奈良のむかしばなし

         
県民だより奈良
2021年8月号

はじめての万葉集
【第74話】
お化粧する女神様
文・山崎しげ子
 奈良盆地の東南、四方を緑の山に囲まれた美しい小盆地、宇陀(うだ)市。宇陀川、芳野(ほうの)川、内牧(うちまき)川が流れる。
 古くは『古事記』『日本書紀』に登場する神武天皇東征神話の兄宇迦斯(えうかし)、弟宇迦斯(おとうかし)のお話の舞台ともなった。今回は、その宇陀市に伝わる神様の不思議~なお話。

 昔、昔、宇陀に水分(みくまり)の神様がおられた。宇太水分(うだのみくまり)神社には男の神様、上芳野の惣社(そうしゃ)水分神社には女の神様が祀(まつ)られていた。その女の神様が、年に一度、夫である男の神様に会いに行かれるという。
 さて、秋の一日、上芳野の女神様は、輿(こし)に揺られ、お供と一緒に宇太水分神社に向かわれた。
 その途中、道の中間点である東郷(とうごう)の地でひと休み。女神様はお供えされた化粧品でお化粧直しをなさった。白粉、口紅、頬紅、眉墨など、それはそれは、た~くさん。
 ところが、ある年のこと。村人が、「化粧品といっても、神様はお使いにならんやろ。捨てるのももったいない。娘にやろう」といい、そこである神官が家に持ち帰った。
 さてさて、化粧品を入れた箱の蓋をあけてみると、何と、中は空っぽ。びっくりした神官はこのことを村人たちに伝えた。「恋しい夫の神様にお会いなさる女神様。きっと美しい上にも美しくお化粧をなさる。やっぱり、神様はおられるんや」と。それからは、村人たちはいっそう信心深くなったそうや。

 宇太水分神社は、『古事記』などに伝える崇神(すじん)天皇の創建とされる古社。水分の神は、水配り、つまり農耕にもっとも重要な水の配分を司る神のこと。豊作を祈願して水源地などに祀られ、古くから人々の信仰を集めてきた。
 大和朝廷では、東西南北、つまり、宇陀、葛城(かつらぎ)、吉野、都祁(つげ)の地に四つの水分社が祀られ、東の宇太水分神社はその一つ。
 境内は、見上げるばかりの老樹に囲まれ、野鳥の囀(さえず)りだけが響く。静寂の中、鎌倉時代の建物である本殿(国宝)の朱塗りの社殿が、美しい姿を見せている。
たぬきの恩返し
うたの秋祭り
 平安時代から続く祭りで、10月第3日曜日に行われています。
 年に1度、惣社水分神社の女神である速秋津姫命(はやあきつひめのみこと)が、宇太水分神社の男神である速秋津彦命(はやあきつひこのみこと)に会うため、片道6㎞の道のりを神輿に乗ってやってきます。この神輿渡御(みこしとぎょ)は大名行列の形をとり、挟箱(はさみばこ)、槍振(やりふり)、花籠(はなかご)などが神輿を先導します。
 宇太水分神社境内には速秋津姫命をお迎えするため、菟田野(うたの)各地域から6基の勇壮な太鼓台が乗児(のりこ)の叩く太鼓の音とともに集まります。境内での太鼓台の練り回しは迫力満点です。
 YouTubeでも楽しめます。
 宇太水分神社
宇太水分神社
うたの秋祭り
うたの秋祭り
物語の場所を訪れよう

「宇太水分神社」(宇陀市菟田野古市場245)
奈良交通バス古市場水分神社前下車、東へ約100m
地図
宇陀市観光課
電話 0745-82-2457

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