はじめての万葉集


はじめての万葉集
等夜(とや)の野に 兎(をさぎ)狙(ねら)はり をさをさも
寝なへ児(こ)ゆゑに 母に嘖(ころ)はえ
作者未詳
巻十四 三五二九番歌
【訳】 等夜の野でをさぎ(ウサギ)を捕まえようと狙う―そのをさぎではないが、おさおさも寝ていないあの子のせいで母親に叱られて。
ウサギとをさぎ
 この歌は、東国(現代の関東地方や東海地方の一部)で詠まれたとみられる恋の歌の一首です。『万葉集』でウサギを詠んだ唯一の歌でもあります。ウサギのことを「乎佐藝(をさぎ)」と記しているのは、古語なのか東国の方言なのか、よくわかっていません。また、「等夜」も地名とみられますが詳細は不明です。
 ウサギを捕まえようと狙う、という部分は実際の行動や景色などではなく一種の比喩で、「をさぎ」という発音から同じ音を持つ「をさをさ」(ろくに・少しも)ということばを導き出す役割を持っています。そしてこの歌の主意は、ろくにデートもしていない彼女の母親にこっぴどく叱られた、という後半部分にあります。
 状況も意味もまったく関連性のない前半部と後半部とを同じ発音を持つ語でつなぐことば遊びのような表現は、古代の歌に特徴的な技法で序詞(じょことば)と呼ばれています。ただ、単なることば遊びではなく、重層的なイメージを掻き立ててもくれます。この歌では、お目当ての女性に会いに行く男性の姿が、愛らしいウサギを捕まえようとする狩人のようすをほうふつとさせます。
 古代日本の夫婦や恋人たちにとっては夜間に男性が女性の自宅の部屋を訪ねていくことが一般的で、家を取り仕切る母親の目をかいくぐってデートするのがマナーだったともいわれます。おまえの母親に叱られてすごすごと引き返したという歌(巻十四・三五一九番歌)や、まるで山をうろつく獣のように追い払われたという歌(巻十四・三五三一番歌)などもあり、女性の母親のお眼鏡にかなわず追い返された男性も多かったようです。
(本文 万葉文化館 井上さやか)
写真
万葉ちゃんのつぶやき
なで兎
 桜井市の大神(おおみわ)神社には、青銅製のウサギの像があります。大神神社の例祭である大神祭が、崇神(すじん)天皇8年卯の日に始まったとされ、卯の日神事ともいわれることから、大神神社とウサギには深い縁があると考えられます。
 このウサギの像をなでると体の痛みを癒やし、願い事が叶うといわれています。普段は参集殿の中にありますが、正月には祈祷殿前の建物に置かれ、初詣に来た人々になでられピカピカになっています。
大神神社
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