期研修を受けた方が、メリットが多いのではないかと私どもは思っています。
  • 初期研修の特徴を教えてください。
    山西:我々の病院のある奈良県中和地域は、非常に大変な地域の一つです。むろん我々の病院だけの力だけでは無理ですが、救急医療病院としてがんばっていかなくてはなりません。若い先生にも救急の大切さを知ってもらおうということで、体制の強化を図っているところです。
    研修の部分では、救急の取り組みも実践して、疲弊しない程度にがんばっていただきたい。
    また、特に医療内容などの中小規模の病院の弱点を補うため、カンファレンスの内容の強化をしています。他の施設、特に奈良県立医科大学附属病院や天理よろづ相談所病院さんに指導の仕方などについて見学に行ったり、研修医カンファレンスに派遣して勉強させてもらったりしています。学んで質を高めないといけないと感じています。質の高い研修を行うために取り組んで、ひとりひとりの病気だとか、医学的な側面でも強化していきたいと思っています。
  • 大学病院と市中病院での研修がよく比較されますが、どのようにお考えでしょうか。
    山西:大学病院でも、総合診療科ができたり救急部ができたりと、研修医をトレーニングする体制を整えつつあります。
    しかし、大学は、専門教育・研究機関という使命があり、専門医を育てるシステムやノウハウはありますが、初期研修をする意味では特段に勝っているとは思いません。市中病院は専門性が低いからといって初期研修医が育てられないとも思いません。努力するべき点はありますが、市中病院でコモンディジーズをしっかり身につけ医師としての姿勢を修練することが大切ではないでしょうか。市中病院は小回りが利き、多職種との連携や地域医療を深く経験しながら疾患を診るといったトレーニングができるメリットがあります。また、少数の人材で研修をするわけですから、むしろ一人当たりの症例は多い、一人で色々と良い経験ができるはずです。
    当院は、規模も小さいので、医局全体が1フロワーで各診療科は顔の見える関係です。各職種、看護師・検査技師・薬剤師・ケースワーカーも含めたチームの関係も深く、非常に機動力があります。患者さんについて多職種とカンファランスを行います。当院の研修は、「主治医研修」と呼んでいますが、主治医としてしっかりやっていけるように自覚を持ってもらえるようにします。研修医を一人にはさせず、はじめは指導医が指示をしますが3か月~半年の間に自分で指示を出せるようになります。患者さんとお話をするのも多職種の人たちとのカンファランスでも、問題点は主治医に集中します、そこで悩んで成長する研修を行っています。
    大切なことは、医師としての診断・判断・コーディネートなど力をつけること思っているので、200床前後の病院はちょうど良い環境じゃないかなと思っています。
  • 指導の際に心がけていらっしゃるのはどんなことでしょうか。
    山西:一人一人のモチベーションを大切にすることです。 研修医も他の先生方も個性もあれば体力も違います。状況に応じて細かい指導を行う必要があると思っています。バーンアウトしないようにメンタルなところも含めてサポートすることを心掛けています。
    今年度からメンター制度を採り入れました。別の病院の先生にお願いして研修医から時々話を聞いてもらっています。病院の組織から少し離れ、直接チーム内の人に聞かれたくないことや悩みを相談できる環境を設定しました。研修医にはストレスに弱い人もいます。サポートや配慮をすることによって研修医のモチベーションを上げ、充実した研修になることを重視しています。
    定期的な研修医会など研修医が集まる会なども作り、時には愚痴など様々のことを言える環境を作っています。
    そして、今日どうだったかを振り返り、明日につなげることを大切にしています。 また、安全面には特に配慮しています。初期研修の症例の絞り込みや指導体制を強化して患者さんに向き合えるような指導を心掛けています。
  • 研修医に対して、これだけは肝に銘じておくべきだということをお聞かせください。
    山西:患者さんに表れた症状について、「これは、こんな病気」と決めつけないことです。肝に銘じて欲しい。病気は一人一人いろんな症状で出てきます。人に聞いたこと、自分で調べたことで「これおかしいよ」って思った時は常に疑問を持ち続けること。それは自分で解決するテーマとして吸い上げることができるかもしれない、直ぐには解決できない問題かもしれないが問題として残ったときに、常に自分の宝にしておいて欲しい。将来、学問の発展や医療の治療の進歩によってこれはこういうことだったかと分かることになるし、今の医療についてもまだまだ進歩の途中にありますから、解決しなければならない問題として浮かびあがってくることもあるかもしれない。
    そして、医者として一番大切なことというのは、「患者さんに向きあう」ということを忘れないで欲しい。専門技量を磨く時にも、常にこのことを忘れないでやって欲しい。
  • これから研修病院を選ぶ医学生に対し、研修病院を選ぶポイントはどのようなことでしょうか
    山西:初期だけでなく後期研修も含めて考える研修医が多くなっていますね。私たちは、これから少子高齢化で多死の時代を迎えます。世界の先端を走って高齢化社会を迎えるわけで、その中で医療人として医者として、地域のスペシャリストを目指す医療機関の存在は非常に大切になってくるのでしょう。自分の生涯のライフワークとして地域医療のスペシャリストを考える医者が一人でも多くできればいいなと思っています。初期研修病院は自分の医師として基本的な能力が身につくところです。規模を問わずに選んで欲しいです。将来、地域医療のスペシャリティというかサブスペシャリティを目指す方は、我々のところで勉強して欲しいと思っています。また、将来、大学で専門研修に進む場合でも、初期と後期は必ずしもリンクして考えなくてもいいんじゃないかと考えています。医者としての基本的な能力を身につけるため、規模を問わずに自分が成長できると思うところ、互いの顔が見える環境の中で色々な方から教えてもらい、患者さんからも教えてもらえる環境で研修した方がいいのではないでしょうか。
  • 最後に、再度病院のPRお願いします。
    山西:規模は確かに小さいですが、地域の中でなくてはならない病院です。地域の中で生活困難な方や高齢者が増加しています。子どもさんの問題も大変です。いざという時は頼ってもらえる病院になっていきたいなと思っています。
    もちろん地域の医療機関や、専門的な医療機関とも連携を密にしながら、自分達がその地域の中にあって良かったなと思われる病院にしていきたいです。いざという時に頼ってもらえるというのが一番ですから。

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