優良賞

 マナーバランス

                       香芝市立香芝西中学校 3年 藤田 和佳

 今年の四月、大きな地震が起きました。熊本地震です。何日も続く余震の様子や、避難した人の様子をテレビで見て心が痛みました。
そんななか、多数の災害報道を上回るほど注目されたことがありました。
 それは「マスコミのマナーの悪さ」についてです。町内放送が聞こえなくなるほどのテレビ局のヘリコプターの音。避難所で邪魔になるほど群がるマスコミの車や人。そしてひどいものは、何台もの被災者の車が並んで待っているなか、マスコミの車が割りこんでガソリンを入れるということも問題になりました。また、わざわざ倒壊しそうな家の前で待機して、崩れた瞬間を報道するということもあったそうです。私はこの話を聞いて悲しくなると共にやりきれない怒りを覚えました。
 災害時のマスコミの役目は、一つでも多くの情報を集め、被災者に役立つ情報や被害の拡大を防ぐ情報を提供することだと私は思います。確かに、地震の悲惨な現場やエピソードを報道することも大切です。ですが、当の被災者に嫌われ、迷わくをかけては元も子もないのではないでしょうか。視聴率をとることしか頭になく、人間としての道徳心やモラルなどどこかに飛んでいってしまっているのではないでしょうか。今の日本のマスコミの姿は、中学生の私から見ても恥ずかしいです。せっかく熊本まで来たのだから、もっと被災者の立場に立った報道をするべきです。
 今の世の中はメディアに頼りきっています。テレビや新聞、SNSなど目にしない日はないという人がほとんどのはずです。メディアが一番、私たちへの影響力が大きいと言っても過言ではありません。だからこそ、人一倍マスコミには道徳心を大切にしてもらいたいのです。メディアに頼りきっている私たちは、報道されている情報を信じています。毎日見ているうちに、うそかもしれないと疑うことを忘れています。だからこそ、人一倍マスコミには責任をもってもらいたいのです。情報を伝える側としてプライドを持ち、世界に恥ずかしくない存在でいてほしいです。
 一方、情報を受けとる側の私たちにも問題が起きています。熊本地震で注目された「不謹慎狩り」についてです。この言葉は「不謹慎な言動をした人だけでなく、していない人にまで執拗に非難する」という意味です。発信された情報を神経質に揚げ足をとって攻撃する姿は、極端な正義感を振りかざしているようにしか見えません。でも、彼らにとっての正義はそれであり、決して自分達の考え方が極端にかたよっているとは思っていないのでしょう。不謹慎狩りが悪かと問われれば、はいとは答えられません。正義の基準は人それぞれ違うものだからです。けれども、誰が見てもいきすぎた不謹慎狩りは、やはり減らすべきだと思います。
 情報を伝える側も受けとる側も、それぞれの立場やマナーを守れる存在になってほしいです。そして、今の世の中では、自分がどちらともの立場になりえるということを理解しないといけません。私もそのうちの一人です。今はまだスマートフォンを持っていませんが、それを手にしたとき、今の気持ちを忘れずにいようと思います。マスコミのマナーの悪さと不謹慎狩りは対極していると感じますが、実は同じです。マナーバランスが大切なのです。改めて情報のことや道徳心の大切さについて考える良い機会になりました。オリンピックを数年後に控えた今、世界に誇れる日本人というプライドを持って、気を引き締めていくべきだと思います。