今日の変動の激しい社会の中で、子どもたちの規範意識の低下や対人関係のつまずき等、様々な課題が提起されています。
しかし、本来、子どもたちは、多くの可能性を秘め、光輝くものをもっています。そして、よりよく生きたいと願っています。そのような子どもたちが、未来に対して夢をもち、自分の人生を切り拓(ひら)き、主体的に目標に向かって生きていける力をはぐくんでいくことが、教育に携わる私たちの使命ではないでしょうか。
本県では、「明るく笑顔の絶えない園・学校づくり」を目指し、学校教育の重点課題の一つに「豊かな人間性の教育」を据え、道徳教育の振興や様々な体験活動の充実を通じて、心の教育の推進に取り組んでいます。
また、平成17年度からは、「奈良県キャリア教育プラン」に基づき、子どもたちに社会で自立できる力を身に付けさせるためのキャリア教育を各学校において進めていくこととしています。
子どもたちが将来、人生の岐路に立ったとき、あるいは、困難や挫折した状態を克服しようとするとき、的確な判断や果敢な行動の基になるのが「心の蓄え」であります。そして、その蓄えを増やしていくのが、まさに道徳教育であると考えます。そのためにも、小・中学校での道徳の時間一時間一時間の積み上げが大切です。また、高等学校では、ホームルーム活動や公民科を中心に全教育活動を通して、「人間としての在り方生き方」の自覚を促す学習を一層充実させることが大切です。
本県では、文部科学省からの委嘱を受け、平成14年度から「児童生徒の心に響く道徳教育推進事業」を進めてきました。本冊子は、この事業の一環として設置している「奈良県道徳教育振興会議」の協力を得て、児童生徒の心に響く道徳教育を推進していくための資料として作成したものです。
本冊子には、今日、課題となっている「生命を尊重する心」を育てる道徳の時間やホームルーム活動の教材や指導事例をはじめ、推進地域・推進校の取組、道徳教育教材リストなどの資料を所収しています。しかも、それぞれの資料は、本県の特徴を生かしたものであります。このため、授業をはじめ様々な教育活動の場面で、使いやすい資料になっています。各学校において本冊子を積極的に活用し、児童生徒の心に響く充実した道徳教育を展開していただくことを願っています。
最後になりましたが、本冊子を発行するに当たりご尽力いただいた、西村拓生会長をはじめ「奈良県道徳教育振興会議」の委員の方々や各推進校・推進地域の方々に対し、厚く御礼申し上げます。
平成17年3月