8月になると、私は祖父のことを思い出す。 幼い頃、私はよく祖父の散髪を頼まれた。祖父は、寝癖がつくかつかないかぐらいの髪を触りながら、「今日もバリカンで刈ってくれるか。」と言っては、いつもの古い風呂敷を広げて手動のバリカンを渡してきた。「ザク、ザク、ザク」と、私は祖父の頭を丸めていく。そのとき祖父は、「わしな、通信兵として戦争に行っててなぁ。そらもうたいへんやったで。敵も味方も住民も、みんな次々死んでいってなぁ。わしも胸撃たれたんや・・・。これだけは言うとくで。命は粗末にしたらあかん。大事にしいや。」と、いつも独り言のようにつぶやいていた。 やがて私は、知らない場所・こと・もの、そして人と出会うのが好きで、よく旅に出かけるようになった。そこには、「平和」について考える場所がたくさんあること、また多くの出会いの中で、自分の身近な生活を改めて振り返り、「命の尊さ」を感じる瞬間が実はたくさんあることに気づいた。 今、バリカンを通して祖父が託した思いが、私の中に息づいていることを感じている。
五條市立五條南小学校6年 北田(きただ) 芙優(ふう)さん
桜井市立大三輪中学校3年 豊村(とよむら) 心音(ここね)さん
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