優良賞

 食料問題と父と米

                     天理市立福住中学校 3年 岡本 岳人

 食べたい物がいつでもどこでも手に入る今の日本。その日本で深刻な食料問題が起きていることを、皆さんは知っていますか?私の家は農家です。生産者と消費者の立場から、気になる三つのことをお話ししたいと思います。
 一つ目。「食品ロス」という言葉を聞いたことはありませんか。これは、売れ残りや期限切れ、食べ残しなど、まだ食べられるのに、捨てられてしまう食品のことです。農林水産省によれば、日本の食品ロスは年間六百万トンを超えているそうです。なんとその量は、昨年国連が飢えに苦しむ人々に送った食料、三百二十万トンの二倍にあたり、その多くは野菜だというのです。ニュースでそれを知って、私は胸を痛めています。消費者の私たちは、食べ残しを減らし、食品を使いきるよう努力しなければなりません。私の学校では最近、一年生が食べきれなかった給食のご飯を、私たち三年生に回してくれるようになりました。初めはご飯がたくさん食べられてラッキーとしか思っていませんでしたが、「食品ロス」という言葉を知ってから、「食品ロス削減に貢献している」と有意義に思うようになりました。六百万トンに比べればちっぽけな量かもしれませんが、1人1人が小さな努力を積み重ねれば、大きな成果につながるはずです。食品ロスを減らすことは、ゴミ処理の経費削減にもなります。
 二つ目。大変気になるのが、米の消費が少なく、米価が下がっていることです。私の家は米農家です。世界では野菜たっぷりでヘルシーは和食が注目されています。日本人である私たちこそ、もう一度和食の良さを見直してはどうでしょうか。これも「食品ロス」に関係があります。農家が米を作っても消費されず、廃棄しなければならないことが起きています。これは農家にとって死活問題です。米農家は全国に百数十万人いて、そのうち二割の人が米作りを主な収入源としています。私の家も広い農地で毎年大量の米を作っていますが、収入が減って困っています。そんな我が家ですが、最近、画期的な出来事がありました。私の父が町おこしのために試験的に作った酒米でお酒を作ったことです。三十五年間、お米を作り続けてきた父にとって初めての挑戦でしたが、自分の力量を試せることにワクワクしていました。酒米は成育期間が長いため、気温や台風、鳥獣等の被害に気を使い、肥料や水の管理にも力を入れたそうです。父が新聞やテレビに取り上げられたことでどんなにすごいことか分かりました。私は成人して父と一緒にそのお酒を飲める日を楽しみにしています。
 三つ目。日本は多くの食品を海外から輸入していて、食料自給率が四十パーセントにも満たない深刻な状況です。きつい労働のわりに収入が少ない、天候に左右されるといった理由で、農業者は減る一方です。もっと国産の食品を食べるようにしないと食料自給率は下がり続けるでしょう。
 以上、三つの問題に私たちはどう向き合えばよいのでしょうか。二千二十年に東京でオリンピックが開催され、たくさんの外国人が日本を訪れます。彼らは、和食も楽しみにしていると聞きました。彼らは日本の食料問題を知ったら悲しむでしょう。(自分に関係がない)と思っている限り、問題は解決しません。大切なのは、自ら気づき、考え、行動することだと思います。「食べ残しをしない」「和食を見直す」「国産の食品を食べる」等できる事を今すぐ実行しましょう。それに加え、日本で余っている米を世界の飢えに苦しむ人々に届ける。その為の米を作ることを地球規模で進めていけば、多くの人が救われると思います。みんなが幸せに暮らせる様に今こそ食料問題に向き合う時ではないでしょうか?