意見書第10号

意見書第10号

   軽度外傷性脳損傷に関わる周知及び労災認定基準の改正などを要請する意見書

 軽度外傷性脳損傷は、交通事故や高所からの転落、転倒、スポーツ外傷などにより、頭部に衝撃を受け、脳内の情報伝達を担う「軸索」と呼ばれる神経繊維が断裂するなどして発症する病気である。
 この病気はMRIなどの画像検査だけでは異常が見つかりにくいため、労災や自賠責保険の補償対象にならないケースが多く、働けない場合には経済的に追い込まれるケースもあるのが現状である。
 主な症状は、高次脳機能障害による記憶力・理解力・注意力の低下をはじめ、てんかんなどの意識障害、半身麻痺、視野が狭くなる、におい・味がわからなくなるなどの多発性脳神経麻痺、尿失禁など複雑かつ多様であるが、本人や家族、周囲の人たちもこの病気を知らないために誤解が生じ、職場や学校において理解されずに、悩み、苦しんでいるケースが多々ある。
 しかし、世界保健機関(WHO)において定義づけがなされており、他覚的・体系的な神経学的検査及び神経各科の裏付け検査を実施すれば、後からでも外傷性脳損傷と診断することができると言われている。
 また、交通事故やスポーツ外傷により子どもたちが軽度外傷性脳損傷を発症する可能性もあり、国民をはじめ教育機関への啓発・周知が重要と考える。
 よって、国におかれては、現状を踏まえて次の事項について適切な措置を講じるよう強く要望する。

1 業務上の災害または通勤災害により軽度外傷性脳損傷となり働けない場合、労災の障害(補償)年金などが受給できるよう、労災認定基準を改正すること。
2 労災認定基準の改正に当たっては、他覚的・体系的な神経学的検査法など、画像診断にかわる軽度外傷性脳損傷の判定方法を導入すること。
3 軽度外傷性脳損傷について、国民をはじめ教育機関への啓発・周知を図ること。 

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。

 平成26年7月4日
         奈 良 県 議 会

(提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
内閣官房長官
文部科学大臣
厚生労働大臣