答申第82号の概要

◆ 諮 問「苦情事案調査報告書の作成について(伺)(起案日 平成31年1月17日)」の部分開示決定に対する審査請求についての諮問事案

◆ 諮問実施機関 奈良県公安委員会

◆ 事案の経過 (1)開示請求  令和元年 5月10日
        (2)決定    令和元年 5月23日付けで部分開示決定
        (3)審査請求  令和元年 8月23日
        (4)諮問    令和元年10月 3日
        (5)答申    令和3年 9月30日

◆ 諮問に係る不開示部分
    関係警察職員の拝命年月日、生年月日、年齢及び氏名の一部

<不開示理由>
  条例第14条第2号に該当
   あなた以外の個人に関する情報が含まれており、開示することにより、当該個人
  の権利利益を侵害するおそれがあるため

◆ 審議会の結論 
   実施機関は、不開示とした情報のうち、苦情・相談係長の名の部分及び公安委員会
  事務担当室係長の名の部分を開示すべきである。

<判断理由>

 警察関係職員の姓が開示される状況の中で、名を開示することにより、当該職員の氏名が明らかとなることから、個人が特定されることは否定できない。
 そして、警察職員については、公共の安全と秩序の維持に携わるという職務の性質上、犯罪者や反社会的勢力等、個人に対し危害を加えるおそれがある者と直接接することが通常想定される職務に従事する職員については、氏名が開示されることにより、当該警察職員の私生活に影響を及ぼす等の状況が想定されるところであることから、諮問実施機関の説明について、合理性を欠くとまでは認められない。
 しかしながら、本件決定において名を不開示とした苦情・相談係長及び公安委員会事務担当室係長については、いずれも苦情・相談対応業務に従事する職員である。行政が行う苦情・相談対応業務は広く県民一般を対象とするものであり、当該職員に危害を加えるおそれがある者のみを対象とするものではないと考えられるところ、警察が行う苦情・相談対応業務であることをもって、警察以外の行政機関が行う苦情・相談対応業務の内容と比較して特段の相違があるとまでは認められない。
 また、奈良県警察本部及び奈良県下各警察署においては、名札着用例規に基づき、受付業務等に従事する職員が県民に応対するときは名札を着用するものとしており、さらに名札の着用の有無にかかわらず、県民と応対する業務に従事するときは、積極的に氏名を告知するとともに、名刺を交付するなどして担当者を明らかにするよう努めるものとしている。そして、苦情、相談等に応対する警察職員については、名札着用例規が適用されると解されることから、苦情、相談等の応対者名が苦情申出者に了知されることにより、関係警察職員の権利利益を侵害するおそれがあるとは、通常想定されていないと考えるのが相当である。
 実施機関は、審査請求人が実施機関に対し報復感情を持ち続けていることを否定できず、名を開示することで関係警察職員本人や家族が審査請求人の報復の標的とされるおそれがある旨主張しているが、本件においては、諮問実施機関からは、当該おそれの根拠となると認められる審査請求人の具体的な行動や事実は示されていない。
 これらのことから、関係警察職員の名については、開示請求者以外の個人に関する情報ではあるが、本件事案においては、これを開示することにより、当該関係警察職員の私生活に影響を及ぼす特段の事情は認められず、それゆえ、当該関係警察職員の権利利益を侵害するおそれがあるとは認められない。