平成26年10月17日(金)に開催された国の文化審議会において、桜井市初瀬に所在する長谷寺本坊を重要文化財として指定するよう答申がなされました。
奈良県においては平成20~23年度に県下近代和風建築の総合調査を実施しました。長谷寺本坊の重文指定はこの調査成果を受けたものであり、調査対象から初めての重要文化財指定となります。なお本坊は「長谷寺大講堂、護摩堂及び本坊」として、平成24年3月に奈良県指定有形文化財に指定されています。
記
1. 文化財種別 建造物
2. 名称・員数 長谷寺本坊 8棟
大講堂 1棟 (大正8年、1919、設計天沼俊一)
大玄関及び庫裏 1棟 (大正12年、設計岸熊吉)
奥書院 1棟 (大正9年、設計阪谷良之進)
小書院 1棟 (大正12年、設計阪谷良之進)
護摩堂 1棟 (大正12年、設計岸熊吉)
唐門及び回廊 1棟 (大正13年、設計岸熊吉)
中雀門 1棟 (明和3年、1766)
土蔵 1棟 (明治時代)
附 設計図面 122枚
3. 所在地 桜井市大字初瀬
4. 所有者 長谷寺
5. 説明 長谷寺本坊は、国宝本堂と谷を挟んで相対する南の高台に位置する。本坊の創建は天正16年(1588)とみられ、近世を通じて伽藍が整えられていたが、明治44年(1911)に焼失した。
現在の建築群は、大正8年(1919)から13年(1924)に再建されたものである。文化財の保存修理に携わっていた奈良県技師である天沼俊一、阪谷良之進、岸熊吉が派遣され、設計と工事監督を担当した。
長谷寺本坊の建築群は、焼失前の構成や形式を部分的に継承しながらも、配置や平面の計画、空間構成の要所に近代らしい合理性が導入されている。文化財保存を通じて熟知した様式をもとに近代の感性で創出された意匠や造形は優秀であり、高度に完成された近代和風建築として高い価値がある。

長谷寺本坊、正面全景、北より。向かって左より護摩堂、大玄関及び庫裏