市立奈良病院

加藤俊治先生

市立奈良病院
ジュニアレジデント
加藤 俊治(しゅんじ) 先生

研修期間:2008年4月~2010年3月
出身:愛知県名古屋市
出身大学:京都府立医科大学
卒業年度:2007年度
(※所属は2009年8月インタビュー当時)

〒630-8305 奈良市東紀寺町一丁目50番1号
TEL:0742-24-1251
FAX:0742-22-2478
病院URL:http://www.nara-jadecom.jp/

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  • まず、医学部を目指した動機からお聞かせください。
     祖母が三重県で眼科を開業しており、92歳まで現役を続けていました。私はおばあちゃん子でしたので、祖母の影響を強く受けたのですが、その祖母が「風来坊にはお嫁さんが来ないよ。手に職をつけなきゃ」と言っていたので、私も自然に医師を目指していました。母も医師で、名古屋で開業しているのですが、祖母は「自分が医師になったことも、娘を医師にしたことも全く後悔していない。この仕事をしていなかったら会えなかった人にも会えたし、医師になって本当に良かった」と話していました。私も特に訪問診療を経験してからは、祖母の言っていたことが間違いでなかったと確信しています。病室に入っただけで感謝される、この仕事は良い仕事だと実感していますね。
  • 大学時代の思い出をお話しくださいますか。
     学校、ボランティア、アルバイトで忙しい6年間でした。やり残したことはないと言い切れるくらい、充実していましたね。ボランティアは自閉症やダウン症の子どもたちと出かけたり、遊んだりするものでした。
    アルバイト先は「いいちょ」というラーメン屋さんです。「いいちょ」は雑誌にも紹介されるような有名店で、大将が魅力ある方なんです。「勉強ばかりではいけない」と常々、おっしゃっていました。あるとき、お客さんがきょろきょろされていたんですが、私は何もできなかったんです。そうしたら、大将から「きょろきょろしているお客さんが探しているものがメニューなのか、水なのか、トイレなのか分かるようにならなければいけない」と怒られました。「それを考えることは、将来、医師になって、診察室に入ってきた患者さんが何を求めているのかと考えることと同じだし、どんな仕事にもつながってくるんだ」ともおっしゃったんですね。そういう学ぶことの多いアルバイトでした。
  • 初期研修の病院で、市立奈良病院を選んだ理由をお聞かせください。
     京都府立医科大学の附属病院とのたすきがけになっている病院の中から選びました。理由は市立奈良病院が自治医科大学系列の病院で、地域医療を重視している点に惹かれ、地域医療の五原則などを習ってみたいと思ったからです。アルバイト先のラーメン屋の大将がお客さんに「また来てなあ」という挨拶をするのを、いつも良いなあという気持ちで見ていたんですね。医師は「もう来ないでね」というスタンスでないといけませんから、寂しいんです。ところが、京都市の西陣で長く地域医療をなさっている早川一光先生の本を読んで、考えが変わりました。早川先生はドラマの「とおりゃんせ」のモデルになった先生ですが、患者さんのお宅に「また来たよー」と入って行かれるそうです。医師が患者さんのお宅に行くのであれば、そういう挨拶ができるんだと思い、地域医療に憧れました。
  • 実際に地域医療を経験されてみて、いかがですか。
     とても勉強になりました。亡くなる患者さんを見て、死が敗北であるなら医療者は皆、敗北を味わわなければいけません。しかし、「それは違う」とおっしゃる先生に出会えたんですね。「死は無くせないけど、在宅医療を希望される患者さんに往診に伺うなど、患者さんが満足していただける生活のサポートをしていくのが医師だ」との教えには感銘を受けました。
  • 地域医療で、忘れられない思い出はありますか。
     一人暮らしのおばあちゃんがいて、認知症を患っていらっしゃったんですね。でも特養などには入らず、「家にいたい」とおっしゃっていて、診療所の先生、ヘルパーさんに加えて、近所の人たちもおばあちゃんに会いに来ていました。おばあちゃんはすぐ忘れてしまうのですが、家にいるだけなのに、とても良い笑顔なんですよ。これまで医師の仕事は病気を治すだけだと思っていましたが、病気を治すことはできなくても、元気にする医療があるんだと気付かされました。満足して亡くなっていくのを手助けできる医師という職業に就けて、本当によかったです。医療不信の時代だと言われていますが、医師と患者さんの間に信頼関係のある、こういう医療こそ最先端なのではないでしょうか。
  • 初期研修のローテート順を教えてください。
     1年目は大学病院で、麻酔科2カ月、救急1カ月、内科6カ月、外科3カ月です。2年目は市立奈良病院で、外科2カ月、内科2カ月、地域医療1カ月、小児科2カ月、整形外科1カ月、精神科1カ月、地域医療1カ月、外科1カ月です。精神科は大学病院に戻って研修しました。また前半の地域医療は青森県の東通診療所、後半は滋賀県の伊吹診療所です。
  • このうち選択科目はどの科目ですか。
     整形外科、後半の地域医療、後半の外科です。2年目の10月に専攻を外科にしようと考えたので、そういう科目を選びました。若いうちに海外で働くことが夢なのです。内科ですと言葉の壁がありますが、外科は技術が求められますので、若いうちは外科医として研鑽を積み、将来は地域医療に携わりたいと考えています。2年目の冬に有休を利用して、1週間ほどミャンマーに行ってきました。地域医療の研修で見たように、ミャンマーでも皆の目がきらきらしていたんですよ。ミャンマーの人たちの温かい人柄に触れることができ、とても印象に残っています。
  • 市立奈良病院の研修プログラムの特徴はどんな点にありますか。
     地域医療、総合診療科、そして救急の充実でしょうか。救急は「断らない」というモットーですので、ICUに入るほどではない程度の様々な疾患を診ることができます。また総合診療科の先生方は教育熱心ですね。もともと呼吸器内科や胸部外科の専門の先生方ですから、肺炎のことなど気さくに尋ねられますし、研修医と同じ部屋なので、いつも勉強させていただいています。
  • どんなところが勉強になるのですか。
     大学では片手間なイメージがある総合診療科が市立奈良病院では独立した科であるので、鑑別疾患の挙げ方など、総合診療科的な考え方を学べることでしょうか。地域医療にしても、その考え方を学ぶ機会が豊富にある点が良いと思います。
  • 市立奈良病院の研修で、不満な点はありますか。
     総合診療科の先生方は教える意欲を強くお持ちなのですが、そうではなく、研修医の扱いに不慣れな診療科もあります。しかし、この点は改善されるようです。ほかに当直料も見直しになりますし、利益が出た場合の報奨金もこれまでは研修医はいただけなかったのですが、今後は改善されると聞きました。
  • 失敗談はありますか。
     当直のとき、呼ばれたのですが、気付かず、寝過してしまったことでしょうか(笑)。二度寝をしていたんです。研修医は基本的にはセカンドの立場ですので、大丈夫でしたが、翌朝、かなり怒られました(笑)。
  • 指導医の先生の指導はいかがですか。
     診療科によって違いますね。教えようとする意識の高い先生に教わると、私もこうなりたいなと思います。
  • コメディカルの方々とのコミュニケーションはいかがでしょう。
     今年、初めて慰安旅行があったんですよ。日本海の方の温泉にカニを食べに行ったんです。それ以来、皆さんと仲良くなりましたね。
  • カンファレンスはどんな雰囲気ですか。
     雰囲気は科ごとに違いますね。消化器内科は厳しいですよ。鋭い突っ込みが入ります。でも、これは、院内で厳しくしておくと、学会や発表会でうまく答えることができ、きちんと発表できるという意図があってのことなのだそうです。
  • 当直の体制について、教えてください。
     ファーストは総合診療科の1人が当直し、研修医が1人ついています。ほとんどの場合、ここで終わりますので、勉強になりますね。それから内科系と外科系も1人ずつ当直し、総合診療科の先生から呼ばれたら、駆けつける体制になっています。回数は月に4回程度です。
  • 今後の予定をお聞かせください。
     東京の聖路加国際病院で4年間の後期研修を行う予定です。外科の専門医を取得したいと思っています。国際と名のつく病院なのですから、海外に行けるチャンスに期待しています。災害時のお手伝いであっても、将来の希望に繋がりますので、積極的に参加したいですね。
  • 現在の臨床研修制度についてのご感想をお願いします。
     将来、海外での医療や地域医療に携わりたい私にとっては良い制度です。1カ月であっても、診ているのと診ていないのとでは大きな違いがあるはずです。ただ、来年度からは選択肢が増えるそうで、それはそれで良いのではないでしょうか。
  • これから臨床研修病院を選ぶ方にアドバイスをお願いします。
     マッチングでは希望通りいかないこともありますし、どの病院に行くにしても研修医次第だと思います。自分のやりたいことのできる病院をきちんと選べば、充実した研修になります。私も地域医療が経験できて、本当に勉強になりました。
  • 最後に、ご趣味など、プライベートについて、お聞かせください。
     趣味はラーメン屋さん巡りですね。でも、アルバイトしていた「いいちょ」のラーメンが一番好きなんです(笑)。
  • タイムスケジュール

    地域医療(伊吹診療所の場合)

    07:00 起床
    08:15 出勤
    08:30 訪問診療
    12:00 昼食
    13:00 老人保健施設、ヘルパーステーション、訪問入浴など
    17:00 バドミントン
    19:00 ケアマネージャーとの会議
    21:00 帰宅
    24:00 就寝

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