はじめての万葉集

 



 恋に年齢は関係ない、といいますが、皆さんはどう思いますか。幼ければ幼いなりに、年齢を重ねた人にはそれなりに、人を恋しく思う気持ちは生まれるように思います。しかもそれは、あるとき突然やってくるもののようです。
 この歌では、「恋に逢ひにける」と、思いがけず恋というものに出会ってしまったとあります。しかも「神びにし」とは神々しく人間離れした、恋とは真逆の状態をいいます。つまり、久しく恋とは無縁の生活を送っていた年を取った自分が、また恋に出会ってしまった、というのです。若い頃は多くの恋もしたけれど、今になってまたこんな恋をするなんて、ととまどいつつも新鮮な感動を味わったのかもしれません。
 そうした、みずみずしい恋の驚きを導く表現として「石上布留の神杉」が詠まれています。「神杉」と「神びにし」と同じ音を重ねることで、つながりが生まれます。
 「石上」といえば、石上神宮が有名です。周辺には現在も「石上町」や「布留町」という地名が残っています。石上神宮は『日本書紀』にも登場する最古の神社の一つで、この歌でも、石上神宮の境内にあった神聖な「神杉」だからこそ「神び」にかかる象徴的な表現として相応(ふさわ)しかったようです。よく似た歌に「石上布留の神杉神さびて恋をもわれは更(さら)にするかも」(巻11二四一七番歌)があります。ほぼ同じ意味ですから、よくうたわれていたのかもしれません。
 今もご神木の杉が神々しく境内にそびえています。
(本文 万葉文化館 井上 さやか)



石上(いそのかみ)神宮の神杉(かむすぎ)
 昔々、一人の娘が川で布を洗っていると、流れてきた光輝く鉾(ほこ)が、布に絡まりました。驚いた娘は、川のほとりにその鉾を立て、お祭りを欠かさずに行いました。そのおかげで、人々は平和な生活ができたといいます。その後、鉾も朽ち果てたので、その地に鉾先を埋めて祀(まつ)りました。すると、間もなくその地に杉が芽生え、天をもさすほどに成長しました。今も、石上神宮に伝わる神杉の伝説ですが、この下に鉾先が埋まっているのかもしれません。

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