脱炭素・水素社会の実現へ!水素の先進地域を目指すプロジェクト始動!

脱炭素・水素社会にむけた奈良県のプロジェクトとは?

脱炭素・水素社会の実現へ!水素の先進地域を目指すプロジェクト始動!

 水素の先進地域を目指す新プロジェクト始動

産業革命以降、多くの国が石炭や石油などの化石燃料からのエネルギーを利用し、経済を発展させて、豊かな社会を築いてきました一方で自然災害の激甚化が進み、気候変動に伴うリスクが顕在化する中で、脱炭素の動きが世界及び日本で加速しています。

本県の産業分野での活動も、世界や国内の動きとは無関係ではなく、世界や日本の脱炭素化に向けた一連の動きや政策を踏まえて、県内において脱炭素化に向けた環境整備を進めることは、県内企業の競争力の強化につながり、県民のくらしの向上にも資するものです。

そのため、脱炭素・水素社会の先進地域を目指す新たなプロジェクトを始動します。

 

地球温暖化・世界的な気候変動の影響とは?

年々上昇する世界の平均気温、環境省は、

世界の年平均気温は、過去100年間で0.76℃上昇

また、日本では年平均気温は、過去100年間で1.35℃も上昇

引用元:国立研究開発法人 国立環境研究所 気候変動適応情報プラットフォーム

と、グラフとともに発表しています。

地球温暖化による気候変動影響

出典:国立研究開発法人 国立環境研究所 気候変動適応情報プラットフォーム


2021年8月9日に発表された、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第1作業部会の第6次評価報告書(気候変動2021自然科学的根拠)では、

「人間活動が大気・海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。」
「気候システム全般にわたる最近の変化の規模と、気候システムの側面の現在の状況は、何世紀も何千年もの間、前例のなかったものである。」
引用元:全国地球温暖化防止活動推進センター

と、温暖化の原因は人間活動であると断定しています。

世界の温室効果ガス排出量

出典:「令和5年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」(環境省) 


年々上昇する世界の平均気温の動きを受けて、国連本部での世界気象機関の最新の報告書の発表(2023年7月)に際し、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した。」と記者団に語り、劇的かつ早急な気候アクションの必要性を訴えました。

世界気象機関より2023年7月の世界の平均気温の図

出典:世界気象機関


さらに、近年の気象災害の激甚化は、地球温暖化が一因とされており、今も排出され続けている温室効果ガスの増加によって、今後、豪雨災害等の更なる頻発化・激甚化などが予測されています。

 奈良県でも見られる気候変動の影響

出典:(左)奈良のソメイヨシノの開花日の平年差(1954年~2020年)(奈良地方気象台ホームページより)

(右)奈良県内アメダス1時間降水量30ミリ以上の年間観測回数(奈良地方気象台ホームページより)


これらの気象災害は奈良県も例外なく影響を受けており、県内企業からは、「今後、地球温暖化が進展する場合、食材の調達が困難になる恐れもある」とし、サプライチェーン上の影響あると懸念の声も挙がっています。地球温暖化は私たちの生活にも密接に関係する課題なのです。

 

カーボンニュートラルに向けた世界の動向

私たちが意識的に行動し、温室効果ガスの排出を減らすことで、持続可能な社会を次の世代につないでいくことができるといえます。2015年に採択されたパリ協定では、地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、世界共通の長期目標が掲げられました。

2より十分低く保つとともに(2目標)、
1.5に抑える努力を追求すること(1.5目標)
今世紀後半に温室効果ガスの人為的な発生源による排出量と
吸収源による除去量との間の均衡を達成すること
引用元:環境省 脱炭素ポータル


パリ協定を受けて、達成期限を設定したカーボンニュートラルを表明する国・地域は158(2023年5月時点)に達しており、世界のGDPの約90%に及んでいます。

カーボンニュートラル宣言状況とCO2排出量に占める割合の図

カーボンニュートラル表明国の図

(1)Climate Ambition Allianceへの参加国、(2)国連への長期戦略の提出による2050年CN表明国、2021年4月の気候サミット・COP26等における2050年CN表明国等をカウントし、経済産業省作成(2023年5月時点)

出典:「資源エネルギー庁「G7」で議論された、エネルギーと環境のこれからとは?」(資源エネルギー庁)

 

カーボンニュートラルに向けた日本と奈良県の目標

日本においても積極的に脱炭素化に向けた取組をしています。2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。そして、2021年3月、奈良県も、2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言しました。

2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを示したイラスト

※「排出を全体としてゼロ」というのは、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」 から、植林、森林管理などによる「吸収量」 を差し引いて、合計を実質的にゼロにすることを意味しています

出典:環境省 脱炭素ポータル 

脱炭素化に向けた取組を進めている企業

企業においても、国際的な様々な動きを見据えながら、気候変動対策の視点を織り込んだ経営(脱炭素経営)を目指す動きが出ています。特に、日本企業は世界的にみても脱炭素化に向けた取組を積極的に進めています。

脱炭素経営に向けた取組の広がりを説明した図

出典:グリーン・バリューチェーンプラットフォーム脱炭素経営に向けた取組の広がり


また、県内企業の声として、「サプライチェーン上や顧客企業からもグリーンエネルギーの確保が求められ、対応が必要」と、脱炭素の観点を取り入れながら企業活動をする必要が出てきています。

統計データによると、脱炭素方針への準拠を求められている企業(2022年度)は、国内の顧客企業からは17.0%、海外の顧客企業からは12.2%となっています。主な業種別では、自動車を含む輸送機器および情報通信機械で準拠を求められる比率が比較的高く、特に自動車・輸送機器においては45.2%と他業種と比べて突出して割合が高くなっています。

国内と海外の顧客からの脱炭素化の方針への準拠

 出典:2022年度|ジェトロ海外ビジネス調査 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査

 

脱炭素化に向けた日本政府の方針

脱炭素化に向け日本政府は、

カーボンニュートラルを宣言する国・地域が増加(GDPベースで9割以上)し、排出削減と経済成長をともに実現するGXに向けた長期的かつ大規模な投資競争が激化しています。GXに向けた取組の成否が、企業・国家の競争力に直結する時代となっています。
さらに、ロシアによるウクライナ侵略が発生し、日本のエネルギー安全保障上の課題を再認識しなければならない状況となっています。
引用元:2023. 2.10 閣議決定「GX実現に向けた基本方針」

うした中で、政府は、GXの実現に向けて、主に以下の取組を進めています。
・分野別投資戦略により、 GX経済移行債を活用した「投資促進策」と、市場創造に向けた規制・制度の見通しを具体化(先行5カ年アクションプラン)し、高い予見性の下、官民GX投資の実行フェーズへ移行
・成長志向型カーボンプライシング(GXリーグの活動)や、GX経済移行債により更に普及・拡大させるトランジション・ファイナンスも組み合わせ、アジアへのGX展開や中小企業等のGX、スタートアップの成長を加速させるとともに、良質な雇用を創出し、公正な移行も進めていく
引用元:2023.12.15 第10回GX実行会議 資料1「我が国のグリーントランスフォーメーション実現に向けて」

としており、政府としても脱炭素化に向けた取組が非常に重要な政策として位置づけていることが分かります。

 

再生可能エネルギーの活用!奈良県が取り組む脱炭素・水素社会実現に向けたプロジェクトとは?

奈良県でも脱炭素社会の実現を目指し様々な取組を推進しています。特に「太陽光」と「水素」は、内陸であることや送電線への接続の制約などから、多様な再生可能エネルギー導入するのが困難な奈良県にとって非常に重要で活用を推進していくべきエネルギー源です。

奈良県におけるこれらの取組は、例えば、再生可能エネルギー100%の電力で事業活動をすることを目指す企業や、脱炭素化に対応する必要がある県内企業等の需要に応えるなど、脱炭素社会の実現とともに産業の発展にも資することにつながります。

 

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奈良県が取り組む水素活用とは?

奈良県は、自然に恵まれ、緑豊かな山に囲まれた土地ですが、内陸であることや送電線への接続の制約から水力・風力発電の導入には限界があり、「電力をつくる」点において少し不利な地形となっています。このため、奈良県再生可能エネルギー発電設備の導入状況は、太陽光発電以外は全国ほど伸びていません。


そこで奈良県が注目している再生可能エネルギーが「太陽光」と「水素」。二つのエネルギーを安定的に生産・供給する体制を築くことで、世界的な課題である脱炭素に取り組むとともに、奈良県の緑豊かな自然を守りながら持続的に発展できる社会づくりを目指しています。

 

豆知識ー再生可能エネルギーってなに??ー

再生可能エネルギーは、「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」で「エネルギー源として永続的に利用することができると認められるもの」として、太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱その他の自然界に存する熱、バイオマスが規定されています。再生可能エネルギーは、資源が枯渇せず繰り返し使え、発電時や熱利用時に地球温暖化の原因となる二酸化炭素をほとんど排出しない優れたエネルギーです。

引用元:九州経済産業局

 

FCVでも活用!水素エネルギーの魅力とは?

現在、奈良県が推進しているエネルギーのひとつが、FCV(燃料電池自動車)でも活用されている水素エネルギー。水素エネルギーは、水をはじめとする地球上の多様な資源からつくることができ利用してもCO2を排出しないエネルギーです。また様々な状態で貯蔵・輸送することができます。

これらの特性から、水素は、温暖化対策に貢献しながらエネルギー供給の安定化も図ることが可能です。また、多くの化石エネルギーを輸入している日本にとって、国内の再生可能エネルギーを使って水素を製造することは、エネルギーの安全保障の観点からも重要です。

奈良県が水素エネルギーに注目する3つのポイント

水素エネルギーが環境に優しいという点はもちろんですが、奈良県が特に注目している点は「作ったエネルギーを貯めることができる」という点です。貯蔵に適している水素エネルギーは、災害等で大規模な停電が起きた時には、太陽光発電で作り貯めておいた水素を使って電気や熱を取り出したりするなど、既存の電力系統に依存しない、自立・分散型の災害に強いエネルギー源としての活用も期待されています。

自立・分散型の災害に強い水素エネルギー

出典:岩手県「いわて水素エネルギーのススメ」令和元年6月作成

 

水素活用を推進する国内外の動向とは?

水素の活用は世界的にも関心度が高く世界各国でも水素社会の到来を見据え大胆な水素戦略が打ち出されています。

EU:2022年7月及び9月に、官民合わせて264億ユーロ(約3.51兆円)規模の水素分野における製造から利用まで包括的に支援
・アメリカ:超党派インフラ法(2021年11月)により、クリーン水素関連プロジェクトに対し、5年間で95億ドル(約1.24兆円)を投資。また、インフレ抑制法(2022年8月)により、クリーン水素製造に対し10年間の税額控除とともに、3,690億ドル(約48兆円)をエネルギー・機構分野に投じる。
出典:第17回 産業構造審議会 グリーンイノベーションプロジェクト部会 エネルギー構造転換分野ワーキンググループ「水素を取り巻く国内外情勢と水素政策の現状について」令和5年8月23日


日本政府も、水素基本戦略において、今後15年間で官民合わせて15兆円を超える水素関連の投資を行うとしており、今後大きな市場形成が見込まれます。また、令和6年度予算において、既存の化石燃料と水素の価格差を補う「値差支援」に、5年間で4,600億円、15年間で3兆円を投じるとともに、通常国会で提出されている水素社会推進法案では、必要な制度整備について規定することととしており、今後、水素の流通量が増大することが見込まれます。

国内企業でも高まる水素需要

現時点では、県内での水素需要は大きくないのが実情です。それは、(1)水素の需要家であるユーザー、(2)水素供給事業者、(3)FCV等のメーカーが、それぞれ、十分な供給体制あるいは需要を見込めないことから導入・投資計画を立てづらく、コストも下がりにくいという3すくみの状態となってしまっていることによるものです。

一方、国内外の動向などにより、国内の様々な企業から、水素に対する潜在的な需要の声があります。奈良県でもこのような動きをとらえて、官民連携で水素需要の塊を創り出す取組を進めています。再生可能エネルギーを供給・活用できる体制を築くことで、県内の産業発展に大きく資することができます。


  • 水素製造利活用に関する事業者の声

水素製造利活用に関する事業者の声を画像化

 

脱炭素・水素社会の実現を加速する取り組みカーボンニュートラルを目指して~

奈良県でも脱炭素・水素社会の実現を目指し、様々な取組を推進しています。特に「太陽光」と「水素」は、内陸県であることや、送電線への接続の制約などから、多様な再生可能エネルギーを導入するのが困難な奈良県にとって、非常に重要で活用を推進していくべきエネルギー源です。

奈良県では、2030年に向け、太陽光発電施設で発電した電気で水素を製造し、それらの水素エネルギーを公共交通や産業分野などでの利用、災害時に活用するビジョンを描いています。

2030年に向けて水素エネルギーを活用するビジョン図

 

そして、今後、水素社会実現に向けた新たなプロジェクトとして、以下のとおり、水素利活用に本格的に着手するとともに、「水素基本計画」を策定し、取組を推進していきます。

これらの取組は、例えば、再生可能エネルギー100%の電力で事業活動をすることを目指す企業や、脱炭素化に対応する必要がある県内企業等と連携することで、脱炭素・水素社会の実現とともに産業の発展にも資することにつながります。

水素基本計画を画像化したもの

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奈良県が取り組む太陽光活用とは?

日本は、エネルギーの多くを海外から輸入しています。2021年度の日本のエネルギー自給率は13.3%と、他のOECD諸国と比べても低い水準です。また、日本で供給されるエネルギーは、石油・石炭・天然ガス(LNG)などの化石燃料に大きく依存しており、特に原油は中東地域に90%以上に依存しています。

エネルギーの多くを海外から輸入していると、万が一、紛争などが起きた際に輸入価格が大幅に上がる可能性があり、日本国内のエネルギー不足を引き起こしてしまいます。


  • 主要国の一次エネルギー自給率比較(2021年)

2021年主要国の一次エネルギー自給率比較のグラフ図

日本の一次エネルギー供給構成グラフ図と日本の原油燃料輸入先のグラフ図

出典:資源エネルギー庁 日本のエネルギー 2023年度版「エネルギーの今を知る10の質問」2024年2月発行

 

POINTー燃料価格が電気料金やエネルギーコストに影響!ー

2021年以降、ウクライナ情勢をめぐる地政学的緊張の高まりなど受けて、液化天然ガス(LNG)や原油、石炭などの価格が大きく上昇しています。

国際原油価格、日本のLNG輸入価格、日本の石炭輸入価格

出典:資源エネルギー庁 日本のエネルギー 2023年度版「エネルギーの今を知る10の質問」2024年2月発行

 

化石燃料から再生可能エネルギーの転換の必要性

例えば、世界の原油埋蔵量は、中東が約半分、南北アメリカが約3割を占めています。

このように、供給量や価格変動が海外の他律的要因で決まることが多い化石燃料に対し、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス等の再生可能エネルギーは地球のどこにでも存在し、国内でも生産することができます。そのため、海外の他律的要因に左右されにくく、有望かつ重要な国産エネルギー源となっています。

2020年末の世界の原油確認埋蔵量のグラフ図

出典:資源エネルギー庁  令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)


▼脱炭素・水素社会にむけた奈良県の取り組みはこちら

脱炭素・水素社会の実現へ!水素の先進地域を目指すプロジェクト始動!

 

温室効果ガスと再生可能エネルギーの関係性

また、再生可能エネルギーはつくる時に温室効果ガスを排出しないことから、外国へのエネルギー依存への脱却だけではなく、脱炭素社会の実現においても重要なエネルギーとして活用することが求められています。


日本の温室効果ガスの排出量の約85%はエネルギー起源の二酸化炭素です。そのため、温室効果ガスの排出量を削減するには、エネルギー部門の脱炭素化が必要となります。そして、エネルギー部門の脱炭素化を進めるためには、再生可能エネルギーの導入量を増やす必要があります。

2021年度の日本の温室効果ガス排出量のグラフ図

出典:資源エネルギー庁 日本のエネルギー 2023年度版「エネルギーの今を知る10の質問」2024年2月発行


日本政府は、再生可能エネルギーの導入目標を定め、また目標達成に向け、2012年7月に「再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)」を創設し、再生可能エネルギーで発電した電気を、電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度を設けました。FIT制度の創設以降、太陽光発電を中心に導入が広まっています。


  • 国の再生可能エネルギー導入目標と現状

国の再生可能エネルギー導入目標と現状の棒グラフ

出典:「今後の再生可能エネルギー政策について」(資源エネルギー庁)


また、奈良県でも、再生可能エネルギーの導入目標を定め、導入を促進しています。

  • 奈良県の再生可能エネルギー導入目標と現状

奈良県の再生可能エネルギー導入目標と現状の棒グラフ

出典:「第4次奈良県エネルギービジョン」(令和4年3月 奈良県)

 

再生可能エネルギー活用する上での課題

再生可能エネルギー由来の電気の導入が広がる一方で、その活用には大きな課題もあります。それは、「電気は安く大量に貯めることができない」という点です。

電力の送電網内では、電気を使う量と発電する量(需要と供給)のバランスを常にとり続けるように調整することが重要になります(これを「同時同量の原則」といいます)。このバランスが崩れてしまうと電気の品質に当たる周波数に乱れが生じ、例えば、供給が需要を上回ると周波数が上がり、その逆の場合は周波数が下がります。周波数がぶれてしまうと、電気の供給を正常に行うことができなくなり、安全装置の発動によって発電所が停止してしまい、最悪の場合は大規模停電が発生してしまいます。

東日本は周波数を50Hzに、西日本は60Hzに維持

出典:資源エネルギー庁 なるほどグリッド

出典:資源エネルギー庁 スペシャルコンテンツ


また、電気の流れというのは、例えるならば人間の血液をイメージすると分かりやすいかもしれません。

人間の血液が大動脈から毛細血管を伝わって、全身の細胞まで行き渡るように、電気も日本全国に血管のように張り巡らされた電力ネットワーク(電力系統)によって運ばれます。人間の毛細血管のように、人口密度の低い地域の送電線の容量は少ないのが現状です。


しかし、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)の創設以降、人口密度の低い地域に多くの太陽光発電施設が立地し、送電線の容量が足りない地域も生じています。本県でも新たな発電施設の送電線への接続を制限する地域が存在しています。

3つの電力系統(基幹系統、ローカル系統、配電系統)

出典:電力広域的運営推進機関 かいせつ電力ネットワーク

 

太陽光と水素が担う奈良県の再生可能エネルギー

本県の南部東部地域には再生可能エネルギーである水力発電のポテンシャルがありますが、送電網への接続制限のために新たな発電施設を立地することができない状況があります。また、地勢的要件から風力発電はポテンシャルが見込めません。そこで、本県で再生可能エネルギーの導入を進めるには太陽光発電施設を軸とする必要があります。


太陽光発電は天候により発電量が左右されるため、電気の出力を調整することができません。このため、晴天時で発電量が増加している一方で電力需要が少ない時は、太陽光発電施設を送電網から切り離して出力を制御することになります。なお、2022年度における再生可能エネルギーの出力制御量は、九州電力管内が日本全体の78%を占めています。

再エネ発電量と出力制御の関係

出典:資源エネルギー庁 令和元年度エネルギーに関する年次報告

 

出力制御については、政府は

「出力制御の低減に向けた新たな対策パッケージ」として、需要面(出力制御時間帯の需要家の行動変容・再エネ利用の促進)、供給面(再エネが優先的に活用される仕組みを措置)、系統増強等で再エネ導入拡大・レジリエンス強化の環境整備など、切れ目のない対策を講じること

としています。また、再生可能エネルギーの導入拡大に向けて調整力等として活用できる水素製造装置の導入支援をするとしており、水素の特性である、再生可能エネルギーを「貯める」力を活かすことが期待されています。

出典:資源エネルギー庁 令和5年12月19日 出力制御パッケージについて

 

再生可能エネルギーの活用!奈良県が取り組む脱炭素・水素社会実現に向けたプロジェクトとは?

奈良県でも脱炭素社会の実現を目指し様々な取組を推進しています。特に「太陽光」と「水素」は、内陸県であることや、送電線への接続の制約などから、多様な再生可能エネルギーを導入するのが困難な奈良県にとって、非常に重要で活用を推進していくべきエネルギー源です。

奈良県におけるこれらの取組は、例えば、再生可能エネルギー100%の電力で事業活動をすることを目指す企業や、脱炭素化に対応する必要がある県内企業等と連携することで、脱炭素社会の実現とともに産業の発展にも資することにつながります。

 

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