児童虐待の基本的理解

1.児童虐待とは

 児童虐待は家庭内におけるしつけとは明らかに異なり、懲戒権などの親権によって正当化されるものではありません。児童虐待の防止等に関する法律(平成12年法律第82号、平成19年改正 以下、児童虐待防止法)第1条では、
 児童虐待が、
・児童の人権を著しく侵害し、その心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与える
・我が国の将来の世代の育成にも懸念を及ぼす
と記されています。そして児童虐待の防止に関しては国及び地方公共団体の責務であり、児童の権利擁護に資するために、児童虐待を受けた児童の保護及び自立支援のための措置を定めることが明確にされています。

2.児童虐待の定義

  児童虐待防止法第2条において「児童虐待」は次のように定義されています。
 この法律において、「児童虐待」とは、保護者がその監護する児童について行う次に揚げる行為をいう。

ア.身体的虐待(第1号)

 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
  • 外傷とは打撲傷、あざ(内出血)、骨折、頭蓋内出血などの頭部外傷、内臓破裂、刺傷、たばこなどによる火傷など。
  • 生命に危険のある暴行とは首を絞める、殴る、蹴る、投げ落とす、激しく揺さぶる、熱湯をかける、布団蒸しにする、溺れさせる、逆さ吊りにする、異物をのませる、食事を与えない、冬戸外に閉め出す、縄などにより一室に拘束するなど。
  • 意図的に子どもを病気にさせる。など


イ.性的虐待(第2号)

 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
  • 子どもへの性交、性的暴行、性的行為の強要・教唆など。
  • 性器を触る又は触らせるなどの性的暴力、性的行為の強要・教唆など
  • 性器や性交を見せる。
  • ポルノグラフィーの被写体などに子どもを強要する。など


ウ.ネグレクト(第3号)

 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前2号又は次号に揚げる行為と同様な行為の放置その他の保護者として監護を著しく怠ること。
  • 子どもの健康・安全への配慮を怠っているなど。例えば、(1)家に閉じこめる(子どもの意に反して学校等に登校させない)、(2)重大な病気になっても病院に連れて行かない、(3)乳幼児を家に残したまま度々外出する、(4)乳幼児を車の中に放置するなど。
  • 子どもにとって必要な情緒的欲求に応えていない(愛情遮断など)。
  • 食事、衣服、住居などが極端に不適切で、健康状態を損なうほどの無関心・怠慢など。例えば、(1)適切な食事を与えない、(2)下着など長期間ひどく不潔なままにする、(3)極端に不潔な環境の中で生活をさせるなど。
  • 親がパチンコに熱中している間、乳幼児を自動車の中に放置し、熱中症で子どもが死亡したり、誘拐されたり、乳幼児だけを家に残して火災で子どもが焼死したりする事件も、ネグレクトという虐待の結果であることに留意すべきである。
  • 子どもを遺棄する。
  • 祖父母、きょうだい、保護者の恋人などの同居人がア.イ又はエに掲げる行為と同様な行為を行っているにもかかわらず、それを放置する。など


エ.心理的虐待(第4号)

 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。
  • ことばによる脅かし、脅迫など。
  • 子どもを無視したり、拒否的な態度を示すことなど。
  • 子どもの心を傷つけることを繰り返し言う。
  • 子どもの自尊心を傷つけるような言動など。
  • 他のきょうだいとは著しく差別的な扱いをする。
  • 子どもの面前で配偶者やその他の家族などに対し暴力をふるう。など


3.虐待の判断にあたって

 虐待か、それとも虐待ではないのかという問題は尽きることのないものです。虐待を判断するには様々な状況、要因を考えなければなりません。しかし、最も大切なことは、子どもの視点で考え、判断することです。虐待から子どもを守る援助者として、また大人として常に心に留めておかなければならない言葉があります。
 虐待の定義はあくまで子ども側の定義であり、親の意図とは無関係です。その子が嫌いだから、憎いから、意図的にするから、虐待と言うのではありません。親はいくら一生懸命であっても、その子をかわいいと思っていても、子どもの側にとって有害な行為であれば虐待なのです。我々がその行為を親の意図で判断するのではなく、子どもにとって有害かどうかで判断するように視点を変えなければなりません。(小林美智子、1994)

4.虐待が子どもの心身、将来に及ぼす影響

 安全、安心できるはずの家庭において、虐待を受けたという体験は子どもの心身に、また将来にわたってはかり知れない影響を与えます。

(1)身体へのの影響
  • 発育不全:乳幼児期の虐待は、発育や発達の遅れや、低身長・低体重を引き起こす。
(2)精神への影響
  • 発達阻害:頭部への身体的虐待は、運動や言語、知的発達などの脳機能に重篤な障害を与える。
  • 心的外傷後ストレス障害や愛着障害:虐待のすさまじさにより、基本的な人間関係である愛着に問題を生じさせ、「人は信頼できない」などの信念をもってしまい他者との親密な人間関係が形成できなかったり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と呼ばれる精神症状を引き起こす。
  • 自尊感情の低下:「お前が悪いんだ。何度言ったらわかるんだ」と繰り返し言われ続けることによって、子どもは「自分は悪い子」と捉え、自尊感情を低下させてしまう。また「自分なんか生まれてこなければ良かった」などと自分自身の存在を否定する。
(3)行動への影響
  • 解離や非行:家庭内という密室性と守ってくれるべき保護者からなされる虐待は、「どうしようもないことだ」という無力感を生じさせ、現実の世界からの逃避である解離症状を起こす。時には家出やシンナーや薬物に依存したり、不純異性交遊に走るなどの非行を発現させたりする。
  • 激しい感情表出:ほんの些細な出来事やきっかけで、強い怒りや親からの見捨てられ不安などの激しい感情表出が見られ、暴言やパニック、自傷行動などが常習化してしまう。

以上のように虐待は、子どものあらゆる側面に重大な悪影響をもたらします。虐待を発見して安全を確保するだけではなく、虐待を受けた子どもたちへの適切なケアが必要なことは言うまでもありません。

    5.虐待の発生要因

     虐待に至るリスク要因は、主に保護者、子ども、養育環境の3つの側面から考える必要があります。虐待はある一つの要因から発生する場合もありますが、様々な要因が絡み合って虐待に至ると言われています。しかし、多くの要因を有するからといって必ずしもすべてが虐待に結びつくものではありません。また、ある家族にとっては、これらのリスクがかえって健康な家庭に向けての原動力になっている場合もあります。大切なことはこれらのリスクを支援すべき要因と捉えることによって、実際の援助につなげることです。

     養育環境の要因
    • 経済的な不安定さや経済的困窮
    • 新たなパートナーの出現などの家族の変化
    • 親族や地域から孤立した家庭
    • 夫婦不和や配偶者からの暴力があるなどの不安定な状況にある家族
          
     子ども側の要因
    • 何らかの育てにくさをもった子ども
    • 望まない出産による子ども
    • 育児に手がかかる子ども
          
     保護者側の要因
    • 妊娠や出産そのものを受け入れることの困難さ
    • マタニティーブルーズや産後うつ病等の精神的な不安定さ
    • 保護者が虐待を受けた経験
    • 過度な攻撃性をもつなどの社会的な未成熟さ
    • 誤った、偏った育児信念
    • 育児に対する負担感や不安、ストレス
    • 医療につながっていなかったり、適切なサポートを受けていないアルコールや薬物依存、精神等の障害、慢性疾患など
          

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