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茅原大墓古墳出土盾持人埴輪(所在:桜井市立埋蔵文化財センター) ちはらおおはかこふんしゅつどたてもちびとはにわ

記入年月日 2016/06/30

盾持人埴輪(頭部~盾面上半)
頭部の側面
基部
所在地
奈良県桜井市芝58-2 桜井市立埋蔵文化財センター内
区分
考古資料 | 土器・土製品類
指定内容
市指定有形文化財

※各歴史文化資源へのご訪問の際は公開日・公開時間・料金等を別途ご確認ください。

歴史文化資源の概要
 平成22年度に行われた発掘調査において、国指定史跡である茅原大墓古墳(全長約86m)より出土しました。東側くびれ部の墳丘裾に樹立されていたことが確認されています。基部~体部は円筒形で、その前面の両側に厚さ1.8㎝ほどの粘土板を貼り足して盾を表現し、さらに体部上端をドーム状にしてその上に頸部・頭部を接続するという全体形状を持ち、このうち基部の高さ28㎝分と、頭部~盾面上半の高さ67.6㎝分が残存していました。 
 頭部には衝角付冑と思われる表現が見られ、顔面部は顎部分に粘土板を貼り足して全体に平坦な印象のつくりとなっています。顔面部には目と口が穿孔で表現され、鼻は剥落して残存しませんが、立体的なものであったと推定されます。顎部分を中心に線刻が見られ、顔面全体に赤彩が施されています。盾部には長方形盾が表現され、盾面部分には綾杉文による「Ⅱ」字形の区画があり、その外側には鋸歯文、内側には菱形文が線刻により施されています。
 盾持人埴輪は全国で100例以上が確認されていますが、本例はこの形態の埴輪としては最も古く位置付けられます。また人物の顔を表現する埴輪としても最古のものであり、埴輪祭祀の変遷を考える上で重要な資料です。
地域にとって大切な歴史文化資源である、その理由
盾持人埴輪として、また、人物の顔を表現する埴輪として、日本じゅうでも最古に分類される出土遺物です。
「記紀・万葉集」との関連とその概要
 茅原大墓古墳の盾持人埴輪は、人物の造形をもつ埴輪としては最古のものです。このような埴輪の登場は、古墳祭祀や死生観の変化を示すものと考えられますが、こうした変化に関連する可能性のある記述が『日本書紀』にみられます。有名な垂仁紀の埴輪起源説話がそれであり、殉葬の風習に代えて古墳に埴輪が樹立されるようになったことが記されています。
当資源と関連する歴史上の人物とその概要
 埴輪の創出を提言したとされる野見宿禰は、出雲(島根県または桜井市出雲)の出身で土師氏の祖とされ、相撲の起源説話にも登場することが知られています。
当資源と関連する文献史料
『日本書紀』の垂仁紀に埴輪起源説話があるほか、埴輪創出以前の様子として陵に人が立てられたことが『古事記』に記されています。
当資源と関連する伝承
 『日本書紀』の埴輪起源説話によると、垂仁天皇は陵墓に生きたまま埋めて立てられた人の泣き呻く声を聞いて悲しみ、殉葬という古来の風習を止めるよう臣下に伝えたとされています。
他地域の関連する歴史文化資源
 本例と同様に、初期の人物のかたちを持つ埴輪の事例として、福岡市拝塚古墳出土の盾持人埴輪、大阪府墓山古墳出土の盾持人埴輪、大阪府野中宮山古墳出土の盾持人埴輪などがあります。
問い合わせ先
桜井市立埋蔵文化財センター
電話番号
0744-42-6005

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見解・学説等の相違については、ご了承ください。