はじめての万葉集

県民だより奈良 平成30年12月号

はじめての万葉集
打つ麻(そ)を 麻続王(をみのおほきみ) 海人(あま)なれや
伊良虞(いらご)の島の 玉藻(たまも)刈(か)ります
作者未詳
巻一 二三番歌
【訳】 打った麻をうむ、麻続王は海人だからだろうか、
伊良虞の島の玉藻をわびしく刈っていらっしゃるよ。
麻続王(おみのおおきみ)の伝承

 今回の歌は、天武(てんむ)天皇の時代に、麻続王(おみのおおきみ)という人物が罪によって伊勢国の伊良虞(いらご)の島に流された時に、ある人が哀傷して作ったと伝えられている一首です。「伊良虞の島」は所在未詳ですが、現在の愛知県の渥美半島先端の伊良湖岬(いらごみさき)とする説や、伊良湖岬西方の神島とする説があります。
 麻続王は伝未詳の人物です。『日本書紀』天武天皇四(六七五)年四月条には、時に三位であった王を流罪にしたとありますが、何の罪であったかは不明です。『日本書紀』では王を因幡(いなば)国(現在の鳥取県)に流したとあり、さらに二人の子どもをそれぞれ「伊豆(いず)の島」と、現在の長崎県五島列島の島とされる「血鹿(ちか)の島」に流したと記されています。また、『常陸国風土記(ひたちのくにふどき)』行方(なめかた)郡条には、麻続王が板来(いたく)村(現在の茨城県潮来(いたこ)市の一部)に追放されて住んでいたという伝承も記録されています。
 歌の「打つ麻(そ)を」は「麻続(をみ)(「麻績」とも書きます)」の枕詞(まくらことば)で、麻(あさ)は打って繊維を柔らかくして糸に績(う)む(糸による)ことから、「麻続王」にかかります。高貴な身分である王が流罪になった上に、あろうことか海人(あま)ででもあるかのように島の藻を刈っていらっしゃるーそのような悲哀と同情からこの歌が詠まれ、王の伝承と共にうたい継がれていったものと思われます。
 王が実際はどこに配流されたのか、興味は尽きません。ですが、伊勢・因幡・常陸のような広範囲において、一人の人物をめぐる歌や伝承が残されていることにこそ、この作品の価値があるように思われます。この作品は、古代の伝承世界を知る貴重な手がかりとして注目されています。
(本文 万葉文化館 大谷 歩)

万葉ちゃんのつぶやき
昔からの食べ物
 上の歌に登場する麻続王(おみのおおきみ)は、何のために「玉藻」を刈っていたのでしょうか? 実は今回の歌に麻続王が答えたという歌には「玉藻刈食」とあり、現代の私たちと同様、海藻を食べていたと考えられます。
 現代の日本では世界中の食べ物が手に入りますが、日本に古くから伝わる古代米もその栄養価が見直されてきています。古代米を使ったおいしいレシピは「新発見!おいしい奈良」で紹介しています。
古代米
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