最優秀賞

最初の一歩

天理市立福住中学校 3年 今西 春奈

 私の通う中学校は、全校生徒23名というとても小さな学校です。私たちは保育所から、ずっと同じメンバーで過ごしてきました。1学年1クラス、7名で、クラス替えもなく新しく友達をつくるという経験をしたことがありません。
 中学生になって、知らない人と交流する機会が増えました。部活動で他校と試合をしたり、職場体験をしたりして初めて、自分が他の人とうまくコミュニケーションがとれないということに気づき、ショックを受けました。自分から積極的に話しかけられないし、せっかく声をかけても、、緊張して、うまく話せないのです。私たちはずっと同じメンバーで過ごしてきたので、以心伝心で心が通じ合います。家族といるより長い間一緒にいるから、息もぴったりです。
 でも、それでいいのだろうか。高校進学を控えて、私は心配になりました。高校に行ったら、社会に出たら・・・。知らない人に囲まれて一からコミュニケーションをとって、人間関係を築かなければなりません。
 大規模校でクラス替えが毎年ある人は、小さい頃から何度も人間関係を築き直してきている分、コミュニケーション力も高いように思います。そう思った出来事があります。
 私はバレー部に入っているのですが、部員数が足りず、昨年の夏から今年の春まで、他校と合同チームを組んでいました。初めてのことで、私たちは、他校の人とうまく話せるだろうか、仲良くなれるのだろうかと、心配ばかりしていました。
 ところが、相手校の人たちは、顔合わせの時から何かと私たちをリードしてくれました。質問してくれたり、話題を投げかけてくれたりと、初対面の人と話すことに慣れている様子で、私は彼女たちをとてもうらやましく思いました。私たちは、質問に答えるのが精一杯で、彼女たちが言う冗談に微笑むことしかできなかったのです。大きな世界で、競争しながらたくましく人間関係を築いてきた人たちは、コミュニケーション力という大きな手段を身につけていると思います。
 一方、大自然の中で、お互いによくわかり合える仲間と、レギュラー争いをすることもなく平和に暮らしてきた私たちは、恵まれていると思っていましたが、コミュニケーション力という点では、はるかに遅れていたのです。
 でも、そんな私が少し変われる出来事がありました。昨年秋に市が主催する子どもフォーラムという会議に、学校代表で参加することになりました。市内の小中学校の子どもやPTA代表の大人たちで意見を交換し合って考えようという趣旨で、毎年開かれているものです。私は、書いた作文がたまたま選ばれて出席することになったのでした。 顔合わせの時は知らない人に囲まれてとても緊張しましたが、こんな機会は滅多にないと自分に言い聞かせ思い切って話しかけてみました。すると、なんとその日のうちに友達ができました。
 「カミナリ親父はどこいった?」という話題で、最近子どものことを考えて真剣に叱ってくれる大人がいなくなったということについて話し合いました。私は、自分たちのことを真剣に見てくれる人は必要だ、叱られるのは嫌だけど、叱られて気づくこともたくさんあるという意見を自分の言葉で一生懸命伝えました。そのときはもう無我夢中でした。終わってから参加した人たちに話を聞くと、みんな緊張して一杯一杯だったと言っていたので、自分だけじゃなかったんだと少し安心しました。そして、自分に少し自信が持てました。
 「一声かける」「話の口火を切る」というのは、大きな勇気がいるものです。知らない人の中だとよけいそうでしょう。
 でも、自分の殻に閉じこもっていないで、勇気をもって外に出ないといけないと思います。思いきって最初の一歩を踏み出しましょう。たとえ小さな一歩でも、続ければ大きな歩みとなるはずです。自分を変える大きなチャンスへの第一歩を、あなたも踏み出してみませんか。