はじめての万葉集

県民だより奈良
2023年5月号

はじめての万葉集
【vol.109】
暇(いとま)無(な)み 五月(さつき)をすらに
吾(わ)妹(ぎも)子(こ)が 花橘を 見ずか過ぎなむ
高安(たかやす) 巻八 (一五〇四番歌)
暇がなくて、五月の節句にさえも、妻が作る花橘の玉を見ないで過ぎてしまうのだろうか。
五月の花橘

 今年度の「はじめての万葉集」では、『続日本紀』に登場する人々の歌を紹介していきます。
 この歌の作者は「高安」とだけ記されていますが、天武天皇の皇子である長皇子(ながのみこ)の孫にあたる高安王の歌とみられています。
 『続日本紀』によれば、高安王は和銅六(七一三)年に無位から従五位下となり、養老・神亀年間を通じて位を上げていき、天平十四(七四二)年に正四位下で没しています。元明・元正・聖武の三代に仕え、伊予国守や阿波・讃岐・土佐を管轄する按察使(あぜち)や、衛門府(えもんふ)の長官などを歴任した人物です。
 この歌の表現からは、長皇子の孫とはいえ一官吏として、五月の節句にも休みなく働かざるを得なかった様子がうかがえますが、実態ではなく、歌の表現上のことであった可能性も考えられます。
 万葉歌に詠まれた「橘」とはミカン類の総称であり、「花橘」は実ではなく花を鑑賞する際に用いられた語のようです。「花橘を玉に貫(ぬ)」くという表現もあり(巻三・四二三番歌、巻八・一五〇二番歌など)、平安時代の端午(たんご)の節句で無病息災(むびょうそくさい)を祈って飾られたという薬玉(くすだま)を連想させます。この歌もそんな季節感あふれる歌だといえます。
 高安王はまた、紀皇女の禁じられた恋の相手としても伝えられています。『万葉集』巻十二・三〇九八番歌の左注には、養老三(七一九)年に伊予国守に左遷(させん)されたと記されています。ただし、天武天皇の子である紀皇女は年代があわず、別人かといわれます。
 この歌の作歌年は不明ですが、そうした悲恋のエピソードを持つ人物だと知ると、花橘とともに思い起こす妻とは紀皇女で、彼女に会えないことを嘆いた歌に見えてきます。
(本文 万葉文化館 井上さやか)

五月の花橘イラスト
万葉ちゃんのつぶやき
粽とでんがら(川上村・東吉野村)
  川上村と東吉野村では男の子の立身出世を願い、端午の節句に粽とでんがらを作る風習があります。粽はアセの葉、でんがらは朴(ほう)の葉で包まれています。現在作られる餅は米粉と餅米粉が主ですが、昔はとうきびを粉砕したものが主でした。
粽とでんがら
川上村水源地課  
電話 0746-52-0111
東吉野村地域振興課  
電話 0746-42-0441
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