近畿大学医学部奈良病院

岡嶋馨先生

近畿大学医学部奈良病院
指導医
岡嶋 馨 先生

近畿大学医学部奈良病院 放射線科教授
同病院 研修管理副委員長
(※所属・役職は2013年3月インタビュー当時)

〒630-0293 奈良県生駒市乙田町1248番1
TEL:0743-77-0880 (内線2015)
FAX:0743-77-0890
病院URL:http://www.kindainara.com/

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  • 学歴
    京都大学医学部:昭和60年3月卒業
    京都大学(大学院博士課程):平成4年3月修了
    職歴など
    卒後一貫して、京都大学または近畿大学医学部系列病院
    資格など
    日本医学放射線学会 専門医
    日本放射線腫瘍学会 認定医
    日本消化器内視鏡学会 専門医
    日本がん治療認定医機構 がん治療認定医/暫定教育医
    日本核医学会 専門医/PET核医学認定医
  • 当院の特徴やポジションについてお聞かせください。
    岡嶋:当院は大阪の近畿大学の分院で、大学病院でありながら一般臨床と先端医療との両方を実践しています。具体的には虫垂炎や骨折の治療から白血病治療・心臓手術まで幅広く行って広域の医療に貢献している、病床数 518床の中核病院です。すなわち、大学病院と一般病院との特徴を兼ね備えた病院といえます。
    なかでも①循環器疾患、②悪性腫瘍、③小児疾患・周産期医療、に特徴があります。
    まず循環器疾患に関しては循環器内科・心臓血管外科を統合して循環器センターとして取り組んでいます。病院全体の年間手術件数は 4000件ですが、心臓血管外科の手術は年間約450 例うち約400例は開心術で、これは関西全体から見ても有数の症例数です。循環器内科では1999年の開院時から冠動脈治療と不整脈治療歴に高い実績があり、救急対応においても地域の信頼を確立してきました。
    次に悪性腫瘍においては外科手術はもちろん、腫瘍内科・放射線科と外科系各科とが密接に連携して最適な標準治療と臨床治験とを行っております。当院は奈良県の地域がん診療拠点病院のひとつですし、高精度放射線治療を行える県内4か所の病院のうちのひとつです。また最近の癌治療は医師だけでは到底行えないのでチーム医療を実践しており、専門看護師(緩和ケア、皮膚排泄、がん看護、放射線治療、など)、薬剤師、その他と連携しています。
    さらに周産期医療においては、新生児集中医療室(NICU)を有する専門病院として、大学病院でしか行えない治療を行っています。産科・小児科・小児外科が連携して出生前診断から小児悪性腫瘍、小児循環器疾患、重症心身障害などに対応しています。
  • 先生のサブスペシャリティについて教えてください
    岡嶋:放射線科全体、なかでも放射線腫瘍学・放射線治療を専門にしています。癌治療に興味があったため学生時代は外科志望でしたが、放射線科の教授から新年会に誘われてそのまま入局してしまいました (笑) 。もちろんその選択に後悔はなく、今では放射線治療学を専門にして本当に良かったと思っています。
  • 放射線科の魅力やおもしろさについて教えてください
    岡嶋:放射線科の特徴はまず最初に、診断学・治療学ともに全身の疾患すべてを対象にしていることであり、多くの診療科の先生と相談しながら「人間」をトータルに診られる(診る必要がある)ということです。
    次に、放射線治療に関しては機能温存が魅力です。手術で周辺を含めて切除してしまうのではなく、放射線治療により癌細胞のみが消滅していく場合も多いです。つまり機能を温存できることが手術との大きな違いです。例えば喉頭癌の場合は手術で病巣を取り除けば声も失うことも多いですが、放射線治療であれば発声機能を温存したままで根治できます。
    放射線治療は、従来の特徴であったが機能温存に加えて、近年の技術革新により放射線量を精密に制御できるようになって飛躍的に進化しました。正常組織の放射線量を抑えることにより大量の放射線を患部に集中させることが可能になったのですが、これには画像診断の進歩も不可欠でした。具体的には定位照射(「ピンポイント照射」とマスコミは呼んでいます)と強度変調放射線治療などを高精度放射線治療といい、治療成績の向上と副作用の低減に貢献しています。
    放射線量の低い領域を作ることが可能になったということは、副作用を減らせるようになったばかりではなく、それにより副作用を気にせずに病巣線量を増加させることができます。したがって治癒率の向上や、高齢者に治療の機会を広げることが可能になってきました。
    以前は放射線治療というと「もう助からない」「副作用が強い」と医療従事者も思っていて、「被曝は恐い」というまちがったイメージが一般的に広まっていました。現在では、そのような過去の印象を持っておられる患者さんも急速に減少して、多くの方が放射線治療を身体にやさしいものと理解しておられます。
    逆にコンピュータ相手の仕事という時間も増加しましたが、患者さんの状態を把握して合併症について不安を取り除きながら治療するという点で個々の人格にも深くかかわる分野です。状態にあった治療方法の選択が必要とされるので医師としての力量が鍛えられるところですし、やりがいを感じております。
  • 先生の受けた初期研修について教えてください
    岡嶋:現在の研修のように、きっちりとしたガイドラインや症例カンファレンスがなくて、一言でいうと自由でした。その時代はやりたいことは自分で探すという研修が普通だった気がします。当時は自分で治療方針などを勉強することが大きかったですが、今は標準治療を先人達が教えてくれている時代になりましたね。
    もちろん「標準治療」が整備されてきたことは医療全体の多大な発展の結果ですが、初期研修としてはそれが「雛が口をあけて待っている」ような状態にもつながっています。「次は何を教えてくれるのかな」といった、受身の研修になっている傾向はあると思います。
    一方、現在の初期研修は多くの臨床科を経験できるのはうらやましいです。僕の場合も、自分で何も決められずに勧誘されて入局しましたので(笑)。多くを経験した後で専門を選択できるのはとても良いことだと思います。
  • 初期研修の特徴を教えてください。
    岡嶋:当院は名前は大学病院ですが、一般の臨床病院の特徴が強く対象疾患もごく一般的なものが多いため、市中病院と同様の研修が可能です。研修医の数もさほど多くないのでひとつの科にはたいてい一人の研修医しかいません。したがって手術や手技的な処置にはスタッフとして参加できます。大規模な研修施設では、例えば内視鏡室には研修医が 3人から4人いてなかなか症例がまわってこないということもあるようです。
    その一方で、対象疾患や研修後の進路には大学病院としての特徴もあります。たとえば大学院に行って研究をしたいという希望があれば、本学と連携して入学することも可能です。近畿大学には「癌プロフェッショナル養成プラン」もあるので、後期研修として当院に在職しながら本学の大学院に進学することも可能です。(可能どころか、歓迎されます(笑)。)もちろん逆に、たとえば循環器の臨床に没頭したいと思えばそれに沿った研修スケジュールを組むことも可能で、所属科の重要なスタッフとしてマンツーマンの指導を受けることも十分に可能です。
    大学病院と市中病院との両方の長所があるので自由にそれを選択しながら、当院では公私ともに楽しく指導医とともに研鑽してもらえると思いますよ。
  • 大学病院と市中病院での研修がよく比較されますが、どのようにお考えでしょうか。
    岡嶋:大学病院の研修というと「特殊な疾患が多い」「各科が完全に分離している」「手技的なことはあまり教えてくれない」というイメージでしょうか。例えば血液内科で研修したら白血病の患者ばかりが入院していてそこだけが別世界、というような。
    それが短所のように思われがちですが、頻度が高くないけれども重要な疾患を経験できるのは大きな利点です。例えば骨肉腫などの骨腫瘍は大学病院では比較的多く経験できますが、市中病院ではなかなか経験しません。
    全国的に研修病院としては大学病院の魅力が過小評価されていて、市中病院の人気が高すぎる印象があります。近畿大学には「たすきがけ」の制度がないですがそれを選ぶ学生の気持ちもよくわかります。
  • 指導の際に心がけていらっしゃるのはどんなことでしょうか。
    岡嶋:研修医本人の希望を優先することを第一にしています。将来の希望は人によって異なりますし、特に放射線科では守備範囲が広いので将来像もさまざまです。放射線診断に興味があるので若いうちに病理も見ておきたい、乳腺に限って診断から治療までスペシャリストになりたい、などの希望があればそれに沿った形の研修をしてもらうようにしています。放射線科の希望者以外でも、例えば将来消化器内科を目指している人が放射線科にローテートされれば、午後から内視鏡室に行く日を設けたりしています。
  • 「すごい研修医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。
    岡嶋:最近では当たり前なのでしょうが、英語やデジタル機器に関する感覚が我々の時代とは異なることに驚きます。「紙」すなわち昔の辞書や論文を持っている人はいなくなって、すべてが iPAD に入っているという研修医もめずらしくなくなりました。
    我々の時代の様な、大学を卒業したら出身大学の病院に入りその後は大学院へ行く、という画一的な研修ではなくなってきたのもうらやましいです。海外で研修をする、そのための医師免許に挑戦する、行政に携わる、などの多様な選択をしている若者に触れると楽しくなります。
  • 研修医に対して、これだけは肝に銘じておくべきだということをお聞かせください。
    岡嶋:研修は受け身ではあまり面白くないので、是非積極的な研修をすることをお勧めします。どの病院でも症例カンファレンスが多いはずなので、多少無理しても参加すれば必ず得るものがあります。「試験」とは異なり、症例カンファレンスでは正解がないことが多いので、間違えたら恥ずかしいことは何一つありません。どんどん発言するべきです。若手はプレゼンテーションももともと上手ですが、むしろ若手はアホなことを言う方が実は歓迎されています。無知な質問、間違った発言は、どの病院の指導者も待ち望んでいるので次々と意見を述べましょう。
  • これから研修病院を選ぶ医学生に対し、研修病院を選ぶポイントはどのようなことでしょうか
    岡嶋:初期研修においては各病院の差は実はそれほど大きくありません。したがって自分が将来何をやりたいのかを決めてから選ばれるといいと思います。たいていの研修病院には専門家がそろっていますがある程度の得意分野はあるものです。
    とはいえ、最初から専門的治療の内容にこだわる必要はまったくないと思います。例えば奈良県では強度変調放射線治療を実践している病院は3か所ですが、初期研修の2年間が終了してから取り組んでも十分です。
  • 最後に、再度病院のPRお願いします。
    岡嶋:当院には前述のような特徴があるので、特に大学病院か市中病院かの選択で迷っている人、自分に合った研修を模索したいひと、などにはお勧めできる研修病院です。また病院全体が新しくて職員も建物も明るい雰囲気です。真の臨床家を目指す人も大学院に行きたい人も海外で活躍したい人も、患者さんの病状や先生がた自身の将来などについて是非我々といっしょに悩みましょう。

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