市立奈良病院

山口恭一先生

市立奈良病院
指導医
山口 恭一先生

総合診療科医長兼臨床研修センター長
(※所属・役職は2013年3月インタビュー当時)

〒630-8305 奈良市東紀寺町一丁目50番1号
TEL:0742-24-1251
FAX:0742-22-2478
病院URL:http://www.nara-jadecom.jp/

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  • プロフィール
    所属 :市立奈良病院
    役職及び診療科 :総合診療科医長兼臨床研修センター長
    主な履歴・教育歴 :平成9年3月 日本大学医学部卒業
      :平成9年4月 京都大学医学部附属病院 臨床研修医
      :平成10年6月 静岡県立総合病院 臨床研修医
      :平成13年6月 京都大学医学部附属病院 総合診療科医員
      :平成14年4月 市立島田市民病院 総合診療科医師
      :平成15年8月 大阪赤十字病院 救急部医師
      :平成18年4月 市立奈良病院 総合診療科科長
      :平成21年4月 市立奈良病院 総合診療科医長
      :平成23年4月 市立奈良病院 臨床研修センター長兼務
    専門分野 :総合診療医学、救急医学、家庭医療学
    所属学会名 :日本内科学会、日本救急医学会、日本プライマリ・ケア連合学会
  • 当院の特徴やポジションについてお聞かせください。
    山口:奈良市内の中核病院であり、市立病院として市民の方々に常にお役にたてる立場として、地域に根ざした医療を提供しています。基本理念として、「人権を尊重した医療」、「質の高い安全な医療」、「地域に密着した医療」の実践に努めるとともに、専門医療の充実、救急医療への貢献、地域との連携、を当院が担っています。
    病院の機能として、特に急性期病院として救急対応(県内トップクラスの救急搬送台数)、および、がんの拠点病院として高度な医療、また、県内に点在するへき地の診療所との協力体制を構築しへき地医療に貢献するなど、幅広い役割を担っています。
  • 先生のサブスペシャリティについて教えてください
    山口:総合診療科で診療を行っています。総合診療科になったきっかけは、医者になったら人を全般的に診たいと考えていました。いわゆるジェネラリスト思考で、そのため、ある先生に相談したところ総合診療科を勧められ、それ以来、総合診療科一筋です。
  • いつ頃決められましたか
    山口:大学6年生頃に決めていたと記憶しています。
    学生時代から漠然としていましたが、ジェネラル的な診療に携わりたいとは思っていましたよ。
  • その魅力や面白さについて教えてください
    山口:総合診療科の魅力は、いろんな病気を診ること、そして、患者さんを全人的にみるということです。患者さんを最初に診ることはとても重要で、そこで適切な方向性を見出すことは患者さんにとって大きなメリットがあります。病気を自らで診断することは大切であり、というのも、最近は医療機器が発達し画像での診断も多い時代ですが、医師が医師として診断し、そして、その後の方針を決めることは案外、難しいことなんです
    また、医療は医学的な側面だけでなく、患者さん自身の生活環境(生活、家族、環境、宗教など)を含め様々な背景も含めて対応することも重要で、いわゆる全人的な医療を行えることも魅力に感じています。
  • 先生の受けた初期研修について教えてください
    山口:私は大学を卒業して、内科のローテートを行いました。最初の1年間は大学で行い、2年間は市中病院で行ったので合計3年間内科系をローテートしました。この研修中に現行の初期臨床研修のような外科系と麻酔科も併せたローテートをしました。
  • 最近の研修医についてどう思われますか
    山口:和気あいあいと明るく研修している姿をみると、とても良い研修をしているな、と感じます。学生時代から勉強も熱心にされ、知識も豊富です。学力は圧倒的に以前より向上しており、教えがいがありますね。
    一方、診療においては、もう少し積極性と責任性をより強く持つ必要もあるかもしれません。私の研修医時代は、例えば、患者さんが入院されたとき、指導医の先生は多くを教えてくれませんでしたから自身で何とかする他ない場面もあり、苦労も多く、診療に過度な時間を費やすことも多々ありました。
    最近は指導医がいることで医療安全的な質は保たれているのですが、逆に研修医の先生から患者さんへの積極的なかかわりあいが少ないように感じています。変化があったときの対応や治療方針など、医者として患者さんを診る責任感はもっと欲しいところです。
    医者に限らず大人の教育というのは自分で学び、その中で、自分で疑問や課題を見つけ、自ら学んで成長していくという側面が多く、時間は費やしてしまうもののとても大切な過程だと思っています。
    ですので、市立奈良病院の指導体制ではすこしそれらも考慮しており、座学やフィードバックなど指導を受ける場面も多くありますが、それだけではなく、自ら疑問を見つけて発表する機会や研修発表会などを設けています。そこで、自分で課題を見つけるような機会にめぐりあい、解決できる能力を育むことができるのです。また、日々のフィードバックでも全て教えるのではなく自分で調べてみようという風に、興味を持って行動に移せるような指導方法で工夫をしています。
  • 現在の研修についてはどう思われますか
    山口:とても良い研修と思っていますよ。卒後のローテート研修はとても大切な時期ですので、ぜひ、しっかりローテートして多くの経験を積んで欲しいです。研修では幅広く、そして、多くの診療経験をすることが大切で、やっぱり、とにかく、経験させてもらえることが大事でしょう。
    その経験が、将来、どの分野に進むにせよ、将来行う診療の現場に貢献します。当院のプログラムはジェネラリスト・マインドをもった医師を育成するプログラムであり、幅広く学び経験ある専門医を目指してもらうようになっています。
  • 初期研修の特徴を教えてください。
    山口:プログラムとして、プライマリ・ケアを重視していること、専門医を含め院内の協力体制がよいこと、経験だけでなく知識の向上も踏まえたプログラムとなっています。
    まず、市立奈良病院の初期研修ではプライマリ・ケアを中心としたジェネラル・マインドを持った医師を育成するということに重点を置いています。プログラムの種類は1つですが、2年間で多くのことを学び経験することができます。たとえば、地域医療を1カ月ではなく、当院では3カ月を充てています。当院の運営母体である地域医療振興協会が運営している病院で群を作っており、50以上に及ぶ病院群の中から、研修医が一人になることがなく、しっかりした指導医が研修指導できる診療所に限定して研修してもらっています。
    次に、院内では、選択必修を基本的にすべて研修すること、救急当直を指導医のもと数多く研修することで、たくさんの経験を積むことができます。
    最後に、市中病院でありながら、講義などの勉強会も定期的に行っていることも特徴です。 臨床と教育のバランスがとてもいいプログラムです。
  • 大学病院と市中病院での研修がよく比較されますが、どのようにお考えでしょうか。
    山口:最終的には研修する先生の希望がすべてだと思いますが、それぞれの特徴を生かすことが大切ではないでしょうか。大学病院と市中病院では経験できる内容が異なります。市中病院は、まず、症例が多く、そして、急性期疾患、救急疾患を多く経験できます。研修医師数も大学病院に比べると少ないため、結果、手技を経験できる症例数や主担当医としての経験ができる場面が多いことが特徴でしょう。一方、大学病院では、特殊な疾患など希な疾患、あるいは特殊な手技などがより経験しやすいかもしれません。指導者も比較的多く指導を受けるよい機会につながるかもしれません。
  • 指導の際に心がけていらっしゃるのはどんなことでしょうか。
    山口:研修医の先生にすぐに役立てもらうように、実践的であることと、それが印象に残る指導を心掛けています。たとえば、私は総合診療科で外来と救急を担当していますので、救急で研修医の先生と一緒に診療した際はすぐに振り返りフィードバックすることが可能です。すぐにフィードバックして次に生かすようにすること、さらに、教科書的な内容で一般的な知識を補足することも忘れないようにしています。
  • 「すごい研修医がいた」というエピソードがあれば、お聞かせください。
    山口:最近は知識の多い先生も多く、学術的に「すごいな」と思う優れた人も増えました。そのような中でも、特に印象に残った先生は「いいハート(=マインド)をもっているな」と思った先生です。彼は研修2か月目くらいで1ヶ月くらい担当していた患者さんが亡くなってしまったときに、とても泣いていたことを印象的に覚えています。それは実に、感情移入することができ、患者さんのことを偲び思ってのことでした。人の死、感情的な面は、医師という科学者的な立場から目をそらしがちなことですが、患者さんを医学面からだけでなく心理・社会面からもとらえることのできる研修医がいたことを、とても印象に残っています。彼はきっと、よき臨床医として、病気だけでなく、「人を診る」ことのできる医師になっていると信じています。
  • 研修医に対して、これだけは肝に銘じておくべきだということをお聞かせください。
    山口:自ら学ぶという意識をより強くもって欲しいですね。そのためには自分で目標をしっかり持ち、ローテートした後、研修した後に自分自身で振り返って反省し、出来たこと、出来なかったことも含めて次に課題を持つようにすることが大切です。 また、患者さんに接する際、どのような専門家になるにせよ、医者なので医学的なことは必要ですが、全人的に社会心理面も併せて対応できるような医者に育って欲しいと感じています。
  • これから研修病院を選ぶ医学生に対し、初期・後期において研修病院を選ぶポイントはどのようなことでしょうか
    山口:多くの経験ができること、後期までを含めた研修を考えて選ぶことを薦めています。 救急、急性期、慢性期、様々な分野の疾患、多くの手技、など、とにかく経験できるフィールドがあること、そして、それをサポートする指導者がいることが大切です。 あとは、生活環境ですね。住居とか給与面も安定したほうが、心配せずに研修が可能でしょう。
    また、後期を見据えて研修することも大切です。初期2年間、次に後期研修で病院を移動すると慣れるのに、また、半年くらいかかるのではないでしょうか。その期間はもったいないので、当初から後期を見据えて初期を考えることも大切ですね。まあ、あまり、ガチガチに進路をきめる必要はありませんので、ある程度で、将来、進みたい科のいくつかがその病院にあれば良いのではないでしょうか。
  • 最後に、再度病院のPRお願いします。
    山口:今年の1月から新病棟になり新しい綺麗な病院に変わりました。
    現在300床、ICUも稼働し、将来的に全病床も350床と増える予定です。救急も増加しており、多くの患者さんに受診していただいています。研修医も指導医も全体的に活気のある病院です。
    研修医の指導という面で、私たち総合診療科だけでなく他の科の先生も協力的、つまり、指導体制やローテートプログラムもしっかりしています。
    「多くの経験をでき、かつ、よく考えよく学ぶ場」としては、とても良い病院と、自負しております。ぜひ、研修にきていただき、ジェネラル・マインドのある、そして、どこでも通用する医師をめざそうではありませんか。

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