はじめての万葉集


はじめての万葉集
庭(には)つ鳥(とり) 鶏(かけ)の垂尾(たりを)の 乱尾(みだれを)の
 長き心も 思ほえぬかも
作者未詳
巻七 一四一三番歌
【訳】 家に飼う鶏の垂れた尾の乱れ尾のように心も乱れ、長く生きてゆこうという気持ちも今は考えられないことだ。
庭つ鳥
 かつては、自宅で数羽の鶏を飼育するご家庭も多くみられました。食卓にのぼる産みたての卵は格別で、明け方の鳴き声は目覚まし時計のかわりでもあったと聞きます。
 この歌の冒頭にある「庭つ鳥」とは、庭の鳥という意味で、鶏にかかる枕詞です。いわゆるニワトリという呼び名は、ここから生じたと考えられます。ニワトリは、古代の人々にとっても家の庭で飼育するのが一般的な、身近な生物だったようです。単にトリというだけでもニワトリのことを指しました(巻三・三八二番歌など)。ほかにも、キジは「野つ鳥(野の鳥)」(巻一三・三三一〇)カモは「沖つ鳥(沖の鳥)」(巻一六・三八六六)などと表現されています。
 当時、鶏はカケと呼ばれていました。これは鳴き声に由来する名で、神楽歌にも「には鳥はかけろと鳴きぬなり」とあります。
 その鶏の長く垂れた尾羽が乱れている様子を序詞として、「長き」という言葉を導いています。「長き心」をどう解釈するかは説が分かれていて、気長でゆったりとした心、のんびりした気持ち、と理解する考え方と、長く生きたい、長く生きてゆこうという気持ち、と理解する考え方とがあります。
 ただ、この歌は挽歌として詠まれています。挽歌とは死を悼む歌です。序詞の技法を用いている点で切羽詰まった悲しみというよりはどこか心の余裕を感じさせますが、人生のパートナーに先立たれた誰かが愛しい人亡き後に詠んだ歌であったとすれば、今は長生きしたいという気も起きない、という意味で「長き心」と表現したのではなかったかと思います。
(本文 万葉文化館 井上さやか)
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 『古事記』や『日本書紀』にも記述がある日本最古の神社のひとつ。古代豪族物部氏の総氏神で、大和朝廷の武器庫だったとの記録もあります。参道をはじめ境内の各所には、神の使いとして、約40羽の鶏が放し飼いされています。
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