阪本踊りは氏神である天神社の境内で行われる盆踊りの総称です。以前は近隣の地域でも同様の盆踊りがあり、日付をずらし、互いに招待し合っていました。中でも阪本踊りは、多様な演目や扇を使った華やかな芸態が特徴です。
盆の20時頃、天神社に人々が集い、盆踊りが始まります。天神社の境内にあるお堂に櫓(やぐら)が組まれ、音頭取りが太鼓を打ち、周囲を踊り手が囲みます。手踊り、扇を使った踊り、男女が掛け合いで歌う踊りなど、同じ演目も繰り返しながら一晩で20曲ほど踊ります。当日は多くの観客と踊り手が夜が更けるまで踊りを楽しみます。 演目の1つである「政吉(まさきち)踊り」は、実際にあったとされる話に由来します。約200年前、淡路から山仕事の出稼ぎに来た青年が殺される事件があり、2年間にわたり阪本と小代(こだい)の集落に住む16~60歳の男性が取り調べを受け続けました。そんな中、阪本に住む中村屋の政吉が犯人として名乗り出て自らを犠牲にし、村を救いました。政吉踊りはその政吉の霊を弔うために始まったともいわれています。踊りを奉納する際は、扇を閉じ、位牌のようにして拝む仕草が取り入れられています。政吉踊りは4月に政吉の墓前で行われる供養祭でも踊られます。
盆踊りの日、音頭取りは1人で約20曲もの音頭をとります。歌、踊り、太鼓を覚えるのに加え、太鼓をたたくタイミングを踊り手の動きに合わせるため非常に難しく重要な役割です。かつては、皆で交代しながら行っていましたが、今は音頭を取ることができる人が限られています。音頭取りや踊り手の後継者を増やそうと、盆に帰省した若い人たちに踊りを教え、親しんでもらっています。また、阪本踊りには、歌詞と振り付けの両方が伝承されている演目が10数曲あります。まだ、習得できていない演目もあるため、現在は、演目の復活を目指し、過去の映像などの記録を見て保存会の皆で練習を行っています。 今後は、踊れる演目を増やしつつ、阪本だけではなく、ほかの地域の方にも興味を持っていただき、この伝統を後世に受け継いでいきたいです。
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