興善寺は融通念佛(ゆうずうねんぶつ)宗の寺院であり、白石の双盤念仏は、その興善寺の檀家有志の鉦講と呼ばれる人たちによって行われています。双盤念仏は直径50cmほどの大きな双盤鉦を叩きながら、「南無阿弥陀仏」の名号(みょうごう)を、息を長く引き伸ばすように唱えるものです。本尊に向かって2つの鉦座の上に双盤鉦が置かれ、双盤の音頭を取るカシラ(頭)は左側の鉦、受け手のオトが右側の鉦を担当します。また、法要の際は堂内のろうそくの番、葬具の管理などの裏方の仕事も鉦講が担っています。
白石の双盤念仏は、8月15日の盂蘭盆会(うらぼんえ)や24日の地蔵会式(じぞうえしき)でも行われますが、11月の十夜法要が最も盛大な行事で、多くの檀家が訪れます。十夜法要は、主に浄土宗や融通念佛宗の寺院で、旧暦の10月10日前後の10日間に行う行事であり、檀家が集まって念仏を唱えながら、ご先祖さまへの供養や秋の収穫に感謝します。 興善寺の十夜法要は11月1日から10日まで住職が毎日勤行(ごんぎょう)を営み、それとは別に11月2・4・6・8・10日に鉦講による双盤念仏が行われます。11月10日の最後の十夜当日、まず18時頃に双盤念仏が叩かれ、その後、鉦講をはじめ関係者は食事を取ります。19時には、僧侶を出迎えるための「迎え鉦」を叩き、僧侶によるあいさつと法話が行われ、法話が終わると、送るための「送り鉦」を叩きます。20時に再び「迎え鉦」が叩かれると、僧侶の新亡回向(しんもうえこう)と塔婆(とうば)回向が始まり、終了後は「送り鉦」が叩かれます。22時から始まる2回目の法話の前後にも「迎え鉦」・「送り鉦」を叩きます。そして、23時からは住職による本回向が行われます。「迎え鉦」で始まる本回向は、途中で双盤念仏の「回向鉦」が入り、本回向が終わると数珠繰りと御本尊お頂戴が行われます。数珠繰りは、僧侶の般若心経の途中から、鉦講の鉦と念仏に合わせて、参拝者は大きな数珠を回します。御本尊お頂戴では、僧侶が天得如来(てんとくにょらい)像の掛軸が入った箱を参拝者の背中に触れて回り、家内安全や無病息災(むびょうそくさい)を祈願します。御本尊お頂戴が終わると僧侶が堂から退出し、「送り鉦」で十夜法要が終了します。
20~30年前は10人ほどいた鉦講も、今では5人まで減少し、高齢化も課題となっています。そこで、パンフレットを作成して檀家さんや寺にお参りに来られた方に配布したり、県内外のイベントに積極的に出演したりするなど、まずは白石の双盤念仏を知っていただく取り組みを行っています。 今まで何百年も続いていますので、この先100年・200年後と継承していくために、地域内外にかかわらず若い方を中心に鉦講に入っていただき、共に白石の双盤念仏を盛り上げていただきたいと思います。
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