平成28年10月24日(月)知事定例記者会見

司会:
 おはようございます。
 ただいまから知事定例記者会見を始めさせていただきます。
 本日の発表案件は、聖徳太子プロジェクトに関連する1件です。
 知事よりご説明いただきますので、よろしくお願いいたします。


案件:聖徳太子プロジェクト開幕講演 「-和を以て貴しとなす-聖徳太子1400年シンポジウム」
《資料》 (新しいウィンドウが開きます。)

知事:
 奈良県では、「聖徳太子プロジェクト」という事業を本年度から始めています。622年に聖徳太子がお亡くなりになったので、それを一つのきっかけとして、2022年まで「聖徳太子プロジェクト」を行うというものです。発表案件は、お手元の資料にありますように、その最初のイベントという位置づけになっており、シンポジウムという形で「聖徳太子プロジェクト」をキックオフしたいと思っています。どのように聖徳太子を顕彰するのか、いろいろ議論があるかもしれませんが、県としては、いろんな説にこだわるということではなく、聖徳太子自身の影が少し遠くなっているような気もしますので、1400年の大遠忌を機会に、より強く思い出していただけるように、といった思いがあります。

 何よりも、ビッグキャラクターですが、非常に曖昧なところも残っていますので、どのようにアプローチするかということに難しい面があるようには感じていますが、多角的にアプローチするということです。法隆寺さんからも、県がそのようなことでアプローチをして顕彰するのはいいですよと言っていただいたので、お寺のほうの大遠忌事業だけではなく、地元の行政機関として、聖徳太子という、奈良にゆかりの深い歴史上のキャラクターの顕彰に努めていきたいという趣旨で、オリンピックイヤーの翌々年ですけれども、2022年に向かおうということで、そのキックオフになるようなイベントを開始するといった趣旨です。

 内容についての詳しいことは、チラシなどをご覧いただければと思います。

司会:
 それでは、発表案件につきましてのご質問をよろしくお願いいたします。

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質疑応答
NHK:
 少し中身から離れますけれども、聖徳太子についてはいろんな説があるとおっしゃいましたが、知事はどんなお立場で、どんな存在として捉えていらっしゃるでしょうか。

知事:
 地元のキャラクターですので、多少勉強をしましたが、極端に言えば非実在説まである、あるいは逆に言うと、少し角度が違うかもしれませんが、悲劇の人というように非常にドラマチックに描かれることも多いです。梅原猛さんの説で、聖徳太子ゆかりの寺である法隆寺の真ん中に柱が入っているのは、鎮魂とか怨霊を鎮めるためだという、梅原史観といいますか、学説があって、大いに世の中を沸かしたわけですけれども、さらに聖徳太子の周辺の研究が進んできているように思います。1つは「日本書紀」の研究です。「日本書紀」はどういう目的で、誰がつくったのかといった研究が進んでいます。日本の歴史では「六国史(りっこくし)」というものがありますが、「日本書紀」から「続日本紀」、それから「日本後紀」「続日本後紀」、「文徳実録」、「三代実録」で、6つの書が平安時代の半ばまで最古の正史としてあります。後のほうは別にして、最初の正史が「日本書紀」であり、天武天皇が壬申の乱の後、正史をつくろうと発願されました。

 「日本書紀」は全て漢文で書かれていますが、その中で、聖徳太子というのはすごく大きく、ビッグキャラクターとして記されています。天皇ではないので、帝紀と言われますが、編年体帝紀というのは、天皇の治世のことを順番に書く中国の帝紀を真似た編集方針ですけれども、最後のほうは大分短く省略していますが、ご案内のように、30巻の正史の中で大きく取り上げられているというのが聖徳太子の存在感の根源だと思います。

 したがって、「日本書紀」をどう読むかということが、この「聖徳太子プロジェクト」でも大きな意味があるのではないかと思います。最近の学説では、天武天皇が「古事記」「日本書紀」をつくるよう発願されたのが始まりだとされています。その後、時を経て「日本書紀」が720年に完成しました。東京オリンピックイヤーである2020年はその1300年後となり、その2年後の2022年に聖徳太子の大遠忌があるので、1300年前と1400年前の歴史の顕彰というのは、奈良県にとっては随分意味があると思います。

 聖徳太子像ですけれども、「日本書紀」で大きく意味があったのは、最近の説では、藤原不比等が「日本書紀」の編さんに大きく関わったのだろうと言われていますが、蘇我氏にゆかりが大変強い家系の皇子様である聖徳太子を、藤原不比等が大きく意味のあるように取り上げました。藤原不比等がどうして聖徳太子をそういうふうに大顕彰したのかということも一つのポイントになりますけれども、藤原不比等による像が正しいのか、政治的な奉りがあったのかということも大変興味深いように思います。

 キックオフでは、宗教観という面から、宗教人としての聖徳太子に光を当てられるようですけれども、「和を以て貴しとなす」という有名な17条の憲法はいつつくられたのかという研究も進んでいて、「日本書紀」の漢文が正格漢文とそうでない漢文が混じっているという森博達(もり・ひろみち)先生の研究が進んでいます。正格な漢文は唐人、当時、奈良にいた中国の方、続守言(しょくしゅげん)と薩弘恪(さつこうかく)という二人が書いたといったことが特定されるような時代になっています。もう一人は、山田史御方(やまだのふひとみかた)という日本人で、最後の30巻はまた別の人と、3人の編集者がいたということなんです。

 そこで、聖徳太子の17条の憲法は誰が書いたのか。森博達先生の説では、正確な漢文ではないというのです。唐人が、昔あった書物を漢文化した、昔も漢文化だったかどうかもわからないわけなので、「日本書紀」で初めて出るのが「和を以て貴しとなす」ですので、「和を以て貴しとなす」という17条の憲法自身が、聖徳太子が生きた時代の政治観か、藤原不比等の政治観かということが大きな争点になろうかと思います。それもわからないわけですけれども、そのような古代史の世界というものはおもしろいでしょうと、奈良県知事としては申し上げていきたいということです。古代史、歴史は、いろいろとわからないところがありますので、こうだと決め付けて定義するのは危ないと思っています。わからないところは余計謙虚に見ていかなければいけないと思いますが、歴史学はどんどん深まりますので、その古代の歴史を楽しみにしてもらおうと思います。

 2月に東京で、古代史ゆかりの5県(奈良県・島根県・三重県・和歌山県・宮崎県)の知事で、「古代歴史文化賞」というものを顕彰し、過去3年実施しています。古代の研究は、歴史は書物ばかりですが、考古は物です。物はやはり迫力があります。物が歴史の書の解釈を覆すかどうか。それと、もう一つは考古学で、外国の考古学、外国の書との比較が随分出ていますので、「日本書紀」だけの研究をしていても間に合わないという歴史学の広がりもあります。いま、大変おもしろい時代に入っていると思います。

 聖徳太子も、大変国際感覚の豊富な方であったように思いますので、国際交流の観点からも光が当てられるようになって顕彰ができれば良いと思います。そういういろんな学問の立場の人がおられますので、県としてはなるべく幅広くこのシンポジウムに招き入れることができればと思います。

司会:
 発表案件につきましてのご質問はよろしいでしょうか。
 それでは、ほかの案件につきましてのご質問をよろしくお願いいたします。

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地方消費税の配分基準について

時事通信:
 先週、県の税制調査会が地方消費税の配分で新しい提言をすることについて報告されたと思います。人口基準を15から35にするようにと、かなり具体的な提案を細かい根拠をつけてされることになると思うんですけれども、その実現への見通しと、どんな思いで12月に向けて取り組まれたかということをお聞かせ下さい。

知事:
 そうですね、国の税制の中の清算基準ですので、県としては、国の担当省庁である総務省の税務局関係に訴えてまいりました。今度の件についても訴えておりますし、党の税制調査会にも機会があれば訴えたいと思います。

 昨日、防災訓練があって、消防庁長官が来られましたが、この方は前税務局長だった方なんです。それで、消費税の件ではいつもご厄介かけていますと言うと、もう奈良県の知事の顔は忘れられませんよとおっしゃっていました。思えば、消費税の配分基準は清算基準であり、消費税ですから、国税として全部集め、地方消費税は消費された地に還元するということが原則ですけれども、ここで消費したという統計がないわけです。ですから販売したという統計で代置するという手法でやってきましたが、その販売統計を使っていることに実態と乖離があるのではないかということが奈良県の訴えの基本的なことです。

 ささいなことを言いますと、高の原にイオンがありますけれども、あそこで家電などを買われる方は、総じて分ければ奈良県の人と京都府の人がいらっしゃるわけです。店舗は奈良県と京都府にまたがっており、販売面積は奈良のほうが多少多いように聞いています。ところが、今までの清算基準だと、入り口が京都府にあるから全額京都の売り上げ、消費に計上されていました。奈良県の人は幾ら買ったのか、京都府の人は幾ら買ったのかという消費の統計がないからなんですが、これを見つけて、おかしいじゃないかと言ったら、面積で配分するということに直りました。また、奈良県の人は県外消費率が全国で一番高く、大阪府で多く消費されています。大阪府で食べ物を食べられるのはいいにしても、家に持って帰る物を買われる場合、それは奈良県の消費じゃないですかと、総務大臣に訴えてきました。それは、例えば寝巻きというのは家の外で消費せず、現住所である家で消費するでしょう。あるいは家電も家で消費するでしょう。奈良県は大阪府での県外消費が15%もあるので、大阪府の消費と奈良県の消費を分けることができませんかというアピールをしてきましたが、なかなか統計が整備されません。ただ、販売統計に基づくのはちょっと乖離があるなという認識を持って、今まで伏せられていたわけですけれども、持ってきていただきました。

 さらにあったのは、パチンコです。消費額でパチンコの消費というのはものすごく多いんですが、奈良県のパチンコの一人あたりの消費額はすごく小さいんです。昨日、消防庁長官が言ったのは、パチンコの販売統計は、事業者の方に奈良県で幾ら売ったのか、大阪府で幾ら売ったのかということを指導して報告してもらうらしいんですけれども、大阪府が圧倒的で、皆大阪府にしてしまう。奈良県でパチンコで消費した人は奈良県の消費にならないというのは前からクレームをつけているんですけれども、なかなか税制報告のようにぴったりいかないから、販売報告の曖昧さが残っているという、いろんな事例が出てきているわけです。

 今度の奈良県の訴えは、最近、通信販売が増えていますけれども、これも販売地統計になっています。東京都から通信販売を行うと、東京都の販売額になる。しかし、通信販売でどこに送ったかというのは統計がなかなか大変だということです。全体の統計の中から通信販売の部分を除いて、要は配分基準で東京都の販売額に計上しないでください、その分の配分はどこに行ったかわからないのであれば、人口で配分してくださいということが今度の訴えの内容になっています。そういうことを理屈で言っています。基本的には消費統計がないから販売統計で代置することが実態と乖離しているということです。販売と消費が乖離する元になっています。

 それからもう一つは、外国の方が日本で消費されたり秋葉原などで爆買いをされたりするときに、外国の方の販売が計上されたら、販売額の多い東京都、大阪府の販売量が増えますが、それは消費税が免税されているから、消費税の配分の基準に使うのはおかしいじゃないですかと言っているわけです。すると、免税になっている販売額というのはある程度わかります。それは全体の販売額から、むしろ、引くだけでもいいのかもしれませんが、どちらかというと人口代置で、その全体の中で割合が出てくると人口代置にしてくださいといった訴えを積み重ねています。通信販売ではなく、持ち帰り、越境テイクアウトというのがなかなかややこしいと思います。

 先ほども言いましたが、寝巻きだけではなく家電などは、埼玉県や奈良県の人もそうかもしれませんが、例えば梅田のヨドバシカメラに買いに行かれると、そちらで大きな販売額が計上されます。奈良県の人が冷蔵庫を買っても、冷蔵庫を大阪府で消費するとは言わない、奈良県の人であれば自宅へ配達されます。すると、それは大阪府の販売額で計上されて清算基準の元になるのはおかしいじゃないですかといったことも理屈で言っています。そういうことを、本当は人口でも、たくさん使われる人と使われてない人、個別にわたればあるんですけれども、ドイツのように1人当たりの消費額というのは変わりはあっても、平均すれば大体同じになるからといって、地方消費税は全額人口基準で配分するといった例があります。今は販売基準しかないのはわかるけれども、至らないところもありますねということは、奈良県ぐらいしか言えない、また言わないものだから、そういったことを言っています。しかし、改善しないといけないというふうに受け取ってはいただいていますので、それを理屈立てて言っていこうかと思っています。

 こういったことを政治的に知事会で言うといっても、大都市は、いやそれはわかるけれども嫌だなと、こういうことになりますので、損をしている県が理屈立てて言うというパターンになっています。奈良県では、税制調査会という組織で検討をしていただき、奈良県のアピールを行っていこうと思っています。今までも奈良県税制調査会で人口基準をもっと増やすようにということを言って、多少アップになって成功した例もありますので、まだもう少し問題が残っているということを改めて言いに行こうかと思います。

時事通信:
 一番ボリュームとして大きいのが、医療費の部分の計算を消費の部分から除いて、その分の12ポイントを、人口基準に回してくださいというところだと思いますが。

知事:
 今度の報告で一番わかりやすいのは通信販売だと思いますけれども、あとは、医療費とおっしゃいましたが、それもあります。ボリューム的にちょっと記憶していませんが。

時事通信:
 医療費の部分というのは、かなりハードルが高いというか、大きな目標という感じですか。

知事:
 そうかもしれません。医療費の免税が増えてくると、免税をどのように扱うか。減税や、免税の場合もあるし、それも途中で付加価値がついているわけなんですけれども、最終消費者には課税されないといったようなことがあります。しかし、医療費を使っていれば、負担していない消費者の消費を配分の基準に使うということは是か非かというと、是ではないと思うんです。じゃあどうするのかという、これについてはなかなか理屈を立てにくいとは思いますけれども、そういう課題があるということを言っておかないと、清算をきちんとしてくれていると納税者の方に思ってもらっても困ります。奈良県が必ずしも全面的に得をするわけではないんですけれども、やはり多少の不公平さを感じていますので、地方消費税というからには、日本国内の境界がある消費地の中で消費が行われたということに、なるべく直結するような清算基準のほうが望ましいと思います。

 これから税率がアップすると余計にそうだし、それは社会保障に当てるとなれば、受益のことも多少考えなければいけません。その受益を考えるのは、また極端には目的税的になりますので、それは強く要求していませんけれども、増税分は社会保障費に全額充てるといったら、その社会保障費の充てる税源が、1人当たり2倍近い差があるのはどういうことですかというぐらいは、言いたくなるということです。社会保障費に充てるんだったら、人口割で割り切ってもいいじゃないかとか、あるいは高齢者の割合が多いということは今までも言っていたことですけれども、4分の3は高齢者人口割にしたらどうですかというようなことを今までも言っています。

 人口基準の中でも増税分は、赤ちゃんと高齢者は同じ1人にしないで、社会保障の財源として要るんだから、高齢者の多い地域にはより加重的に配分されてはいかがですかというようなことを言っています。人に着目して配分するというのは税制からは少し離れますが、清算基準とよく言われ、譲与税になればそういうことができるんですけれども、地方消費税だからと言う知事さんがいらっしゃいます。しかし、独立した清算基準というようなものが入っているから、アメリカの独立した売上税とはまた全然違うんだから、しかも社会保障のために上げるということであれば、もう少し納得感が増してもいいんじゃないですかというようなことを言いに行っているわけです。

 なお、県に配分されて、今は増税分は市町村にその2分の1を人口割で機械的に配分されますので、県への配分が少ないと、市町村への配分が少なくなります。医療と介護の社会保障で現物の給付、サービスを行うのが市町村ですので、消費税を当てにした現物給付に差が出るでしょう。財源に差が出るでしょう。それは交付税で埋めるというやり方ももちろんあるわけです。差があるのはわかったけれども、どのようにその差を交付税で埋めるのかということです。交付税は、事業をするから組めるので、その差があるからといって、交付税は税制の代替にはならないわけですので、そういった税制のアンバランスはきちんと税制でバランスをとってくださいということが正論だと思います。

 そういった理屈を言っているわけですが、奈良県は損をすることはないと思うんですが、必ずしも丸もうけではないわけです。より公正な税制にしてくださいということを言いに行こうと思っています。自民党の税制調査会にも接触したいと思っています。

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葛城市長選挙の結果について

毎日新聞:
 国政のほうでは衆議院の補欠選挙で自由民主党が応援する候補者が東京などでは勝っていますが、昨日行われた葛城市長選挙では、現職候補を自由民主党と、知事も応援されていたと思うんですけれども、負けたということで、ご感想と、敗因などを分析されていれば教えていただきたいのですが。

知事:
 敗因は分析していません。選挙はいろいろあるので、むしろ教えていただきたい。いかがですか。

毎日新聞:
 ご感想でもいいのですが。

知事:
 感想だけで言うならば、敗因についての感想はありません。それから、選挙ですから、あまり深い感想はありません。それぞれの首長の選挙には関心がありますけれども、選挙の結果は選挙の結果だろうと思います。だから個別の感想というのは、正直、特段持ち合わせていないんですけれども、応援したから何かあるんではないかとお聞きになりたいのでしたら、どこの首長もそうですけれども、現職を応援しようということにしていますので、負けそうだから応援に行かないということはあまりしません。負けた人も応援に行ったし、勝った人も応援に行ったりしていますので、それだけのことです。

 それぞれの首長さんは、現職で頑張ってきておられると思いますけれども、地元の方の受け取り方はそれぞれあると思いますので、選挙になると難しい面もあるんだろうなと、同業相哀れむと言ったら変になるかもしれませんけれども、同業の立場にあると、選挙でのご本人の立場に立てば、いろいろと一生懸命やってきたのになかなか意が通じなかった面もあると思っておられるに違いない、と思います。そのぐらいの感想です。

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煙が出ない加熱式タバコについて

毎日新聞:
 煙の出ない新型たばこがあると思うんですが、奈良市は路上喫煙をポイ捨てには当たらないということで禁止されていないみたいなんです。これについて、知事のご見解と、県としてどうしていきたいかというところはありますか。

知事:
 たばこは、受動喫煙がやはり迷惑だろうということで、受動喫煙の機会をなるべく減らそうという方向で各地が走っていますし、オリンピックでもそのような動きがあり、世界的な動きになっています。日本は、禁煙運動という世界的にびっくりするような流れを目の前で見てきたわけですけれども、その中で受動喫煙というものを大きく取り上げ、それが分煙という形になって、分煙は大変進んできたように思います。県庁でも、夜中、朝方に、外の喫煙所で喫煙して多少たばこのにおいを付けた人がエレベーターで一緒になり、あれ、またニコチンかといって冷やかしているんですけれども、私は煙に弱いのか、たばこを吸わないので、あまり詳しくはないんですが、加熱式たばこというのがあるということは聞きました。

 それで、加熱式たばこをどうするかというのは、正直まだよくわかりませんし、煙が出ないと聞いていますので、行政のほうでも受動喫煙の分野からすれば、煙が出ないのに受動喫煙と同じような影響があるのかどうか、ちょっとまだわからないという報告を受けています。もし煙が出なくても、受動喫煙と同じ影響があれば、分煙の対象になるように思いますけれども、加熱式たばこは煙が出ないから人に害を及ぼさず、本人の意思で吸っているということなら、目の前で吸っても、場所を離すという分煙の対象になるのかどうかということではないかと受け取っています。したがって、加熱式たばこの喫煙に関する所管あるいは行政の方向ということについては、まだ態度がはっきりしていませんといったお返事になるんじゃないかと思います。

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衆議院議員選挙区の区割りに関する国から知事への意見聴取について

奈良新聞:
 さきほどの選挙の話に戻ります。衆議院議員選挙の区割りで、国から知事の意見聴取があると聞いていますが、お話しされましたか。

知事:
 選挙区割りは、衆議院の減員区で予想されているのが6つほどあるように聞いています。奈良県も4から3の減員区だと聞いています。これは、衆議院議員選挙区画定審議会で決められるわけですけれども、その際、知事の意見も聞くということで連絡がありました。では、どのような立場で知事は意見を言うのかということになりますけれども、まだよくわからないのですが、衆議院議員選挙区画定審議会である程度「飛び地をつくらない」などの原則が立てられ、作成方針も出てくると思います。それに対してどのような意見を言えばいいのかということですが、まだもう少しよくわかっておりません。意見を言わなければいけないことは確かですので、ここがこうなっていないといけないというようなことは衆議院議員選挙区画定審議会で決められるので、知事は特段の意見があれば言ってもらっていいんだよというようなことかもしれません。そうであれば、現状からどのように分けていくかといったことが衆議院議員選挙区画定審議会の方針で出てくると思いますので、それに対して困る点が見つかれば申し上げるというような態度も一つあろうかと思いますし、どのように意見を言えばいいのかということを事務的にもう少し聞いて、地方の知事にどのような意見を求めておられるのかということを、もう少し正確に確認して、意見を申し上げようと思っています。

奈良新聞:
 では、まだこれからということですね。

知事:
 まだこれからです。その際、市町村の意見も聞かなければいけないということで、市町村もどう言っていいかわからない面もあろうかと思いますが、それは衆議院議員選挙区画定審議会の事務局である総務省に、もう少し事務的に確認をして、どんな意見を言っていいのかということを検討したうえで、市町村の意見も聞いて、県の意見を言うということになると思います。

奈良新聞:
 日程的にもまだはっきりしていないんですか。

知事:
 年内だと思いますけれども、
11月、12月しかありませんので、11月に何かお呼びというか、そういうことがあるかもしれないと予想していますが、第一報が来ましたので、事務的な検討をもう少し進めていただきたいと思っています。衆議院議員選挙区画定審議会では、いろんな検討を既にされているかもしれませんので。

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リニア中央新幹線に関する生態系事前調査について

奈良新聞:
 リニア中央新幹線の件で、県が独自に生態系の調査を始めたという報道がありました。この件に関して具体的なことをお聞きしたいんですが。

知事:
 リニア中央新幹線では、環境アセスメントが重要な作業工程になります。環境アセスメントは、実際にルートを決めて駅をつくる際に、環境にダメージを与えないかどうかということが主たる目的になります。このことについては地元との調整が随分と出てきますので、その調査に時間かかるのではないかということを地元では心配をしており、事前の調査で役に立てば調査しておくということです。環境アセスメントは建設主体であるJR東海の仕事ですが、地元調整を行われる際に、JR東海が大丈夫だと言っても、そうでないということも言わなければいけませんので、奈良県としてもある程度調べておかなければいけません。具体的な折衝は全く始まっていませんが、県で想定できるような環境アセスメントの地ならしのような調査は進めてもいいのではないかと考えています。

 したがって、今までのところ、20キロのルートの帯が決まっていますので、その中での生態系の調査というものは、県が行ってもお役に立つのではないかといった程度です。JR東海がもう一度自分で行うと言われればそうなると思いますけれども、信用して県の調査結果を使うと言われたら、環境アセスメントの基本調査にも組み込まれるかもしれないと思います。役に立てばいいなというふうに思い、通常、環境アセスメントで行うべき調査を多少前倒しして、県の立場で気になるところを調査しようといった程度のことです。

奈良新聞:
 もう調査は始められているんですか。

知事:
 調査費がついていますので、どのあたりまで進んだかという報告はまだ受けていませんが、幅広く調査します。ルートはこのあたりだという話はまだ全くありませんが、このあたりを特段に調査してくれと言ってもらったらしめたもんですけれども、なかなかそういうこともありませんので、広く調査せざるを得ません。昔のように、ここで工事を行うから、ここにトンネルを掘るぞ、というだけではいけないと思います。生態系の調査も、地勢の調査も、土がどうだろうかという調査も出てくると思いますし、そういうことも大事なことだと思います。JR東海の了解はとれないと思いますけれども、役に立つことであれば差し支えない範囲で、また役に立つようなことを多少前広に調査をしておいてもいいのではないかなということで予算をいただいていますので、その範囲で多少調査をさせていただくということです。県の調査が決め手になるということにはまだならないと思いますが、JR東海が、自分でやると言ったらされることになるし、県はそれに協力するということになると思います。協力するときに、このような客観的な調査が、実際役に立つのではないかと思います。そのような気持ちで調査費の予算をいただいていますので、多少調査させてもらえるのではないかと思っています。

 奈良県は、JR東海の仕事に大変協力的だという印象を持ってもらわないといけないと思っていますし、そのように思っていただいているのではないか思いますけれども、最終的に決められるのは建設主体のJR東海ですので、そのときに地域の意向とも調和のとれた形で決めてくださいという折衝になると思います。そのような関係が今後進んで、あるいは深まればいいように思っています。まだこれからです。

奈良新聞:
 調査結果はJR東海に提出するということですか。

知事:
 そうですね、お渡しできればと思います。

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県内市町村の決算状況について

NHK:
 先週、県内市町村の決算がまとまって、経常収支比率がやや改善という発表がありましたが、このことについての総評をいただければと思います。

知事:
 県内市町村の決算はもう七、八年出しています。昔は市町村の決算額、経常収支比率で見ますと、奈良県は全国ワーストワンだったんです。これは困ったもんだと統計で発見して、何とかならないかと考えました。市町村の決算だから、じゃあ決算の穴埋めをするのに交付税をどんどんあげるというわけにもいかないし、これは国の仕事だということもありましたが、その中で、徴税率が低いことと、決算の経常収支比率のワーストワンが並行していることが目について、財政規律が奈良県の市町村は悪いのではないかと失礼ながら思いまして、ではこれを上げようと思いました。市町村毎に差があり、徴税率は住民の方の意識にもよりますが、首長の徴税意欲も影響してきます。といいますのは、徴税率の低いところが数年でぐんぐん上がって徴税率トップになってきました。これは王寺町ですけれども、二代前の町長がそういう努力をされました。4期目の終盤になってから行われて、町の有力者が押しかけてくるんだとこぼしておられました。俺から税金取るのかという人がいるんだというから、そんなの取るべきじゃないですかといって、「奈良県・市町村長サミット」で徴税の勉強をして、「奈良モデル」の一つの例になりますが、市町村職員が徴税に行きにくければ、県職員が代わりに徴税に行くというお助けまでしています。

 あるいは、高知県では徴税率がすごく上がっていますけれども、催告をしないというんです。高級車を保有されたりしている場合は、直ちに自動車などの差し押さえをされて徴税率が上がった。お金がない人から取るのかというと、そうではないんです。市町村の住民税、固定資産税を払わない人は国民保険料も払わないなど、そういった連鎖が起こっているということも、地方自治の脆弱なところですけれども、そのような徴税率を上げる運動をしてどんどん上がってきました。

 それとともに、財政規律がだんだん固まってきたと思います。財政規律の中で、経常収支比率に大きな影響を与えるのが人件費と公債費ですが、公債費は過去の首長が地方債を発行した後の借金で苦しんでおられる。これに対しては、無利子貸し付けで県が支援を行いました。一時、30億円ぐらいの支援を御所市と上牧町に行いましたが、これで随分公債費負担が減って喜ばれました。人件費はなかなか直接的にできないわけですけれども、よく働ける環境をつくろうという働き方改革が大事です。あるいは、土木技師がいない市町村が10町村ぐらいありましたが、それは、県が代替で定期点検の派遣を行うといった融通をし合って、あまり仕事のない町村が土木職員を採用するよりも、県が代わりに行うという行政の工夫をしてきました。

 それだけが効いたというわけではないと思いますが、何といっても市町村のイニシアチブ、市町村の行政の中心ですから、奈良県全体としては、やはり大きな市の経常収支比率が悪いということです。奈良市を初め、橿原市、天理市、桜井市ですが、大きな市が良くなれば、奈良県の市町村の経常収支比率は、総体としてすごく良くなります。和歌山県とワースト争いをしていたんですけれども、和歌山県はぐんぐんと上がりました。和歌山県の財政が急に良くなったということですので、そのようなことを期待します。ですから努力をすれば、奈良県の改善率は全国の改善率よりも多少上回ってきているということがうれしいところです。

 市町村に交付税が入ると結果的に改善するわけですけれども、それだけではその改善努力は反映されないので、改善率が同じような全国一律の交付税配分でも、それを上回るような経常収支比率の改善努力が見えるように願って、県で応援できることを探しながら、公債費負担の軽減、無利子貸付、代替のようなこともしてきました。先頃、定員と人件費の給与の比較を「県・市町村長サミット」で出しました。よく言われるのはラスパイレス指数と言われる給与水準が、全国よりも高いか低いかということですが、これは割と低いんですけれども、職員数が多いかどうかということについては、あまり検証の対象にはなっていなかったんです。類似団体よりも職員数の多い分野はどこか、職員数の多い市町村はどこかという資料を出しました。

 そのような資料で刺激をしていると、奈良市の清掃現場の部署などは、やはり職員数が多いことは多いんです。それをアウトソースできると人件費は激減するわけですけれども、現場の職員の方がおられますので、なかなかすぐにできないことは理解しています。しかし、人口減で効率的行政を志向しておられる市町村が増えており、それが収支改善の競争になっていますので、奈良県も負けないようにしていただきたいと思います。県としてはそういう方法で実態を「見える化」して、よく見て努力してくださいとお願いしていますので、もしそのような形で努力されて改善してきたということであれば大変うれしいことです。

 長年の県の工夫ですが、すぐにはいかないんですけれども、本当に願うような気持ちでその資料をつくって出してきていましたので、それに反応していただいている首長さんもおられると思います。例えば、徴税率が急に上がっている市があるので、これはよくわかる指標で、経常収支比率は公債費、人件費や、あるいはもっと大きな定数をたくさん抱えておられるので、そうすぐにはいかないと思いますけれども、定数是正で改善されるところは目立って良くなると思います。本当にお願いしたい気持ちで、その分他のサービスへ回すということを、もちろん県も同じ努力をしなければいけないという気持ちで資料をつくってお願いして、かれこれ七、八年はかかっていますので、もしそれが多少でも結果に貢献できたということであれば大変うれしいことだと思いますし、そういう形で少しずつでも良くなってきていればうれしいことです。

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東アジア地方政府会合について

朝日新聞:
 11月6日から8日にかけて「東アジア地方政府会合」が開催されると思うんですが、今年の知事の意気込みや、何か思うところがあればお伺いできますか。

知事:
 議会では、このようなことをどうしてするのかと、最初の頃は言われました。奈良のゆかりは、先ほどの話の続きでもありませんが、聖徳太子は大変国際的な方でした。漢文も、外国語も達者であったということで、周りに外国語をしゃべる人がたくさんおられたように思います。そのような検証も、「日本書紀」をつくった人も唐人だというようなこともあり、当時の奈良は大変国際的な官僚といいますか、行政組織があった時代だと思います。それは国際的な唐が立派で、グローバルな帝国だったからだというふうに思います。あんなにグローバルな帝国はなかなか見ないです。それで日本、特に奈良が拠点としてすごく得をし、文明をいただいたという思いがあります。奈良がその主役の地だったということに感謝の気持ちを込めて、東アジアとの良い関係を築きたいという思いを持ち、「東アジア地方政府会合」を行ってきました。

 ヨーロッパでは、今、EUのことをいろいろ言われておりますが、ストラスブルグで欧州議会というのがあります。物事を決めるのはブリュッセルであり、欧州議会はあまり決定権がないわけですけれども、いろんな意見を反映させる各国の欧州議会の議員さんは、選挙で選ばれた人が集まって議会活動をされるということで、そこに日本の知事会が毎年招かれ、3回目ぐらいに、スピーチを行うために行ったんです。それをイタリアの市長さんや、ドイツの市長さんなどが聞いているんです。アウトリーチと言われるような手法ですけれども、各国の国境を越えて市町村長さんが集まって議論しているんです。その議論の場にも行きましたけれども、ドイツやイタリアの市長さんが、トルコ移民をどう扱うかなど今の難民問題について市町村レベルでどう受け入れるのか、どう同化させるのかということを、侃々諤々(かんかんがくがく)やっていたことがとても印象的でした。東アジアにも同じような問題が必ずあるのですが、東アジアでは意見交換をする場所がないんです。トップの外向的な関係、緊張融和の関係は外交という形しかなく、東アジアでも商売では地方政府、民間もそういう場があるんですけれども、もう少し公共的な政策について地方政府自身が話し合う場としての勉強会を、奈良が今までお世話になったということの動機を踏まえて、EUの「ローカル・オーソリティー・コングレス」を真似てできたらどうかと思いました。

 奈良のような小さな県でも、こういったことを発案しましたら、中曽根康弘さん、佐藤行雄さん、中央の外交官などから、大変良い心がけだとおっしゃっていただきました。特に、石原信雄さんにはこの「東アジア地方政府会合」に毎回来ていただいています。90歳になられていますが、今年も来ていただく予定です。そのような応援をいただき、また県で予算をいただいて展開し、継続して行えていることがうれしいということと、まだ正式発表ではありませんが、その会議を中国でやってもいいというような動きにもなっています。

 別に奈良が東アジアのストラスブルグだというわけではないんですけれども、このような勉強会を継続し、引き継いで、展開・拡散してくるとうれしいなと思います。この会合の分科会等も幾つか行われています。去年は韓国の忠清南道で、今年は静岡県で、共通関心事である農業について行います。観光については、陝西省が10月に「東アジア地方政府会合」の分科会という位置づけで会議を行ってくださいました。こういった活動は大変平和的ですので、そのようにやっていただけるところが増え、さらに広がっていけば良いと思います。続けられてよかったなと思います。こういったことには多少予算が要りますけれども、来た人は大いに勉強して帰っていただいています。

 それと同じような試みが、「東アジアサマースクール」で、日、中、韓、ベトナムなどの若い方50人ぐらいに来ていただいて、夏の2週間、日本語で講義を行います。これは随分熱気があって、これからの若い世代の方が奈良で勉強し、そのエピソードが記憶に残れば、これも東アジアの良いムードをつくることになります。小さな試みですけれども、良いムードを醸成できればと思います。政治的なアピールを行うなどといったことで確執し、物事を言い合って解決しようということでなく、また賢人会議のようなハイレベルの政治力や経済力のある人が集まって良いことを言うと、上滑りになる可能性がありますが、これは地方政府の担当者レベルでやるわけで、勉強になるということです。

 おもしろかったのは、人口が1万人にも満たない県内の町長さんと、人口2億人の河南省の副省長さんが同じテーブルで、同じテーマで意見交換をするわけです。同じマルチの会議だとそのようなこともできます。同じテーマで、うちの村ではこう、うちの町ではこうだと、いや人口2億人も抱えているからもっと大変だとか、そんな意見を言ってくれるのでちょっと感激的だったんです。そのようなフラットな会議というのは東アジアになかなかなかったので、そういった意見交換の試みとして、続いていけばうれしいなと思っています。

司会:
 その他よろしいでしょうか。
 お時間が参りましたので、これで知事定例記者会見を終了させていただきます。どうもありがとうございました。

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(発言内容については、読みやすくするために、広報広聴課で編集しています。)

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