農作物等の災害に対する技術対策


農作物等の災害に対する技術対策(災害別作物別対策)


1 水害   (1) 水稲
事前対策
(ア)水害常習地帯では、水害発生の時期を考慮し、品種及び栽培時期を選定する。
(イ)良い苗は抵抗性も優れるので健苗育成に努める。
(ウ)予備苗又は予備の種子を確保しておく。
(エ)排水路の整備に努める。
事後対策
育苗期
(ア)一刻も早く排水するように努めるとともに、葉の泥土は洗い流す。
(イ)排水後晴天高温の場合は新しい水を潅水する。
(ウ)冠水苗は生育回復後、または、植付前、薬剤散布を励行する。
(エ)冠水後、生育の弱っている苗は植付けないようにする。
本田期
 ・改植を必要としない場合
(ア)葉先が少しでも水面上に出ていれば被害が軽減されるので、一刻も早く葉が出るように排水し、新しい水の入れ換えに努める。
(イ)退水後、生育回復のため窒素肥料を施す場合は少量〈10a当たり1~2kg)にする。
(ウ)除草剤を使用する場合、生育が回復してから処理する。除草剤処理後間もなく冠水した場合は、除草剤の効果が不充分な場合があるので中期剤等を適切に処理する。
(エ)水害後は紋枯病、白葉枯病、アワヨトウ等が異常発生しやすいので充分注意し、時期を失しないよう防除する。
 ・改植を必要とする場合
(ア)改植を行う場合は特に晩植限界時期(平担部7月下旬頃、山間部では標高300m前後で6月中旬頃、400~500mで6月下旬頃と考えられている。)以内でなるべく早く改植する。
(イ)改植のための適当な苗がない場合は既植無被害田から間引きまたは株分け等による。
(ウ)改植した場合の施肥は追肥を基本とし、生育状況を見ながら適宜施用する。
(エ)追播を必要とする場合は晩植限界時期以内に改植できるようになるべく早く追播する。

1 水害   (2) 大豆
事前対策
(ア)ほ場内及びほ場周囲の排水溝の整備、点検に努める。また、作付けの集団化や排水不良ほ場における高畦栽培に努める。
(イ)予備種子を確保しておく。
事後対策
(ア)冠水、浸水したほ場では、速やかに排水に努める。
(イ)発芽期は特に湿害に弱いので、排水に努めるとともに、発芽不良の場合はまきなおしを行う。
(ウ)播種晩限は山間部で7月中旬、平坦部で7月下旬なので、それ以前に播種する。なお、播種期が遅くなるほど播種量を増やし密植にする。
(エ)水害後は紫斑病の発生が予想されるので防除に努める。

1 水害   (3) 野菜
事前対策
(ア)排水路の整備、通路末端の溝きりによる排水促進などを行い、排水不良ほ場では高畦とする。
(イ)収穫期を迎えている葉菜類は、予報内容に応じて早めの収穫を行う。
事後対策
(ア)茎葉に付着した泥の洗浄、腐敗果、葉、株の除去等を行う。肥料の流亡を補うため、窒素やカリなど速効性肥料の追肥を行う。また、根傷みした株の草勢回復を図るため、液肥の葉面散布も効果的である。
(イ)イチゴ苗床においては、炭疽病、疫病予防のための薬剤散布を行う。冠水した育苗ほは早急に排水し、萎黄病予防のための薬剤散布を行う。炭疽病等の被害株の発生が見られた場合は、早急に抜き取り処分する。
(ウ)ナスにおいては、浸水、冠水したほ場では褐色腐敗病の菌密度が高くなるので、激発をさけるため被害果実、茎葉はほ場外に持ち出し処分するとともに、薬剤による防除を行う。青枯病の発生が認められた場合は早急に発病株を抜き取り処分する。
(エ)トマトにおいては、疫病、輪紋病予防のため薬剤散布する。
(オ)ホウレンソウにおいては、排水を徹底し立枯病や株腐病を防ぐとともに、べと病に対する薬剤の予防散布を行う。

1 水害   (4) 花き
事前対策
(ア)排水路の整備、暗きょ排水施設の設置、作付けの集団化による機械排水、排水不良ほ場では高畦とする。
(イ)多湿、降雨により発生しやすい病気(灰色かび病や褐斑病)の予防散布を行う。
事後対策
(ア)ほ場が冠水した場合は速やかに排水対策を行い、茎葉に付着した泥の洗浄、腐敗葉、株の除去等を行う。
(イ)降雨による肥料成分の流出を補うために追肥を行う。
(ウ)多湿や泥はねにより発生しやすい病害(灰色かび病やキクの黒斑病等)の薬剤防除を行う。

1 水害   (5) 果樹
事前対策
(ア)敷わら、雑草、または草生による土壌流亡防止、排水路の整備を行う。
事後対策
(ア)ほ場が冠水した場合は速やかに排水対策を行い、下枝の葉、果実に付着した泥を洗浄する。
(イ)各作物とも、その後多発が予想される病害虫防除に努める。
(ウ)イチジクは疫病が発生しやすくなるので、殺菌剤の散布を行う。
(エ)ブドウはべと病が発生しやすくなるので、殺菌剤の散布を行う。

1 水害   (6) 茶
事前対策
(ア)排水路の整備、暗きょ配水施設の設置、ほ場傾斜の軽減等を行う。
(イ)敷きわら、敷草の施用により、降水・雨滴の衝撃を緩和する。
事後対策
(ア)事後の病害虫防除に努める。

2 干ばつ被害   (1) 水稲
事前対策
(ア)水不足になりやすい地域では品種選択に留意し、できるだけ早生種を作付けするようにする。
(イ)干ばつの影響を受けやすい水田ではなるべく深耕し、有機物を増施するとともに、代かきをていねいに行い、水持ちをよくしておく。
(ウ)ため池、井戸の設置及び修理に努め、あらかじめ用水路等を整備しておく。
事後対策
○育苗期
(ア)本田の水不足で田植えが予定より遅れて苗が老化した場合は、葉先を切除して苗の徒長を防ぐ。また、適宣追肥を行う。
(イ)著しく田植えが遅れることが予想される場合は、晩植限界時期までに移植できる範囲内で早目に追播する。
○本田期
(ア)畦畔からの漏水箇所がないか確認し、漏水防止に努める。
(イ)用水の計画的な配水を行い、間断潅水など節水管理に努める。穂ばらみ期から穂揃期が最も水が必要な時期なので、湛水または少なくとも湿潤状態を保ち、他の時期は必ずしも湛水する必要はない。
(ウ)窒素過多は抵抗性が弱くなるので、用水不足が予想される場合は、元肥を控えて生育を見ながら追肥を行う。
(エ)田植えが遅れるほど太植え密植を心掛け、苗不足の場合は多少細植えにしても密植に重点をおく。
(オ)遅植えになるほど、窒素の施用量を減らすように心掛け、元肥に重点をおいて追肥を減らすよう努める。

2 干ばつ被害   (2) 大豆
事前対策
(ア)潅排水を兼ねた水路を完備しておく。
(イ)干ばつが予想される時は播種覆土後、鎮圧する。
(ウ)深耕を行い、有機物の施用など土壌の保水性の改善に努める。
事後対策
(ア)開花期の水分不足は、落花・落莢が多くなり、着莢数が著しく低下するため、葉が裏返って白く見えてきたら、日中の高温時を避けて畦間潅水を行う。ただし、畦間に水が溜まった状態にならないように注意する。
(イ)干ばつの年には、高温になりやすく、カメムシ類やハスモンヨトウなど害虫の多発生が予想されるため、早期防除に努める。

2 干ばつ被害   (3) 野菜
事前対策
(ア)水源の確保や潅水施設の整備に努める。
(イ)潅水にあたっては、温度が低下する夕方に充分な量を行う。
(ウ)敷わら、マルチフィルム等によって、地面からの蒸発を抑制する。
(エ)有機質(堆きゅう肥)を多用して土壌の保水力を増す。
(オ)寒冷紗等による日覆を行い葉面からの蒸散を抑制する。
(キ)高温・乾燥条件で発生しやすい病害虫(炭疽病、萎黄病、ダニ、アザミウマ類等)に注意し、予防散布を徹底する。
事後対策
(ア)高温・乾燥条件で発生しやすい病害虫(萎黄病、ダニ、アザミウマ類等)の発生がみられる場合防除を徹底する。

2 干ばつ被害   (4) 花き
事前対策
(ア)水源の確保、潅水施設の整備、敷わら、マルチフィルム等による被覆の励行、有機質(堆きゅう肥)を利用した土づくりを行い、保水力を高める。
(イ)中耕は軽く行い、根を傷めないようにする。寒冷紗等による日覆を行うように努め、乾燥により発生の増加が見込まれるオオタバコガやハダニ類、ミカンキイロアザミウマの発生に注意し、防除を徹底する。
事後対策
(ア)乾燥により発生が多くなった害虫類やハダニ類の防除を徹底する。

2 干ばつ被害   (5) 果樹
事前対策
(ア)土壌表面を裸地にすると乾燥を助長するので、敷わらを行うか、除草を控える。
(イ)樹の衰弱や日焼け果の発生を防止するため、徒長枝切りをひかえる。
(ウ)適時、潅水を実施する。
事後対策
(ア)潅水に全力を注ぐのはもちろん、干ばつ時には特にダニ類の多発が予想されるので、この防除を徹底する。
(イ)カメムシ、ダニ、カイガラムシ、うどんこ病の発生が増える恐れがあるので、発生に注意をはらい、適期防除に努める。

2 干ばつ被害   (6) 茶
事前対策
(ア)水源の確保や潅水施設の整備に努める。
(イ)土壌管理(特に敷わら、深耕、有機質施用等)により、根量確保と保水力の増加に努める。
(ウ)不適切で過剰な施肥を止め、分施に努める。
事後対策
(ア)病害虫(特に吸汁性害虫)の防除に努める。
(イ)被害程度に応じた適正な整枝を行う。

3 風害    (1) 水稲
事前対策
(ア)風害被害の程度は生育時期との関係が大きいので、早晩品種を適宜組合せるようにし、全般的には早生化に努める。
(イ)健全な育成は被害軽減につながるので、深耕や有機物の施用、窒素の減肥、中干しの励行等に努める。
(ウ)かぜ台風のときは、深水にし、倒伏や急激な乾燥を防ぐ。
事後対策
(ア)台風後の稲は水分の要求量が多いので、田面の急激な乾燥を避け、数日間は充分に潅水するように努める。
(イ)登熟途中で倒伏の甚だしい場合は、台風後2~3日までの間にできるだけ早くていねいに起こし、4株程度ずつ結束する。
(ウ)収穫適期が近い場合は、倒伏した稲は穂発芽防止のため早めに収穫する。ただし、籾の水分が高いと腐敗粒などが発生するため、収穫後長時間放置せず、速やかに乾燥する。
(エ)台風後は白葉枯病、いもち病、ウンカ等が発生しやすいので、早期防除に努める。

3 風害    (2) 栽培施設
事前対策
(ア)ガラス室は基本的には強風に強いが、飛来物によってガラスが割れることがあるので、施設周辺の清掃をおこなう。
(イ)鉄骨ハウスは被覆を完全にし、換気扇を作動させ、屋根の浮き上がりを抑える。ハウス周囲の排水を行い、基礎部分が浸水して抜けやすくなることを防ぐ。
(ウ)APハウスは2連棟の場合、強度は充分でない。被覆を完全にし、換気扇を作動させて、屋根の浮き上がりを抑える。鉄骨ハウス同様に、基礎部分の浸水を防ぐ。筋交いなど充分でない場合は、補強する。
(エ)パイプハウスは周囲の排水を行う。暴風が予測される場合は被覆フィルムを取り去る。
(オ)ビニペットのバネの端の部分を外すなど、いざという時のために被覆資材を除去しやすいように準備する。

3 風害    (3) 野菜
事前対策
(ア)被害が見込まれる場合には、べたがけ資材の利用等による保護をはかるとともに、支柱や誘引ひも等の点検整備を行う。
(イ)イチゴ育苗ベンチ、高設栽培ベンチは降雨によって重量が増加すると、強風による被害を受けやすいので排水状態をチェックし、強度に不安がある場合には補強を行う。
事後対策
(ア)作物の傷みや樹勢低下に伴い、病害虫が発生しやすくなるので発生状態をよく観察して、早めに防除する。
(イ)倒伏したものは早急に引き起こし、支柱を立て直し、収穫期間中の場合は、損傷果実、株はできるだけ早く収穫する。
(ウ)傷ついた果実、本葉、折れた枝などは取り除き、ほ場外へ持ち出して天候回復を待って焼却する。
(エ)果菜類においては、被害程度が軽い場合は、できるだけ液肥を施用して樹勢回復を図りながら、栽培管理に努める。
(オ)軟弱野菜においては、風による被害株は早めに取り除き、土壌水分が適度になり次第、すぐに播種を行う。
(カ)イチゴの本葉枚数が風害により極端に減少した場合は、ビニール被覆の時期を通常より若干遅らせて葉数を確保する。また、ビニール被覆までに葉数が少なく樹勢が充分確保できない場合は、出蕾してくる頂果房の花数を制限して株負担を少なくする。

3 風害    (4) 花き
事前対策
(ア)キクの露地栽培においては支柱を倒して風圧を減らすようにする。
事後対策
(イ)倒伏したものは早急に引きおこし、支柱を立て直す。茎葉が傷んでいるので殺菌剤を散布して病気の発生を防ぐ。

3 風害    (5) 果樹
事前対策
(ア)風当たりの強いところは防風林を植栽する。
(イ)可能な限り、添え木や支柱で樹体を固定する。隣接する樹の主枝、亜主枝を互いに誘引し合い、強風による枝の揺れを少なくする。
事後対策
(ア)折れた枝は健全部まで切り戻し、保護剤を塗布する。
(イ)裂けた幹で修復可能なものは、支柱・ロープ・カスガイ等で補強する。
(ウ)倒伏もしくは傾いた樹は、根を傷めない範囲で起こし、支柱などで固定する。
(エ)落葉の激しい樹は、冬期の剪定をやや強めに行い、摘蕾・摘果も充分行って、樹勢の回復に努める。

4 低温害     (1) 水稲
事前対策
(ア)畦畔の漏水防止、迂回水路の設置、冷湧水の排除等、あらかじめほ場条件の整備に努める。
(イ)健全な生育は被害軽減につながるので、けい酸質資材の施用による土壌改良、深耕や有機物の施用、窒素の減肥などに努める。
(ウ)播種期の低温は、出芽に要する日数が長くなり、苗立枯病等の病害が発生しやすくなるため、塩水選や種子消毒、育苗床土の消毒等を徹底し、予防に努める。また、催芽を充分行い、出芽をそろえるようにする。
(エ)いもち病が発生しやすくなるため、窒素の施用をひかえ、病害予防に努める。
事後対策
育苗期
(ア)各種被覆資材の利用など保温に努める。
本田期
(ア)窒素の追肥にあたっては、生育状況をみながら追肥の中止や減肥など、生育遅延をきたさないよう留意する。
(イ)水管理については、分げつ期の昼間止水・夜間かんがい、低温来襲時の深水かんがい等により、稲体の保護と被害軽減に努める。

5 寒害     (5) 果樹
事前対策
(ア)とくにミカンについて、幼木や寒害を受けやすい地帯では、施肥管理等に留意し、耐寒性を高めるようにする。
(イ)寒冷紗による被覆、防風ネットの設置、主幹に稲わらを巻くなど、防寒に努める。
(ウ)あらかじめ防風林を設けて寒風を防ぐ等の予防措置を講ずる。
事後対策
(ア)症状の軽いものについては、新梢の伸長に合わせた芽かきを行い、樹勢の調節を図る。

5 寒害     (6) 茶
○凍害(赤枯れ)
事前対策
(ア)耐寒性品種の導入や遮光資材による直接(幼木は間接)被覆を行う。
(イ)秋肥の時期を早め、窒素成分を控え、カリ不足を解消しておく。
(ウ)整枝は春整枝とし、秋に行うときには遅くならないようにする。
事後対策
(ア)冬芽被害があれば3月中下旬に除去する。
○寒干害(青枯れ)
事前対策
(ア)蒸散抑制剤の施用を行う。
(イ)根群の拡大を図り、敷草などの施用に努める。
(ウ)耐寒性品種の導入や遮光資材による直接(幼木は間接)被覆を行う。
事後対策
(ア)3月中下旬に枯死部の除去を行う。
寒風害(落葉)
事前対策

(ア)防風ネットの設置。幼木では間接被覆を行う。
事後対策
(ア)3月中下旬に枯死部の除去をおこなう。
○ 裂傷型凍害(幹割れ)
事前対策
(ア)排水を良好にし、窒素肥料の施用をひかえる。
(イ)幼木では、株元に敷きわらを厚く施し、間接被覆を行う。
事後対策
(ア)被害後に土寄せを行う。

6 凍霜害   (1) 野菜
事前対策
(ア)日照、風向き等を考慮して凍霜害の回避できる適期および適地をあらかじめ選定する。
(イ)早まき、早植えを極力避け、健苗の育成に努める。
(ウ)ハウス、トンネル栽培の場合は被覆の隙間がないようにチェックする。
(エ)不織布のべたがけ等による葉温の確保、マルチフィルム等による地温の確保を行う。
(オ)耐寒性を低下させないように、厳寒期前の軟弱徒長や密植を避ける。
(カ)トンネル栽培や施設栽培においては、被覆フィルム、ドア、換気扇のシャッター等の隙間をできる限りなくすとともに、多湿害を避けるため昼間の換気にも留意する。
事後対策
(ア)被害が出た場合、欠株の補植や肥培管理に努め、病害防除を行う。

6 凍霜害   (2) 花き
事前対策
(ア)日照、風向き等を考慮して凍霜害の回避できる適期および適地をあらかじめ選定し、早まき、早植えを極力避け健苗の育成に努める。
(イ)ハウス、トンネル栽培の場合は被覆の隙間がないようにチェックする。
(ウ)不織布等による作物へのべたがけによって予防する。
(エ)ポリフィルム等によるマルチによって地温を確保する。
(オ)低温による開花遅延や花芽分化異常が起こりやすいので暖房温度を高めに設定する。
(カ)暖房負荷を下げるために施設のサイドなどの多層被覆を行う。
(キ)無加温施設では低温の影響を軽減できるように内張を必ず行う。
(ク)電照ギクでは消灯1週間ないし10日前より暖房温度を上げて、消灯時には花芽分化に必要な温度を確保する。
事後対策
(ア)被害が大きく経営的に廃棄した方が有利な場合には生産を中止し、次の作付けを行う。
(イ)回復して経営的に継続した方が有利と見込まれる場合は、保温や暖房に努めて光線を充分にあて、生育の回復をはかる。
(ウ)被害が出た場合、欠株の補植や肥培管理に努め病害防除を行う。

6 凍霜害    (3) 果樹
事前対策
(ア)防霜扇による送風法、スプリンクラー等による散水法、寒冷紗被覆等により予防する。
事後対策
(ア)着果量が不足する恐れがある場合には必ず人工授粉を行う。また、着果量が少ないと徒長枝の発生が多くなるので、窒素分の追肥はひかえる。

6 凍霜害    (4) 茶(晩霜害)
事前対策
(ア)晩生品種を導入する。
(イ)防霜扇を計画的に設置する。
(ウ)間接被覆施設を導入する。
事後対策
(ア)被害葉が混入しないように適採するが、被害部の多いときはこれの除去を行う。
(イ)病害虫(特にダニ、チャノホソガ)防除を行う。
(ウ)被害が甚大な場合は追肥を行う。

7 雪害    (1) 栽培施設
事前対策
(ア)ハウス、ガラス等の構造(特に基礎、屋根の部分の傾斜角度、材質等)について、充分留意する。
(イ)屋根勾配の緩やかなパイプハウス等、降雪による被害が予想される施設においては、降雪時に使用する、補強のための支柱を用意する。
降雪時対策
(ア)暖房設備のある場合は、設定温度を高くし内張被覆を開けて屋根面の雪の落下を促す。
(イ)必要に応じて補強用の支柱を使用するとともに、積雪が認められる場合には早めに雪を下ろす。
(ウ)連棟施設の谷部分の雪が多く倒壊の恐れがあるときは外張りフィルムを切り、雪を落とす。

7 雪害    (2) 果樹
事後対策
(ア)樹上の雪を速やかに除去する。
(イ)折れた枝は健全部まで切り戻し、保護剤を塗布する。

7 雪害    (3) 茶
事前対策
(ア)直接(成木園)、間接(幼木園)被覆を実施する。
事後対策
(ア)積雪荷重で樹体に被害がでる場合は、融雪を実施する。
(イ)3月中下旬に被害部の除去を行う。

8 湿害・雨害    (1) 麦類
事前対策
(ア)排水路を整備するとともに、ほ場周囲に明きょを掘り、排水条件に応じてほ場内に3~5m間隔で排水溝を設ける。
(イ)生育期間中、降雨が続く場合は、ほ場内に滞水しないように排水溝の点検を行う。
(ウ)麦類は成熟期に雨にあうと品質が低下するため、天候を見ながら適期に収穫を行い刈り遅れないように注意する。
(エ)降雨が予想され早めに収穫した場合高水分麦は変質しやすいため、速やかに乾燥する。
(オ)出穂期以降の高温・多雨条件で、赤かび病が発生しやすくなるため、開花期を中心に予防的防除を実施する。

9 降ひょう害     (1) 茶
事前対策
(ア)間接被覆施設を導入する。
事後対策
(ア)被害の程度により放任または被害部除去を行う。

9 降ひょう害    (2) 果樹
事後対策
(ア)葉が破れたり、枝や果実に傷がついている場合は病害が発生しやすくなるので、殺菌剤で予防する。
(イ)渋カキを脱渋する場合、傷果の軟化が早いので区別して脱渋する。

 このページにおいて「被害」とは、暴風雨、豪雨、洪水、地震、低温、干ばつ、降ひょう、その他の異常な天然現象もしくは大規模な火事その他大規模な事故等により生じた災害、または当該災害が主因となって発生もしくは著しく増加した病虫害等によって農作物等が受けた被害をいいます。
  奈良県農林部農業振興課編 「農作物等の災害対応業務の手引きより」
*なお、農薬の散布においては、対象作物・病害虫ごとに定められた使用方法(濃度や総使用回数等)に従うこと。