田楽や翁舞、相撲など、神事芸能が奉納される伝統が多く残っている県北東部の山間地域。神事芸能を伝承する山添村東山地区の4つの地域のうち、山添村北野では豊田楽(ほうでんがく)が天神社で行われています。五穀豊穣や家内安全を祈る宮座神事で、10月の第2月曜日のスポーツの日に開催されます。 10月の秋祭りで豊田楽に携わるのは、世話役の当屋(とうや)1人と渡り衆7人。渡り衆は侍烏帽子(さむらいえぼし)に素襖姿(すおうすがた)で太鼓や笛、ジャラジャラと呼ばれる編木(ささら)を持ち、公民館から天神社の舞床(まいどこ)へ渡ります。最年少の渡り衆3人が、編木を置いたコモの周囲を扇であおぎながら回り、詞章(ししょう)を唱えるのが特徴の神事です。 発祥は定かではありませんが、所作や唱えている言葉から中世の神楽歌や小歌を取り入れて成立した田楽芸だと考えられています。平成10年3月には「東山の神事芸能」として県の無形民俗文化財にも指定されました。
田楽芸を奉納する渡り衆は、山添村北野では正月の総会で決定します。昔は当屋も選出制でしたが、現在は年長者が担当することに。神事の準備は約2週間前より、天神社の周りを掃除してお清めすることからスタート。また、当屋の座敷(現在は北野公民館)も掃除を行い、御弊(ごへい)や笛を氏子で作って新調します。 6年前までは秋祭りで甘酒の振る舞いや福引き、子ども神輿などを行っていましたが、コロナ禍になってイベントを中止。お神酒を神社ではなく当屋でいただくなど接触に配慮し、豊田楽の奉納のみを4年間行ってきました。コロナ禍が明けて神事の姿はほぼ元通りになりましたが、少子化の影響や人手不足が深刻化し、神輿は神社内で展示されるようになっています。
豊田楽が行われる日には、村外に出た若手の氏子が帰ってきて参加していますが、年々参加者は減少傾向にあり危機感を抱いています。担い手の負担を減らすために、以前は9月28日に行っていた宮ごもりを取りやめるなど、準備の簡略化を進めているところです。もともと豊かな実りへの感謝や安全を願う地域に根差した祭りであるため、大切に継承していきたいと考えています。先人たちがさまざまな工夫を凝らして守ってきた豊田楽。この伝統を後世に伝えるべく取り組んでいきます。
左から福谷さん、色雲さん、田中さん、奥谷さん
0742-27-8124
0742-27-5386
0742-85-0049
0742-85-0219
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