奈良県林試研報No.26(要旨)

圧縮法による難浸透性木材への液体注入(第5報)
防腐剤の注入と処理木材の防腐効力試験

酒井温子・中村嘉明・飯田生穂

 難浸透性のベイマツ心材を用い、加圧注入の前処理として気乾状態の木材に横方向に40%の圧縮変形を与え、その処理材に3種類の防腐剤を注入した。その結果、圧縮処理を行った材は、行わなかった材に比べて、注入量が約2倍に増加した。また、注入後乾燥させた材を長さ方向の中央部で切断し、木口断面で薬剤の浸透状況を観察したところ、圧縮処理を行わなかった材では、薬剤の分布が不均一であったが、圧縮処理を行った材では、内部までかなり均一に薬剤が浸透していた。実体顕微鏡を用いて観察した結果、圧縮処理を行った材では主に早材部仮道管と樹脂道に薬剤が分布していた。これは、直径の大きい細胞ほど圧縮変形を受けやすく、壁孔の破壊が生じて薬剤の浸透通路が増加したことによると考えられる。さらに、オオウズラタケとカワラタケを用いた室内強制腐朽試験の結果、圧縮処理を行った材は、腐朽による質量減少率が小さく、高い防腐性能を有していた。これらの結果はいずれの防腐剤にも共通して認められた。
 以上から、防腐処理材の製造の際に、薬剤注入前に圧縮処理を行うことは、特に難浸透性の木材に対しては、防腐性能の向上に大変有効であると言える。

 

 

構造用大断面集成材の曲げ強度に及ぼすラミナ強度の影響
モンテカルロシミュレーションによる構造用大断面集成材の曲げ強度分布の予測

柳川靖夫・和田 博・坂野三輪子・田中 茂

 スギ無接合ラミナおよび縦つぎラミナの、引張および曲げ試験を行った。次に、等級区分されたラミナを使用して、構造用集成材のJAS(JAS)に準拠した4グレードの構造用大断面集成材を製造し、曲げ試験を行った。ラミナの強度試験の結果を基にモンテカルロシミュレーションを行い、同じ4グレードの仮想の構造用大断面集成材の曲げ強度の分布を推定し、実測値の分布と比較した。また引張側外層に無接合ラミナおよび長さ方向の中央部付近に縦つぎを含むラミナを使用した場合の、曲げ強度の分布の相違を検討した。その結果、製造したすべての構造用大断面集成材の曲げ強度は、JASの曲げ強度の基準値を上回った。シミュレーションにより推定した仮想の構造用大断面集成材の曲げ強度の分布は、実測値の分布とほぼ一致した。引張側外層に無接合ラミナを使用した場合、JASの曲げ強度の基準値に達しない仮想の構造用大断面集成材の出現割合は、長さ方向の中央付近に縦つぎを含むラミナを使用した場合の出現割合より低かった。曲げヤング係数が低いグレードほど、JASの曲げ強度の基準値に達しない仮想の構造用大断面集成材の出現割合が高くなる傾向が認められた。

 

 

ヒラタケのビン栽培において発現する菌株特性

小畠 靖

 ヒラタケ子実体形成能力の栽培品種間差とその原因を明らかにするため、8菌株をもちいて、スギおが屑・米ぬか培地によるビン栽培をおこない、栽培過程における培地乾燥重量減少率(分解指数)、可溶性養分量および菌糸体量の変化を調べ子実体収量との関連について検討し、以下の結果を得た。
1)培養期間の分解指数と子実体収量の間には、相関関係は認められなかったが、子実体収穫後の培地の分解指数と子実体収量の間には有意な相関が認められた。
2)培地中の可溶性タンパク質および可溶性炭水化物含有量は、栽培過程が進むにしたがって減少する傾向を示し、可溶性タンパク質含有量は子実体収量の多い菌株ほど子実体形成期に増加した。
3)子実体形成期の培地中可溶性タンパク質の増加量と子実体収量の間には正の相関関係があり、子実体収穫時の培地中の可溶性炭水化物含有量と子実体収量との間には、負の相関関係がみられた。
4)培地中のグリコサミン含有量は、すべての菌株において、子実体収穫時に減少した。子実体原基形成時の培地中のグリコサミン含有量と子実体収量の間には相関関係は認められなかった。

 以上のことから、ヒラタケのビン栽培で子実体形成能力の高い菌株は、子実体形成期に培地の分解が旺盛であり、炭水化物の吸収および子実体への転流を効率的におこなう特徴をもつことが考えられる。

お問い合わせ

森林技術センター
〒 635-0133 高市郡高取町吉備1

お問い合わせフォームはこちら


総務企画課 TEL : 0744-52-2380 / 
FAX : 0744-52-4400
森林資源課 TEL : 0744-52-2380 / 
FAX : 0744-52-4400
木材利用課 TEL : 0744-52-2380 / 
FAX : 0744-52-4400
森林管理市町村連携課 TEL : 0744-52-2380 / 
FAX : 0744-52-4400