優良賞

 勇気を出して一声を

                    奈良市立興東館柳生中学校 1年 大西 悠生

 みなさんは、近所や町などで車いすに乗っている人、目が見えないため白杖を使って歩いている人、困っているお年寄りを見かけたことはないだろうか。
 ぼくたちは、七月の初旬、車いす体験、白杖を使う体験、お年寄りになって動く体験に全校で取り組んだ。それらの体験を通し、ぼくは、その人たちの気持ちを考えてみようと思った。
 まずは、一番気持ちがよく分かった老人体験について説明する。老人体験では、首を固定する器具、足の裏を平らにして足を自由に動かすことができないようにする器具、また、目が見えにくくなるように視野をせまくし、見える部分を黄色くした器具を、体に取りつけ杖を使った。これらの器具を装着して、実際に歩いてみた。すると、いつも歩いている下り坂を歩くのがとても怖かった。なぜなら首が固定されてあるので、下を向くことができないからだ。下を向くことができないということはすなわち坂になっている道を自分では見ることができない、ということだ。一人では歩くことができないので、助けてもらい、声をかけてもらいながら坂を下った。サポートしてくれた人は、実際のお年寄りに声をかけるように、
「大丈夫ですか。」
「下れますか。」
などと言ってくれた。もし自分がお年寄りだったらその一声はとても嬉しく感じる。声をかけた後に、軽く手や背中を持って支えたりしてもらうと、とても坂をスムーズに、そして安心して下ることができた。
 次は、お年寄りをサポートする立場になった。今は友達だから軽く声をかけてサポートするまでは簡単にいくけれど、もしお年寄りが知らない人だと考えると、これは勇気を出さないとできないことだと思った。
 サポートしていて気づいたことは、声をかけながら手や背中を持ったりすると良いということだ。なぜかというと、急にさわられたり持たれたりするとお年寄りはびっくりするからだ。声をかけるということは、サポートすることにつながる第一歩だと思った。困っているお年寄りを助けるということは、自分にとっても良い経験になる。また、お年寄りも喜ぶことだと思った。
 次に、車いす体験、目が見えない人の体験をした。車いす体験では、最初に押すがわを体験した。車いすのときもやはり声をかけることが大切だ。声をかけることによって、車いすに乗っている人が、周りの状況を知ることができ、安心して乗れるからだ。
 車いすを押して一番苦労したことは、車いすを段差の上にあげることだ。最初に段差の前ぎりぎりまで車いすを近づける。そして、足もとにあるペダルを踏み、車いすの前のタイヤを上げて段の上にのせる。最後に、後ろのタイヤをのせるために握っている部分を上にあげる。この時、車いすが下がってくるので前に進みながら後ろのタイヤをのせるのがポイントだ。さらにもう少し楽に段差をこえるには、車いすに乗っている人にも手伝ってもらい乗っている人が後ろに倒れている姿勢から勢いよく前にいくと同時に車いすを段の上にのせるという方法もある。車いすを押すときは、できるだけ車いすに乗っている人の負担を少なくする工夫が必要だ。
 最後に目が見えない人の体験をした。ぼくたちは体験のときだけ、目が見えないようにしているけど、目が見えない人は、どこにいても目が見えない。ということは、目が見えるぼくたちが、目に弱点をもつ人たちの「目」になるのは、ごくごくあたり前だということだ。目が見えない人はほとんどの人が白杖をついて歩いている。白杖を使うより人の声を聞いて声を頼りに歩いた方が、安心して歩ける。だから、白杖を使った人を見かけたら、ぶつかったりしないように気をつけるだけでなく、一声かけて案内ができるようになりたい。
 お年寄りや車いすに乗っている人、目が見えなくて白杖をついている人等、何か困っている人を見かけたら、勇気を出して、声をかける、という事を常に心のどこかにおいておき積極的に人を助け、少しでも人の役にたてるようにしていきたいと思った。