はじめての万葉集


はじめての万葉集
梨棗(なしなつめ)黍(きみ)に粟(あは)嗣(つ)ぎ 延(は)ふ田葛(くず)の
後(のち)も逢はむと 葵(あふひ)花咲く
作者未詳
巻十六三八三四番歌
梨(なし)、棗(なつめ)、黍(きび)に粟(あわ)がついでみのり、蔓(つる)を伸ばす葛(くず)のように後にまた逢おうと葵(あおい)に花が咲くよ。
秋の味覚は…
 皆さんは秋の味覚といえば、何を思い浮かべるでしょうか。現在は栽培技術が発達し、一年中美味しい野菜や果物が手に入るため、食物の季節感が薄れつつあるように思います。万葉びとたちは季節の移ろいにとても敏感で、自然や植物をよく観察しています。その中でも、右の歌は、秋にちなんだ植物が六種類も詠まれています。
 「梨(なし)・棗(なつめ)・黍(きみ)・粟(あは)」は、いずれも秋に実を付けることから、その果実や穀物のことを詠んでいると考えられます。この「梨」は、現在私たちが食べている大ぶりな実ではなく、古代ではもっと小さな果実であったようです。『万葉集』において「梨」は「妻梨(つまなし)の木」(巻十)とも詠まれており、妻成(ツマナ)シの木(「妻とする」の意)、もしくは妻無(ツマナ)シの木(「妻がいない」の意)の両説があります。いずれにしても、古代の人びとの自然へのまなざしが、豊かな表現を作り上げていった一例といえます。
 実はこの歌にも、植物の名前にかけた言葉遊びが隠されています。「黍(きみ)」は「君(きみ)」に、「粟(あは)」は「逢(あ)ふ」に、そして「葵(あふひ)」には「逢(あ)ふ日(ひ)」の意味が込められています。このダジャレのような言葉遊びは、後に「掛詞(かけことば)」という和歌の技法として発展していきます。
 この歌は、あなたに会いたい!という思いを、秋に実るたくさんの植物の名前を用いながら詠んでいるのですが、これは秋の宴席で出された料理にヒントを得て作られた、戯れの歌とも言われています。
 植物の名前を巧みに使ったこの言葉遊びの歌は、『万葉集』の歌の技巧の成熟を示すと同時に、自然と共にある彼らの生き方が思われます。私たちも季節を感じながら、秋の味覚を楽しみましょう。
(本文 万葉文化館 大谷 歩)
万葉ちゃんのつぶやき
奈良の梨栽培
 奈良県のどこで、どのような梨が栽培されているか知っていますか?
 県内における梨栽培の歴史は明治時代から始まります。大淀町の大阿太高原では「二十世紀」、斑鳩町周辺では「長十郎」という梨の栽培が行われていました。昭和40年頃からは「長十郎」に代わり「幸水」と「豊水」の栽培が始まり、現在の斑鳩町の梨を代表する品種となっています。梨は果皮の色で青梨と赤梨に分けられます。
 大淀町の青梨「二十世紀」、斑鳩町の赤梨「幸水」と「豊水」、この秋は奈良の梨を食べ比べてみませんか?
豊水
 
 二十世紀
 
 幸水
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