奈良のむかしばなし


奈良のむかしばなし
奈良に古くから伝わる
むかしばなしをご紹介します。
まぐわ淵(ぶち)
文・山崎しげ子
 西の生駒山と東の矢田丘陵に挟まれた平群谷(へぐりだに)。その谷間を竜田川が流れる。今回はその川の「まぐわ淵」と呼ばれるところに伝わる怖~いお話。
 竜田川が大きく蛇行するあたりのまぐわ淵は、奇岩や巨石が累々(るいるい)と連なる不思議なところ。
 その昔、地元、椣原(しではら)のお百姓さんが、一日の仕事を終えて「馬鍬(まぐわ)」という牛(馬の場合も)に引かせて田植え前の田を耕す農具を肩に、牛を追いながらこの淵までやってきた。
 お百姓さんは川で馬鍬の泥を洗い、ついでに牛の体も洗おうと、牛を川の中に引き入れた。
 牛の脚を洗い、次に腹も洗ってやろうとした時、牛が突然、何かに驚き、奇声とともに飛び上がった。
 あたりを見ると、さあ、大変、急な夕立ちのあと、川は急に増水し大きな渦を巻いていた。そして、あっという間に牛と馬鍬が淵に飲み込まれてしまった。
 お百姓さんは命からがら岸へ上がった。噂を聞いた村人たちが駆けつけたが、牛と馬鍬は二度と上がってこなかった。
「こりゃ、淵の主にやられたのじゃ」と村人たちは言い合った。淵の主とはガタロ(カッパ)らしい。それ以来ここは「まぐわ淵」と呼ばれるようになった。
 まぐわ淵は、今も奇岩や巨石の間を水が滝のように白く泡だって流れ、水音も「ゴーゴー」と激しい。深い淵は黒みを帯びて恐ろしいほどだ。
 地元の人の話では、「子どものころ、ここで遊ばないよう親から注意された」という。子どもの冒険心や遊び心を強くいさめた伝説かもしれない。
 道路からまぐわ淵に下りる遊歩道に沿った広い堤には、椿、桜、雪柳、山吹、楓(かえで)(もみじ)などが多く植えられ、四季折々、楽しめる。ことに六月は楓の緑が美しく、初夏の明るい光を受けて鮮やかに輝いている。
まぐわ淵
 奈良県景観資産にも選ばれているまぐわ淵は、近鉄生駒線東山駅前や平群北公園からの遊歩道が整備され、ウッドデッキから淵を間近に眺めることができる。また、近くには奈良時代に行基によって開かれた金勝寺もあり、あわせて散策できる。
 平群町観光ボランティアガイドの会に依頼すれば、役行者が開いた千光寺や石仏群も案内してもらえ、普段の散策で気付かないポイントも教えてもらうことができる。
平群町観光ボランティアガイドの会(あすのす平群内)
TEL
0745-46-1120
物語の場所を訪れよう
まぐわ淵(平群町椣原)へは…
近鉄生駒線 東山駅より約500m
地図
平群町観光産業課
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0745-45-1017
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