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飛鳥・藤原を世界遺産に
2023年12月号
Vol.10
謎多き石と水からなる祭祀場
酒船石遺跡(中央の丘陵)。飛鳥寺の南東、飛鳥宮跡から北東に少し離れた丘陵であり、その周囲に石垣が設置されました。(北西から撮影)
天皇による国家祭祀
630年に造営された飛鳥宮は、推古天皇の後を継いだ舒明(じょめい)天皇により、飛鳥岡本宮(あすかおかもとのみや)として始まりました。飛鳥宮では、それまで代替わりごとに場所を遷(うつ)していた天皇の宮殿が日本で初めて定着するようになり、飛鳥岡本宮の後の飛鳥板蓋宮(いたぶきのみや)、後(のちの)飛鳥岡本宮、飛鳥浄御原宮(きよみはらのみや)を含む4つの時期にわたり歴代天皇の宮殿がおかれました。
天皇の住まいと政治・儀礼の空間が合体した飛鳥宮の周辺では、7世紀中頃以降、政治・儀礼の空間の拡充に伴い関連する施設が増設されました。時間を管理する水時計台を設置した飛鳥水落(みずおち)遺跡や、祭祀施設の酒船石(さかふねいし)遺跡がその代表例です。
亀形石槽・湧水施設
高度な石工技術が用いられたことがわかります。
酒船石遺跡に関しては、『日本書紀』斉明(さいめい)天皇元年(655年)の後飛鳥岡本宮の時代に、王宮周辺で大規模な土木工事が相次いで行われたという記録が残っています。これは、香具山と石上山(いそのかみやま)(天理市付近)の間に運河を造り、運び込んだ石材によって、酒船石遺跡のある丘全体を石垣で囲んだ「石山丘(いしのやまおか)」の建設を行ったというものでした。そのように整備された丘陵の裾には、中国思想において神聖とされる亀をモチーフとした石槽や湧水施設などを配置した石敷きの祭祀場が見つかっています。これらの遺跡は、「聖なる水」を用いた「マツリゴト(政事・祭事)」、まさに天皇による国家祭祀が行われたことを示しています。
酒船石
後世の石材採取により石造物の一部のみが残っており、全貌は明らかになっていません。
酒船石遺跡
明日香村
酒船石遺跡は、飛鳥宮跡の北東の丘陵に位置します。丘陵の周りを囲んだ石垣、丘陵の上の酒船石、丘陵裾には亀形・小判形をした石槽と地下からの湧き水を地上へ導水する湧水施設があります。
酒船石および亀形石槽にみられる加工・彫刻技術は、朝鮮半島からの最新の知識・技術を導入したもので、遺跡全体を囲う石垣も朝鮮半島の技術が応用されたことがわかっています。
湧水施設の発見以前は、酒船石の使途は謎に包まれ、酒の醸造などの諸説が唱えられましたが、湧水施設の発見により、その構造や立地などから天皇による国家祭祀遺跡と推定されるようになりました。
新たな技術を取り入れた施設でありながらも、古墳時代以来の水の祭祀の性格を引き継いだものと考えられており、我が国の伝統的な文化と外来の技術の融合を示す遺跡といえます。
丘陵の石垣の一部は現在も遺構として保存されています。(写真は崩落した石垣の一部)
酒船石遺跡(明日香村岡)
アクセス
奈良交通明日香周遊バス「万葉文化館西口」下車、南東へ250m
「飛鳥・藤原」を紹介する動画を作成しました。
下記よりご覧ください。
URL
www.youtube.com/watch?v=dEs_fbBoc9U&list=PL2vjyFirKts-NHScwoRMjSCmxHWvb0reX&index=6
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