結核について

結核について

 戦後、生活の向上や結核対策の徹底などにより、世界に類をみないほど急速に患者を減らすことができた結核ですが、1997年(平成9年)結核患者は38年ぶりに増加に転じ、事態を重く見た元厚生省は「結核緊急事態宣言」を出しました。
 保健所では、発見された患者さんを完治にみちびくための保健指導、再発防止のための管理検診、感染者の早期発見・発病予防のための患者家族や接触者の検診を行っています。
 また、結核に関する知識の普及・啓発運動も行っており、住民の方々の結核に関するご相談の窓口にもなっています。 
 

結核ってどんな病気?

 
  結核は結核菌によって起きます。 結核菌は結核患者のせきやくしゃみで空気中に飛び、人の肺に吸いこまれることによって感染します。結核菌が肺の中に入って増殖しだすと体の免疫機能が活動を始め、多くの場合は結核菌をとじこめてしまいますが、何らかの事情で免疫機能が弱まっていると、発病してしまいます。
 発病すると、せきやたん、微熱が続き、さらにだるさ、寝汗、胸の痛みが出てきて、ひどくなると喀血したりもします。

 

治りますか?

 
  初めて治療を受ける方なら、複数の薬を6~9ヶ月間のみ続ければ、ほとんど再発することのないほど完全に治せます。症状が改善したからといって「治った」と早合点し、勝手に薬をやめたり減らしたりすると、症状がぶりかえしたり、耐性菌(薬の効かない菌)を作ったりします。一度耐性菌を作ると、もう二度とその薬は使えません。症状もないのに毎日薬をのむ・・・これは大変なことですが、医師から「治りましたよ。薬をやめましょう」と言われるまではのみ続けてください。

 

必ず入院するのですか? 

  たんを染めて結核菌が見つかるような方は、周囲の人へうつす恐れが強いので、入院して治療するのが原則です。しかし主治医に出された複数の薬をきちんと飲むと、たんの中の菌は急速に少なくなり、せきも減ってうつす恐れはなくなるので、後は外来で治療を続けることができます。
 発見が早く軽い症状の方は、初めから外来で治療することもできます

 

結核事情、ここが困った

  1. 重症になってから見つかる患者が多いこと
    せきやたんが続いてもかぜだと思って放っておき、症状が進んでから見つかる患者が増えています。
  2. 20~30歳代の患者が増えたこと
    活動的な世代なので、ひとりの患者が出るとあちこちで感染者がでます。若さにまかせて無理をすると、感染者は発病しやすく大変危険です。
  3. お年寄の患者がますます増えていること
    60歳以上の患者が過半数をしめています。結核が流行っていた頃に感染しながら、発病しないで免疫ができていた人たちの中に、年をとって免疫力が衰え、発病するケースが増えているからです。
  4. 集団感染が多発していること
    結核と気づかずに重症化すると、周囲にうつしてしまう危険が高くなります。
  5. 大都会の片隅で患者が増えていること
    大阪などの大都市で、ホームレスや不法滞在者の間で結核が高率に発見されています。治療が遅れたり、途中で挫折したりで、治療成功率が低いのが問題です。
     

結核を早期に発見するには?

  1. 年に一回は健康診断を受ける
    学校、施設、事業所等で行われる定期健康診断は、毎年必ず受けましょう。家庭にいる人も、市町村の行う結核住民検診が受けられます。住民検診の実施日については、お住まいの市町村にお尋ねください。広報等にも載せられています。
  2. せき・たん・微熱が長引くときは、胸部レントゲン検査を受ける
    せき・たん・微熱が2週間以上続くときは、かぜだと思って放置せずに、病院を受診しましょう。風邪薬で治らない場合も、医師によく相談し、胸部レントゲン検査を受けましょう。
     

発病を予防するには?

  1. 免疫力を弱らせない
    不摂生な生活や糖尿病を始めとする合併症は、免疫力を弱らせます。良い生活習慣をつけて生活習慣病にならないようにするとともに、基礎疾患のある人はその治療もしっかり受けましょう。
  2. BCGは生後できるだけ早い時期に受ける
    乳児は結核菌に感染すると一気に重症化して、結核性髄膜炎や粟粒結核といった命にかかわるほどの状態になることもあります。BCGを接種していれば、感染しても重症化は防げるので、生後できるだけ早い時期に接種しましょう。
  3. 予防内服をすることになったら、きちんと服薬する
    結核菌の感染をうけて発病の危険性が高いと考えられる場合に、抗結核薬をのんで発病を防ぐことを、予防内服といいます。予防内服は中途半端にやめると、耐性菌(薬の効かない菌)を作るもとになるので、6ヶ月間きちんとのみましょう。副作用の少ない薬ですが、気になる症状が出た時は、主治医の先生によく相談し、勝手にやめないようにしましょう 。