穀物栽培ユニット


加工科

  穀物栽培ユニット


試験研究の背景

 
 水稲では水稲作を主とする農家のみならず、兼業などの小規模農家にも対応し、収量・品質の向上と安定化を目指し、環境にも配慮しながら、消費者・実需者のニーズに沿った優良品種の選定や「良食味・省力・低コスト栽培技術」の開発が求められています。
 小麦・大豆では、自給率向上と、水稲とともに土地利用型作物として、水田の有効活用と保全を図りつつ、実需者等のニーズに応えた高品質生産が期待されています。
 さらに、農商工連携を目指す県内民間企業等のアグリビジネスを支援するため、共同研究への参画が求められています。

試験研究の方向
 
1.奨励品種決定調査

・本県に適した水稲良食味品種、小麦・大豆では加工適性の高い品種の選定を行っています。

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                                                                   品種系統の比較試験


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                  小麦新品種のそうめん加工適性試験



2.水稲・小麦・大豆の消費者ニーズに沿った高品質・省力・低コスト栽培技術の確立
 
【水稲の疎植による省力・低コスト栽培技術の確立】
・慣行の栽培基準(株間18cm) より株間を広げて植え付けることで植え付けに必要となる苗の数を削減でき、低コスト・省力化につながります。
                               
           水稲疎植栽培マニュアル(平坦ヒノヒカリ)はこちら

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                                                     植栽培試験


 

【平坦部「ヒノヒカリ」のべたがけ被覆による省力的な中苗育苗】
・出芽揃いから不織布を用いて15日間被覆することで、播種から1ヶ月後には田植えに適した草丈20cm程度のガッチリした良質苗が生産できます。

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                  べたがけ育苗


3.水稲・小麦・大豆奨励品種の種子の安定供給のための原種生産
 
【品種特性維持のための原原種生産と採種圃への安定供給のための原種生産】
・県内で栽培される水稲のうち6品種(「ヒノヒカリ」、「ひとめぼれ」、「キヌヒカリ」、「あきたこまち」、「露葉風」、 「旭糯」)および大豆(「サチユタカ」、「あやみどり」)、小麦(「きぬいろは」)の品種特性(熟期、食味など)を維持するため、原原種生産を行っています。 また、採種圃へ安定して種子を供給するための原種生産を行っています。
 
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                網室を用いた大豆の原種生産
      (ウイルスを媒介するアブラムシを防除するため 網室内で栽培しています)
 


4.県内民間企業等との共同研究による技術開発

【水稲に光害を与えない照明の開発】 
・短日植物であるイネは夜間に光を浴びることで、本来、穂を出すべき時期より穂の出る時期が遅れてしまう「出穂遅延」を起こすことが知られています。
・「出穂遅延」が発生するとイネの成熟期が遅れ、収量が低下したり、収穫時に未熟粒が混入し品質が低下する原因のひとつとなります。

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             水稲出穂遅延の様子 (□枠内が光の影響により出穂遅延)

 
・「出穂遅延」による収量・品質への悪影響を回避するため、三晃精機(株)との共同研究で様々な種類の光源を比較し、水稲に出穂遅延を生じさせない照明として「KR-TF2」を開発し、現在同社より販売されています。 
              

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                         光源の比較


【黒大豆の安定多収栽培を目指した要灌水点把握技術の確立と実証】
・平成19~21年度にかけて黒大豆産地を持つ近畿地域の各府県の研究機関など(兵庫農技、近中四農研、滋賀農技、京都農技、奈良農総、京都大学、パスコ)が共同して簡易土壌水分計を利用した要灌水点把握技術の確立と実証を行いました。
・簡易土壌水分計により、適切な灌水時期を簡単に把握できます。

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                    圃場に設置された簡易土壌水分計