研究報告No.32再録

シュピーゲル・レラスコープとペンタプリズムキャリパーを用いた立木幹材積の測定誤差

和口美明

Journal of Forest Planning 8,25-27(2002) [英文]

 

 本報告では、立木を対象にシュピーゲル・レラスコープで測定した樹高(hs)と、ペンタプリズムキャリパーで測定した樹高のi/10(i= 3, 5, 7)における樹幹上部直径(dw0.ihs)を使って求めた立木幹材積の誤差を示した。測定対象として、29年生のヒノキ林から25本の立木を選んだ。hsとdw0.ihsの真値は伐倒して測定した。hsにおける誤差の平均値、標準偏差、および範囲は-0.33m、0.31m、および-0.8~0.5mであった。一方、dw0.ihsにおける誤差の平均値、標準偏差、および範囲はdw0.3hsで0.31cm、0.57cm、-0.3~1.3cm、dw0.5hsで0.37cm、0.69cm、-0.9~1.2cm、dw0.7hsで -0.34cm、0.79cm、-1.6~1.1cmであった。樹高と樹幹上部直径測定における今回の測定誤差は、これまでの調査報告と同程度の大きさであった。それらの測定値を使って推定した立木幹材積における誤差の平均値、標準偏差、および範囲は0.0023m3、0.0084m3、および-0.0097~0.0201m3で、立木幹積を測定する方法としては十分な精度であった。

キーワード:誤差、幹材積、樹高、樹幹上部直径、立木

 

 

水分通導コンダクタンスが低下したヒノキの樹幹直径日変化からの水分生理状態の推定

上田 正文・柴田叡弌

Trees 16,523-528 (2002)(Original Article)[英文]

 

 比葉量水分通導コンダクタンスが低下したヒノキの水分生理状態を明らかにするために、20年生ヒノキ2個体について、夏期の高温乾燥期間における樹幹直径日変化を測定した。測定をおこなった2個体のヒノキのうち1個体は、樹幹横断面における水分通導部が減少するとともに、比葉量水分通導コンダクタンスが著しく低下した個体であった。樹幹直径日変化は、「ひずみゲージ」法により、樹幹木部組織において測定した。土壌水分が恵まれた状態では、双方の個体とも樹幹直径日変化は日中減少し、夜間に増加する同じ日変化パターンを示した。しかし、土壌の乾燥が進むにしたがい、比葉量水分通導コンダクタンスが著しく低下した個体では、直径日変化の最大・最小値ともに急激に低下する傾向を示した。これらの樹幹直径日変化の違いは、樹幹の比葉量水分通導コンダクタンスの違いによると考えられた。

キーワード:水ストレス・直径日変化・ヒノキ・ひずみゲージ法・水分通導部

 

 

「ひずみゲージ法」によって測定した樹木の幹・枝部の直径日変化と水分状態

上田正文・柴田叡弌

樹木医学研究 6(2),75-84 (2002)(総説)

 

 樹木の幹・枝部における直径日変化を測定するための「ひずみゲージ」の有効性について検証し、「ひずみゲージ法」によって測定した直径変化と樹木の水分状態との関係について論じた。木部表面で測定した直径変化(木部直径変化)は、葉の水ポテンシャルと酷似した日変化を示すことから、樹体の水収支と関係して生じると考えられる。さらに、木部直径変化から換算した直径変化速度は、水収支の変化速度(樹液流速度-蒸散速度)を表すといえる。一方、長期の無降雨期間において測定した結果によれば、木部直径変化速度の日変化パターンを、土壌および樹体の水分状態と関連して7タイプに分類することができる。また、ヒノキ健全木と衰退木の木部直径変化および木部直径変化速度のパターンを比べると、衰退木には土壌の乾燥にしたがって、それらが急激に変化する傾向が認められる。これらの知見にもとづいて、「ひずみゲージ」による樹木の直径変化測定について応用法を考察した。

 

 

ヒラタケのB不和合性因子変異株の誘発分離

小畠 靖・長谷部公三郎・福政幸隆

Mycoscience 43,197-200 (2002) (Full paper) [英文]

 

 野生型ヒラタケの子実体から単胞子分離した一核菌体を,A因子が異なりB因子が共通の組み合わせで交配し,NTGで突然変異処理することによりB因子突然変異株(Bmut株)を誘発分離した.Bmut株は正常な子実体を形成し,それらから調製したprogenyを四つの交配型テスターを用いて検定交配したところ,A2B2とA2B1あるいはA1B1とA1B2のテスターに和合するBmut一核菌体A1B2mutならびにA2B2mutが出現した.Bmut一核菌体は細胞に1個の核を持ち,隔壁の崩壊も見られなかった.さらに,A因子が異なるBmut一核菌糸体同士で交配したところ,得られた二核菌糸体は正常なクランプを有し,各細胞も安定して2個の核を有した.また,これらの二核菌糸体(A1B2mut+A2B2mut)はいずれも正常な子実体を形成し,そのprogenyの交配様式はA因子のみに制御される二極性を示した.遺伝解析により,ヒラタケのB因子の突然変異はB因子遺伝子座に生じた変異によるものと示された.

キーワード:B不和合性因子、突然変異誘発、ヒラタケ

 

 

硬化積層材を利用した木質構造接合部材の開発(第6報)

中田 欣作・杉本英明・井上雅文・川井秀一

木材学会誌 48(2), 89-97 (2002)

 

 強化LVL製の厚さ17mmあるいは34mmの接合板および直径12, 16 および20mmの接合ピンを用いた接合部(LVL/LVL接合)の各種接合試験を行い、厚さ17mm強化LVL接合板および直径12mm丸鋼ピンを用いた接合部(LVL/丸鋼接合)あるいは9mm鋼板および12mm丸鋼ピンを用いた接合部(鋼板/丸鋼接合)との比較を行ったところ、以下の結果が得られた。
1) 引張型せん断耐力試験におけるLVL/LVL接合のせん断耐力、すべり係数および粘り強さは、強化LVL接合ピンの直径の増加とともに増加した。17mm接合板と20mm接合ピンを用いた場合には、鋼板/丸鋼接合のそれぞれ79、63および28%であった。
2) 柱-梁接合部のモーメント抵抗型接合試験におけるLVL/LVL接合の最大耐力および回転剛性は、接合ピンの直径の増加とともに増加したが、粘り強さはやや低下した。17mm接合板と20mm接合ピンを用いた場合には、鋼板/丸鋼接合のそれぞれ91、112および81%であった。
3) 梁-梁接合部の曲げ型接合試験におけるLVL/LVL接合の接合性能は、LVL/丸鋼接合の82~112%であったが、17mm接合板と矩形のピン配置では鋼板/丸鋼接合の25~78%となった。34mm接合板と楕円のピン配置では、LVL/LVL接合の曲げ剛性および粘り強さは鋼板/丸鋼接合の90および75%となったが、最大耐力は62%であった。

キーワード:強化LVL、接合板、接合ピン、接合、集成材

 

 

硬化積層材を利用した木質構造接合部材の開発(第7報)
強化LVL接合版および接合ピンによる木質構造接合部の耐火性能

中田 欣作・杉本英明・上杉三郎・原田寿郎・井上雅文・川井秀一

木材学会誌 48(4), 249-256 (2002)

 

 強化LVL製の接合板および接合ピンを用いてベイマツ集成材を接合し、載荷曲げによる耐火試験およびコーンカロリーメーター試験を行って、以下の結果を得た。
1) 強化LVLのコーンカロリーメーター試験における発熱速度は、密度および熱伝導率から予測される値より低く、集成材の1.1~1.3倍であった。また、強化LVLの燃え抜け時間から算出される炭化速度は集成材の1/1.7であった。
2) 強化LVLを用いた接合部では、耐火試験における試験体内部の温度上昇が極めて遅く、接合板および接合ピン部分での燃え込みは生じていなかった。また、同接合部は、鋼板接合板および丸鋼接合ピンを用いた接合部より、たわみの増加が少なく、耐火時間が長く、優れた耐火性能を有していた。
3) 加熱時間に伴う集成材の断面寸法の減少に加えて、集成材の炭化層の内側にある高温層と縁距離の影響を考慮して線形応力解析を行い、耐火時間の予測を行ったところ、耐火時間の計算値は実験値と良く一致するとともに、試験体の破壊状況を良く表現していた。

キーワード:強化LVL、接合、耐火性能、コーンカロリーメーター試験、炭化速度

 

お問い合わせ

森林技術センター
〒 635-0133 高市郡高取町吉備1

お問い合わせフォームはこちら


総務企画課 TEL : 0744-52-2380 / 
FAX : 0744-52-4400
森林資源課 TEL : 0744-52-2380 / 
FAX : 0744-52-4400
木材利用課 TEL : 0744-52-2380 / 
FAX : 0744-52-4400
森林管理市町村連携課 TEL : 0744-52-2380 / 
FAX : 0744-52-4400