天理よろづ相談所病院

東光久先生

天理よろづ相談所病院
指導医
東 光久(あずま てるひさ)先生

天理よろづ相談所病院 総合診療教育部/総合内科
(※所属・役職は2013年3月インタビュー当時)

〒632-8552 天理市三島町200番地
TEL:0743-63-5611
FAX:0743-63-1530
病院URL:http://www.tenriyorozu.jp/

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  • 学歴
    京都大学医学部:1996年3月卒業
    職歴など
    1996年:天理よろづ相談所病院 ジュニアレジデント
    1998年:同院 シニアレジデント(内科系ローテートコース)
    2000年:同院チーフレジデント
    2002年:同院総合診療教育部 兼 血液内科医員
    2004年:同院総合診療教育部医員専任
    2007年:国立がんセンター中央病院 がん専門修練医(血液内科、幹細胞移植科、乳腺・腫瘍内科)
    2009年:天理よろづ相談所病院 総合診療教育部医員 復職、同院 救急診療チーム・外来化学療法委員兼任
    2012年:同院 緩和ケアチーム所属
    所属学会など
    日本内科学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本リウマチ学会、日本血液学会、日本臨床腫瘍学会、日本緩和医療学会、日本腎臓学会、日本感染症学会、日本線維筋痛症学会、日本網内系学会、日本造血細胞移植学会、日本静脈栄養学会、日本TDM学会、米国内科学会、米国臨床腫瘍学会、アジア・太平洋リウマチ協会、など
    資格など
    医師免許
    総合内科専門医、リウマチ専門医、血液専門医、がん薬物療法専門医、がん治療認定医
  • 総合病棟・レジデント制度の歴史について
    :総合病棟・レジデント制度ができる以前は、複数疾患を抱えている患者さんをどの診療科で診るのかという課題がありました。当時は専門診療科でカバーできない患者さんを引き受ける総合的に診療する部門がなかったのです。そこで当時血液内科の一医員であった今中医師が血液内科医としての仕事に加え、そのような患者さん達の受け皿として昭和51年に総合病棟・レジデント制度を立ち上げました。これが、どんな患者さんでも診るための部署として約35年前に発足した総合内科(総合診療教育部)の始まりです。現在、総合内科では患者さん本位の診療を各専門診療科と連携して行っています。当院の医師は患者さんの為に必要とあれば、専門外のことであっても、自分たちで積極的に取り組んできた歴史があります。当院独特の風土として育ったこの伝統は、我々の誇りであると同時にこれからも守っていくべき文化だと考えています。
  • 総合病棟研修の特徴について
    :我々総合内科では主として外来・入院診療を通じて初期研修医(ジュニアレジデント、JR)と内科系ローテートコースの後期研修医(シニアレジデント、SR)の教育を行っています。
    初期研修については、JRが総合病棟で一人の患者さんを指導医と共に主治医責任を持って受け持つことになります。例えば、糖尿病でインスリン投与を受けていた患者さんが肺炎になって入院した場合、肺炎に対する治療のみならず、血糖コントロールも含めてJRが担当します。各専門診療科のアドバイスを受けながらJRが患者さんのすべてを診療するシステムを敷いているわけです。
    色々な内科系の専門診療科の先生方がこの患者さんならJRにとって良い経験が積める、トレーニングになる、と判断すれば、万全のバックアップ体制を敷いた上で、患者さんに総合病棟に入院していただきます。
    未熟な研修医が担当するわけですから、患者さんからすれば、もどかしい事が最初の内は多いはずです。しかし、研修医たちは、24時間365日体制で真摯かつ献身的に診療に当たるので、その姿勢が高く評価されており、患者さんからの不満の声は殆ど聞こえてきません。これは、研修医の頑張りとともに、総合内科に対する内科系の各専門診療科の理解とバックアップ体制も整っているからなのです。
    患者さんは総合病棟にいても、専門病棟から各専門診療科の部長が週一回必ず回診に来てくれるので不安はありません。その上で研修医が必死で頑張るのですから、患者さんからは、次もまたこの病棟に入院しますと言って頂けるのです。
    仮に患者さんの問題点が変わった場合(例:肺炎治療中に脳梗塞を発症)でも、患者さんに対して担当のJRを変更することはなく、診療科(総合内科→神経内科)と指導医が変わっていきます。正に患者さんとJRを中心に診療が動いているイメージです。
    『なぜ、そこまで研修医を中心に病院が動けるのか?』
    それは、内科の各専門の先生方も約半数は当院のJR出身であり、自分達もそこに惹かれて天理よろづに来たからなのです。
    私自身もそうですが、絶対に忘れることのできない貴重な2年間となり、共に苦労を分かち合い、助け合った同期の仲間とは一生モノの関係が築けます。
  • 私の受けた後期研修について
    :当院の場合はJRのうち、一番少ない年でも半数ぐらいSRに残るでしょうか。今年(2013年度)に関しては9割の研修医が後期研修を引き続き当院で受けています。後期研修終了後に改めて大学院に行き、又戻ってきた方を入れると、かなりの確率で残っていると言えます。
    私が当時選択した後期研修プログラムは、内科系の各科を更に3~4年ローテートする内科ローテートコースです。現在、多くの後期研修プログラムは各診療科における専門研修ですが、私自身は各科をもう少し回りたかったので、この後期研修をあえて選びました。半年間各専門診療科ローテートしつつ、総合病棟で総合内科の患者さんの指導医として受け持って二足のわらじを履くような感じでした。ローテート先ではそれぞれ専門的な研修を受けながら、総合病棟ではJRを指導するシニアレジデントとして働いていました。
    SRとして2年間研修を受け、3年目には研修医全体をまとめるチーフレジデントとなり、4年目はチーフレジデントを次の代に譲ってSRに戻りました。
    専門研修、総合診療、レジデント教育と3つの同時並行トレーニングは非常に厳しいものでしたが、一方で常に総合内科医としての軸足を持つ姿勢が芽生えました。今ではそれが財産となり、医師としてのよりどころとなっています。
  • 当院の総合病棟・レジデント制度の素晴らしさ
    :患者さんの為にみんなが頑張れるところですね。そこの一点で結びついています。しんどいこととか、腹の立つこととか正直色々ありますけど、『患者さんの為に』と思ってみんなやっています。看護師さんも薬剤師さんも色々なスタッフ全員同じ思いです。本当に大変ですが、いわゆる心地よい疲れですね。
    天理よろづの総合診療は、入口の診療(初診をつけて、患者さんを他の診療科に送ること)ではありません。緩和ケアまでを含めた患者さん本位の一貫した医療で入口から出口までをカバーしているつもりです。
    総合診療教育部の副部長である石丸裕康医師が卒業するレジデントによく言う言葉として「君たちが天理で研修したことで、君たちの医師としての素地には天理のOSが載ったと思って下さい。様々なアプリケーションが今後付いて来るとしても、OSは天理版だと、それを忘れずに頑張って欲しい。」と彼はエールを贈っています。とても素晴らしい言葉だと思います。
  • 総合診療を選んだ理由
    :医者になろうと思ったきっかけは主人公が白血病で最期には亡くなってしまうテレビドラマを見たことでした。ですから当初は血液内科を志望していました。天理よろづを選んだ理由は、血液内科医になる前に、幅広く色々なことをできる医者になりたいと思ったからです。学生時代に病院見学をした中で、天理よろづの初期研修では総合病棟でどんな診療科の患者も同時並行で診療するという部分に魅力を感じ、初期研修先に選びました。そして、後期研修では、ローテートで各内科の診療経験・知識・技術を深めること、総合内科でJR教育に携わること、様々な病態の患者さんの診療に従事できることにやりがいを感じ、内科ローテートコースを選択しました。
    また、多数の膠原病の患者さんを入院で受け持ち、外来で長く診る事になり、膠原病の診療に対して大きなやりがいを感じるようになりました。当初から希望していた血液内科と、膠原病診療を担当する総合内科をできれば両立したいと考え、後期研修後のある一定期間、総合内科・血液内科の兼任をしていました。
    また、原発不明がんは担当診療科がなかなか決まらないことが多かったのですが、私が担当した原発不明がんの患者さんはありとあらゆる治療を施し、最終的に亡くなられた後の剖検で、ある特定の診断に至ることが分かりました。それは根治可能とされる悪性腫瘍でした。自分が原発不明がんの患者さんを引きうけるためにはもっとトレーニングが必要と思い、東京の国立がんセンターに赴任しました。がんセンターで血液内科と腫瘍内科を経験して2009年に戻って来ました。現在は、原発不明がんや肉腫などの希少疾患の患者さんも診ています。
    私が総合内科を選んだのは、総合診療の実践に一義的な目標があったわけではなく、興味のある診療領域(血液内科、膠原病、腫瘍内科)を担当するためには、天理では内科ローテートコースや総合内科を選択することが最も現実的だったからです。現在は総合診療そのものにもちろんやりがいを感じていますが、それと共に各専門診療をつなぐことを通じて、日本の医療の向上・発展に力を尽くしたいと考えています。
  • どういった研修医に来て欲しいか
    :頭が良いのに越したことはないのですけど、やはりやる気と野心のある人です。SRは病院にとってそれこそ大きな戦力ですので、もっと増えた方が良いと思います。もちろん一定の枠以上には受け入れることができませんし、例え多く抱え込んでも一人一人に十分な経験を積ませてあげられなければ意味がないので、難しい所です。
  • 一番印象に残っている研修医は文字通り「レジデント」だった
    :今は某研究所で教授をしているA氏という私の2学年後輩のJRがいたのですが、彼は本当に昼夜関係なしに患者さんの傍にいましたね。本当の『レジデント(住み込み)』でした。私がSR2年目で神経内科をローテートしていた時に、一緒に担当していた患者さんが痙攣重積状態だったので、麻酔薬を使って集中治療室で管理していました。その時、麻酔器の中の吸入麻酔薬が一定時間でなくなってしまうので、彼が麻酔薬を継ぎ足しながら深夜もずっと付き添い、患者さんのちょっとした変化も見逃すまいと必死に診療していました。実際、その患者さんの横の空きベッドに自分の本を持ちこんで、3週間ほど泊まり込みでずっと熱心に診ていた彼がすごく印象に残っています。
    その後の彼は内視鏡の勉強がしたいと言って無給である病院に勤務しアルバイトで生計を立てていたようです。ことほど左様にあくまでも貪欲で純粋なレジデントで、私に近い世代の医師の中で誇りに思う一人です。
  • 初期研修と専門研修について
    :これは私の主観ですが、初期研修は2年間では短いのかもしれないと感じることがあります。それなりの研修をしようと思ったら各科1ヶ月とかでは到底無理な話です。2年間で到達すべき目標が、ひょっとしたら高すぎるのかもしれないですし、本当にそこまで到達しようと思うのであれば、初期研修は3年間にしないと到達できない目標である気がします。
    若い先生は夢を持っているので、その方向が専門志向であればそちらへ早く行かせてあげたい気もするのですが、全ての医師が専門分野を極め、医者としての人生を順風満帆に歩んで行ける訳ではないのです。中には、専門分野だけでは立ち行かなくなって、一般の病院に赴任したり、開業したりする方も出てきます。そう考えると専門以外のスキルや経験を身に付けておくことは無駄にはなりません。技術や知識はどんどん進歩するので一生勉強は必要です。
  • 医師になることの幸運に感謝し社会に貢献する
    :医学生や研修医の方々が、患者さん本位の医療を本気で実践したいと思っているのであれば、天理よろづは十分そのニーズには応えられると思います。学生さんや研修医の方に向けてアドバイスがあるとすれば、医師は誰もがなれる職業ではないということです。自分自身で色々な幸運を持ち、周囲の助けがあり、そして更に努力を重ねた方のみが医師になれる訳です。決してその事に対して感謝を忘れてはいけません。
    医学生は、普通の大学に通っている人たちに比べて税金で多くの部分が賄われている現実もあるので、本当に人様の役に立ちたいという謙虚な気持ちで医師を目指してほしいですし、高い志と自分に対する厳しさを持ってこの世界に飛び込んで来て欲しいと思います。
  • 最後に
    :文章だけでは伝えきれない部分もあるので当院に少しでも興味を持って頂いたのであれば、いつでも見学に来て下さい。歓迎します。

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