最優秀賞

 なりたい自分

                              智辯学園奈良カレッジ中学部 2年 行広 奏凜

 私が中学1年生の時の話をします。
 私はある友達と小さなケンカをしてしまいました。私はつい意地を張ってしまい、友達とずっとしゃべらないでおこうと思ってしまいました。そして、まだケンカ中だったある日の夜、母に友達とのケンカについて色々ぐちを言いました。友達の悪口も言ってしまいました。すると、母は
「友達の悪口ばっかり言って、意地ばっかり張ってたら、何も前に進めへんで。」
と言いました。けれど私は、それを分かっているけどついつい意地を張ってしまうので、
「そんな事ぐらい分かってるよ。」
と色々相談にのってくれた母に、逆に怒ってしまいました。その時はイライラする気持ちをぶつけてしまったのと、私は母から
「かわいそうだね。」
と言ってほしかったんだと思います。けれど、母は私が期待するような言葉を何も言ってくれなかったので、母にきつくあたってしまいました。
 それから少し間をおいて、母は
「そんなに自分の友達を悪く言って、お母さんに味方になってほしいんか。」
と言いました。私は、母の言っている事が図星だったので、少し恥ずかしくなりました。
それでも、まだすねて意地を張っている私を見て、母は静かに
「なりたい自分になりなさい。」
と言って、
「この言葉の意味をしっかり考えなさい。」
と付け加えました。
 「なりたい自分になりなさい。」私はこの言葉を聞いて、今まで自分が友達とのケンカに変な意地を張ってしまった事、友達の悪口を言ってしまった事、友達を悪者にして母に自分の味方になってほしいと思った事などの色々な事が言葉にできないぐらい恥ずかしくなり、人として最低な事をしたなと思いました。
 次に、それでは、「なりたい自分」とは何だろうと考えました。多くの人から信頼されるようになりたい、家事がもっといっぱいできるようになりたい、などとたくさんでてきました。その中でもやはり私は「どんな時でも自分がこうしたいと思った事を、素直にできる自分」になりたいと思いました。
 私が中学1年生の時、学校から帰る電車につえを持ったおばあさんが乗ってきました。座席は満席なのでそのおばあさんは座れなくて、また座っている周りの大人達はおばあさんに気づいていないふりをしていました。その時、私の心の中に二人の自分がでてきました。一人は、“席をゆずってあげなよ”と言っている天使の自分、もう一人は、”部活帰りで疲れているんだから気づいていないふりをしなよ”と言っている悪魔の自分。今までの私だったら間違いなく悪魔の意見に賛成していたでしょう。けれど、今の私は違います。やはり悪魔の意見に賛成したいなと思ったけれど、その時にあの母の言葉を思いだし、なりたい自分はどっちだろうと考えた時、天使の自分がおばあさんに席をゆずりました。すると、おばあさんは優しい顔で
「ありがとう。」
と言ってくれました。私はおばあさんに喜んでもらいすごく嬉しいという気持ちと、自分のやりたいようにする事がひとつできとてもすがすがしい気持ちになりました。
 そして、この日の夜、あまりの嬉しさに母にこの日の出来事を長々と話しました。母は、
「あの言葉がよく理解できたんだね。本当に良かったね。」
と言って何回も何回もうなずき、一緒に喜び、ほめてくれました。母の顔も前、私のぐちを聞いていた時よりすごくさわやかで、ずっとニコニコ笑っていました。
 私はその時の電車であった経験からの、あのすがすがしい気持ちを絶対に忘れることができません。
 私は「なりたい自分になりなさい」というこの言葉をいつでも心の中で大切にもちながら、いつも「なりたい自分」をしっかり見つめていきたいと思います。
 そして、きっと、なりたい大人になります。