奈良の女性起業家紹介 山口まゆみさん(行政書士)

資格を活かし、柔軟な働き方の中で やりたい仕事に挑戦

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  • 起業年:行政書士登録2013年(「あかるみらい準備室」の立ち上げは2017年)
  • 業種:行政書士・終活カウンセラー・ファイナンシャルプランナー(AFP)
  • 住所:奈良県奈良市法華寺町1番地の5 奈良バイパスビル2階
  • TEL:0742-30-6360
  • URL:http://yamatomirai.net/

       

 山口さんの活動内容を教えてください

フリーランスの行政書士として、活動しています。行政書士の仕事は、県庁や市役所のほか保健所や警察署など官公庁に提出する数万種類あるともいわれる許認可申請等の書類作成・提出代理や、契約書などの法務書類作成などの事業者サポートのほか、個人の方向けの相続手続きや遺言作成等多岐にわたります。

今は私個人の事務所ではなく「行政書士やまとみらい法務事務所」と業務委託を結ぶ形で仕事を受けています。


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起業のきっかけや思いを教えてください

大学卒業後、「地域の方々と密接な関わりをもって働きたい」という思いから、郵便局に就職し大阪で働き始めます。数年働いたあと、当時お付き合いをしていた人(今の夫)が奈良県民だったこともあり、今後のことを考えると、ふたりの地元である奈良に住み、子育てしながら奈良で働きたいと考えるようになり転職を考え仕事を探しますが、奈良は大阪や京都に比べ企業数自体も少なく、これという仕事が見つかりませんでした。

そんなとき、たまたま目にしたフリーペーパーの「輝く女性特集」で、自宅で開業している行政書士の記事を目にしました。母が保育士という資格を活かして働いていたこともあり、自分も結婚・出産後も働き続けたいと思っていたため「私もこの人のように行政書士になれば、奈良で子育てしながら働けるかも」と思いました。

私は思い立ったら即行動!という性格なので、すぐにその先生に電話をし、お話を伺ったところ、自宅で開業し、家庭と仕事を両立されているということでした。大学で学んだ法律の知識も活かせるとその後すぐに行政書士資格を取るために通信教育で勉強をはじめます。郵便局の仕事をしながら夜中に勉強を続け、平成17年(2005)度の行政書士試験に合格しました。


その後結婚し、奈良で暮らし始めてからしばらくして郵便局を退職。2007年に実務経験を積むため司法書士事務所に事務スタッフとして就職、経験を積みフリーランスの行政書士となります。



 これまでの困難やご苦労について教えてください

行政書士の資格を取得しただけで実務経験はなく、すぐに仕事を軌道に乗せる自信もなかったため、まずはどこかの事務所で働いて経験を積もうと考えました。しかし、行政書士は一人で事務所の経営を行なっているケースが多く、なかなか求人のある事務所が見つかりませんでした。せっかく頑張って資格を取ったのに、これでは行政書士として働けないと悩みました。そんなとき、司法書士事務所の事務スタッフ募集の求人を目にし、「物は経験だ。やってみよう!」と勇気を出して飛び込んでみました。


スタッフとして働き出して数年後に、妊娠・出産しました。産休・育休を取得し復帰すると、思い描いていた生活とは違い育児と仕事の両立に苦労しました。子どもが1歳になる前に保育所に入園したのですが、預けたばかりの子どもは免疫力の低さから病気にかかりがち。奈良は結婚・出産で離職する人が多く、『3歳児神話』の考えも根強いところ。

「こんな小さな子を預けて」と言われることもあり、そんなときは「自分が働くのが悪いのだろうか?」「そもそも仕事をしていなければ、休みなどで周りに迷惑をかけることはないのに……」と自責の念にかられ、罪悪感と葛藤する日々でした。


事務スタッフとしての経験を積んだのち、2013年行政書士として登録し仕事を始めます。そこでもまた悩みが。先にお話ししたように行政書士業務の範囲は非常に広いため、どのように自分が受ける仕事を選別していくか、または選別せずに広く受けるのかの判断を迫られました。専門分野を絞ってその業務しか受任しないという形で仕事をされている方も多いのですが、新人のうちはあまり業務範囲を限定しても依頼がなく生計を立てるのが困難であるように思い、悩みました。

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どのように乗り越えてこられましたか?

育児と仕事の両立については、職場のメンバーがあたたかく見守り、支えてくれたことで壁を何とか乗り越えてこられています。保育園の先生方にもたくさん励ましていただきました。夫はもちろんお互いの実家にも助けてもらっていますが、私の場合は「バリバリ育児と仕事を両立させているのよ!」という感じではなくて、今こうして両立できているのは、多くの人のサポートがあったからこそと思っています。

行政書士に登録して最初のうちは、仕事がないという時期もありました。そんな時には自分からどんどん色々な集まりや勉強会に参加してみて、知識を研鑽すると同時に人脈を作りました。悩んだ結果、あえて業務範囲を限定しすぎずに、広く仕事を受けることにしたことで、安定した収入の基盤となったことはもちろんですが、多くの事業主様と繋がりを持てる結果となったのだと感じています。

経験を積むにつれ、やりがいは一層強くなりましたし、人との繋がりからまた別の事業主様のお仕事をご紹介いただけたり、色々な機会をいただくことが増え、活動範囲もどんどん広がっていきました。




これまでの成果と今後の目標について教えてください

「奈良を活性化して地元奈良で女性が仕事を続けられる場所を増やしたい」という想いから起業や事業継続のサポート業務をメインにするとともに、相続・遺言・成年後見制度利用等の終活分野ももう一つのメイン業務としています。

その終活業務の中で、障がいがあるお子さまをお持ちの親御様から「将来に漠然とした不安があるがどこに相談すればいいかわからない」というお声をいただいたことをきっかけに、2017年に障がいがある子を持つご家族を対象に、親亡き後の不安等の相談を受ける相談窓口「あかるいみらい準備室(任意団体)」を立ち上ました。相談内容を限定せずまずは気軽に相談していただき、必要な情報を提供したり、場合によっては適切な機関や専門家におつなぎしたりする活動をしています。

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当初は障がいを持つ方のみを想定していたのですが、ひきこもりの子がいるご家族にも対象を広げ窓口を開設したところ反響が予想以上に大きく驚きました。現在はご家族だけではなく、将来に不安を持つ当事者の方からのご相談も多くなってきています。

なるべく多くの人の目に触れるように毎日SNSなどで情報発信した結果、たくさんの方からご相談をいただくとともに、行政や福祉業界の方などとの連携が広がり、障がいを持つ方やひきこもり当事者のための新しい取組や仕組みづくりにも関わらせていただくようになりました。 こういった動きが広がれば、奈良が活性化し、女性や生きづらさを抱えた方をはじめ、多くの人が活躍できる働き口が増え、多くの人が住みやすい社会モデルを作っていけます。

事業主をサポートし、事業を陰で支える「縁の下の力持ち」的な行政書士の仕事にもやりがいを感じていますが、それと並行して「あかるいみらい準備室」がまた違う形で多くの人が住みやすい社会モデルづくりの一端を担えればいいなと思っています。






事業展開を目指す女性へのメッセージをお願いします

やらないで後悔するよりやってみて後悔する方がいいと思っています。資格は一生ものですから、頑張って資格を取って、それを活かして仕事をすることは、ライフステージに変化が多い女性にとっては強みになりますよね。

だから、気になることやしてみたいことはまずチャレンジしてほしい。周りにいる家族や職場の人もできるだけ応援してほしいなと思います。

資格を取ったのち、独立開業するのがいいかは人によりけりですが、一度は修行として事務所で働いてみると、周りに相談をしながら経験を積むことができますので、独立はそのあとでもいいかもしれません。私の場合は、多分最初から独立していたとしたら今ほど多くの人と触れ合ってつながりを持つことも、仕事の幅が広がることもなかったでしょうし、「あかるいみらい準備室」を立ち上げるまで至らなかったでしょう。

資格の活かし方として、必ずしも独立開業をする必要はなく、広く選択肢を持って選ぶもいいのではないでしょうか。

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(12月4日 取材)

印刷用PDF(山口さん記事)(pdf 761KB)



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