はじめての万葉集

 

吉野のアユ
隼人(はやひと)の 湍門(せと)の磐(いはほ)も 年魚(あゆ)走(はし)る
吉野の滝に なほ及(し)かずけり
大伴旅人(おおとものたびと)
巻六 九六〇番歌
隼人の瀬戸の岩石のすばらしさも、鮎の走りおよぐ吉野の急流にはやはり及ばないことだなあ。
 古代から賞味されていた魚にアユがあります。アユは記紀万葉にもみられ「年魚」「鮎」「安由」「細鱗魚」などと表記されます。平安時代の辞書には、春に生まれ夏に大きくなり、秋に衰えて冬に死ぬために「年魚」と名付けられたと解説されています。
 日本各地の河川に生息しているアユですが、県内では吉野川がとくに有名で『万葉集』にもみられます。右の歌は大宰府赴任中の大伴旅人が吉野離宮を偲んで詠んだもので、懐古する吉野の景に「年魚走る」という表現が使われています。
 『日本書紀』(応神天皇十九年十月朔条)には、吉野川近くに住む国樔(くずひと)が「栗・菌(たけ)および年魚の類(たぐい)」といった品々を献上したことが記されています。
 古代の漁法は、梁(やな)(巻十一の二六九九番歌など)や網代(あじろ)(巻七の一一三五番歌など)を使っていたことがうかがえますが、「隠口(こもりく)の 泊瀬(はつせ)の川の 上(かみ)つ瀬に 鵜(う)を八頭潜(やつかづ)け 下(しも)つ瀬に 鵜を八頭潜け 上つ瀬の 年魚(あゆ)を食(く)はしめ 下つ瀬の 鮎(あゆ)を食はしめ……」
(巻十三の三三三〇番歌)とあることから、鵜飼(うかい)によってアユを得ていたことがわかります。
 また記紀や『肥前国風土記』には、神功皇后が肥前国(現在の佐賀県)松浦(まつら)の玉島(たましま)の川にて、裳(も)(スカート)の糸を抜いて釣り糸とし、飯粒を餌としてアユを釣ったという話がのっています。ちなみに友釣りは江戸時代中期から始まったそうです。
 今年のアユ釣りは、記紀万葉に思いをはせながら釣り糸を垂れてみてはいかがでしょうか。
(本文 万葉文化館 小倉 久美子)
万葉ちゃんのつぶやき
鮎供養
 吉野川近くにある大淀町下渕の鈴ケ森行者堂で「鮎供養」が毎年6月1日に行われます。行者が鮎の供養と川の安全を祈願し、水槽に入った生きた鮎を前に般若心経などを唱え法要。その後、近くの吉野川で川岸から花を添えて、鮎が1匹ずつ放流されます。
 
鮎の放流(写真提供:大淀町)
   
 
     
アクセス  
近鉄吉野線下市口駅
大淀町コミュニティバス旧大淀病院前下車 南へ約80m
   
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