奈良県西和医療センター

土肥直文先生

奈良県立三室病院
指導医
土肥 直文(どい なおふみ)先生

奈良県立三室病院 循環器内科部長
(※所属・役職は2011年3月インタビュー当時)

〒636-0802 奈良県生駒郡三郷町三室1丁目14-16
TEL:0745-32-0505 内線:2212
FAX:0745-32-0517
病院URL:http://seiwa-mc.jp/

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  • プロフィール
    1962年に岡山県津山市に生まれ、大阪府門真市、吹田市で育つ。
    1987年に奈良県立医科大学を卒業後、奈良県立医科大学附属病院第一内科で研修を行う。
    1988年に総合大雄会病院に勤務を経て、1989年に奈良県立三室病院に医員として勤務する。
    1992年に奈良県立医科大学附属病院第一内科医員、1992年に奈良県立医科大学附属病院救急科医員を経て、1993年に奈良県立医科大学附属病院救急医学助手に就任する。
    1999年に奈良県立医科大学附属病院第一内科学助手に就任する。
    2003年に奈良県立三室病院に循環器内科部長として着任する。専門は循環器疾患。
    日本内科学会認定医、日本循環器学会専門医、日本救急医学会救急科専門医、日本心血管インターベンション治療学会専門医・指導医、日本高血圧学会専門医など。
  • 先生の研修医時代のお話を聞かせてください。
    土肥:専攻する診療科の医局での研修でした。当時は1年目は大学病院で、2年目は関連病院で、そして3年目以降はどうなるか分からないといった研修パターンですね(笑)。1年目の半年間は上の先生方に教えていただけるのですが、その後は一人で当直をしないといけません。循環器に関する救急も診ていましたし、外来や夜中の救急対応もやっていましたが、早く一人前になりたいという一心でしたね。今はカテーテルにしても、「こう持ちなさい」などと細かく指導しますが、その頃は手取り足取りといった指導は無く、先輩や先生方のする処置や技術を見て覚えろといった感じでした。自分がやる前に、多くの見る経験を積まないといけません。必死でしたが、今の研修医よりもかえって早く成長できる環境だったと思います。
  • 循環器内科を選ばれたのはどうしてですか。
    土肥:人が倒れたときにすぐに前面に出て行き、そのとき最も役に立つ診療科なのではないかと考えたからです。神経ですと、まずは脳神経外科が出て行って、後ろに控えているのが神経内科ですが、心臓はまず循環器内科が診て、次が心臓血管外科ですからね。疾患自体に興味もありましたし、今でも循環器内科を選んで良かったと思っています。循環器内科の診療は1980年代後半から90年代にかけて、劇的に変わりました。今は卒後数年の医師が簡単に行っているような治療が当時では最先端だったんですよ。患者さんが多い科ですので、マーケットも大きく、多くの企業が機器を積極的に開発していったんですね。また、以前は心臓外科が花形的存在でしたが、今はカテーテルが主流になりましたし、そういう変わり目の時代に循環器診療に携われたことは幸せでした。
  • 奈良県立三室病院の初期研修プログラムの特徴について、お聞かせください。
    土肥:当院は奈良県西和地域の急性期医療をリードする基幹病院であり、かつ救急の中心病院ですので、広範囲の症例を数多く経験でき、プライマリケアの基礎を効率よく学べることが大きな特徴です。また、異なる医療環境での経験を重視し、救急医療や地域医療などの必修科目でも複数の医療機関を選択できるようにしており、さらに選択科目の範囲も広く、協力病院の設置診療科の全てとしています。研修医の多様なニーズに応えられます。
  • 奈良県立三室病院での研修の方針や教育理念について、お聞かせください。
    土肥:教育理念は、医師として必要な「自ら考え、問題を解決していく能力」を養い、「人格を涵養すること」です。研修の方針としては、将来の専門性に関わらず、患者さんを全人的に診ることができるよう、日常診療でしばしば出会う病気や病態に適切に対応できる診療能力を身に付けることが挙げられます。
  • 指導するお立場として心がけていらっしゃることはどんなことですか。
    土肥:自分の力で考え、解決していける能力を身に付けてほしいと思っています。1から10まで教えてしまうと、「こうしなさい」と言ったことはできますが、未知のことができなくなってしまうんですね。予測できないようなケース、困ったケースや難しいケースに追い込まれたときに解決できる医師に育っていけるような指導を心がけています。
  • 研修医に対して、「これだけは言いたい」と思っていらっしゃることをお聞かせください。
    土肥:「常に向上心を持って、レスポンスよく仕事をしなさい」ということですね。「何々をしなさい、考えなさい」と言ったときに、すぐにレスポンスを返してもらうと、指導医にも教える意欲が出てきます。当院は複数の指導医が少数の研修医を教えていますので、研修医がやる気を持っていれば、飛躍的に伸びていくでしょう。同じ研修プログラムでも、研修医のやる気次第で得られる力が変わってくるはずです。
  • これまでに印象に残っている研修医はいますか。
    土肥:若い頃から自分の専門外のことにも興味を持って、取り組んだ人は向上心もあって、熱心な医師になっています。患者さんへの態度も優れている場合が多いです。ただの頑張り屋さんは自分のためにしかなっていないことがありますが、実際の診療の中で患者さんのために自分ができることを精一杯しようとする医師は素晴らしいと思います。患者さんへの思いやりのある総合的な医師としての資質を感じますね。
  • 奈良県立三室病院の勤務環境などについて、お聞かせください。
    土肥:当院は15診療科で300床と、症例を数多く学びやすいジャストサイズの総合病院です。研修医の環境としてはノートパソコンを貸与し、論文検索システムも導入しています。研修医専用のデスク、ロッカーのほか、当直室やカンファレンスルームも完備しています。病院の周辺は法隆寺や竜田川などの万葉のふるさとを間近に感じることのできる歴史的環境が広がっていますし、最寄り駅である王寺駅はJR大和路線、桜井線、近鉄田原本線、生駒線が通り、奈良県西部のターミナルタウンとなっています。大阪市内の天王寺まで快速で20分の近さですので、日頃、緊張する場面の多い研修医にとって息抜きしやすい立地環境ともいえるかもしれません。
  • 現在の臨床研修制度について、ご意見をお願いします。
    土肥:良い面と悪い面があります。良い面としては医師免許を持った上で医療の現場に介入できるところです。私たちの時代には医学生のときに各科を回りましたが、医師免許がなく、見学主体の実習をしたにすぎなかったので、専門に進む前に医師免許を持ち、各科をローテートできる現在の研修ですと、総合内科医やジェネラリストとしての力をつける良いチャンスになるでしょう。ただ、あまりに多くの診療科を1カ月程度の期間で回ってしまいますと、まるで目次のようにガイダンス的に終わってしまい、無駄も多くなります。一つの診療科で3カ月ぐらいが適当な長さなのではないでしょうか。3カ月ですと、説明を受け、見学をしたうえで、研修医の適性を見て、「これをしてみますか、あれもしてみますか?」という提案ができますので、密度の高い研修になります。
  • 奈良県立三室病院では内科が6カ月となっていますね。
    土肥:最初は注射もできないところから始まりますので、針の刺し方や患者さんとの接し方から教えます。6カ月いますと、研修医の長所や短所が分かり、教え方も深くなりますね。当院では6カ月の中で循環器、消化器、呼吸器、腎臓・膠原病、一般総合内科を学んでいただきますが、どのジャンルの受け持ち患者さんでも細切れに診るということにはなりません。さらに多くの指導医がいますので、様々な面からのアプローチが可能です。
  • では、現在の臨床研修制度の良くない面はどういったところにあるのでしょうか。
    土肥:2年間を単にモラトリアムとして過ごすだけですと、3年目になったときに、その年数にふさわしい医師としての力が全くありません。以前の研修制度は3年目で一人前でしたので、3年目に救急外来を診られないというのは成長が遅いですね。3年目以降に手厚い指導は受けられませんから、2年間の使い方を間違ってしまうと、その後の教育機会を失ってしまいます。2年間の使い方は大事でしょう。それとこの制度が始まって研修医にとっては都会に自由に出られる選択肢が広がったとは思います。しかし地域の病院に対しての悪影響はありました。地域医療を充実させるために、研修医に田舎に来てもらうにはどうしたらいいのか、都会にはない患者と医師の距離が近い医療ができることを訴えるにはどうしたらいいのかなど、考えるべき課題は多いですね。
  • 奈良県での初期研修を考えている医学生にメッセージをお願いします。
    土肥:当院には心臓血管センターがあり、ある分野では近畿を代表するような特殊的高度治療も行っています。初期研修ではプライマリケアや総合力を付けることが求められますが、循環器の枠組みの中でもそれらを身に付けることができ、さらには循環器の高度な治療も覚えることができます。日々の救急外来では救急患者さんを数多く診てもらいます。そこで対処していくことが総合力のベースになるんです。循環器内科医であっても風邪や発熱、お腹が痛いと訴える患者さんも診ます。どんなに重症の患者さんでも一回目に訪れたときは一次救急なんです。その後、結局は三次になるかもしれませんが、最初に的確な判断ができる医師に育ってほしいです。当院は1学年2人ですので、少ない研修医ならではの密度の濃い研修になるはずです。
  • どんな研修医に来てほしいですか。
    土肥:いい医師になろうという向上心を持っている研修医に来てほしいです。2011年も2人の研修医が来ますが、2人とも当院でクリニカルクラークシップを受けた人たちです。そこで心電図を教えましたが、非常に高いレベルにまでついてきてくれましたし、分からないことは自分たちで調べていました。研修医のレスポンスが低かったら、こちらも熱心に指導しづらいでしょう。しかし、研修医が積極的に質問してくれると、いい緊張感が生まれ、指導医も勉強しないといけないという気持ちになります。そういったサイクルは病院全体にいい影響を及ぼすんですね。それだけ研修医は病院組織にとって大切な人たちなんです。

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