優良賞3

Never too late~祖母から学んだこと~

智辯学園中学校 3年 奥出 壮ノ介

 祖母が去年の秋、ピアノを習いはじめました。祖母は今、六十七歳です。今までにピアノを弾いたことはありません。もちろん楽譜もよめません。そんな祖母がピアノをはじめると言った時、僕もふくめてまわりの人はみんな、いつまで続くかなとかどうせひまつぶし程度だろうと思っていました。
 僕と妹はピアノを習っています。発表会にはいつも祖母が見に来てくれていました。そんな僕と妹を見て祖母もピアノを弾いてみたいと思うようになったそうです。そしてできればいつか孫たちと連弾してみたいというのが夢になり、祖母は僕と妹が習っているピアノの先生の所に通いはじめました。僕は、連弾できるようになるには一体どのくらいかかるんだろうと思っていました。しかし祖母は習いはじめてから毎日一時間、ピアノの練習を続けました。毎日毎日休まずに。それがどんなに大変なことかピアノを習っていた僕にはよくわかります。そして数ヶ月後には、ピアノの先生から春の発表会で連弾してみましょうかと言ってもらえるくらいにまで上達したのです。こんなに早く連弾が実現するなんて誰も思っていなかったのでびっくりしました。
 It’s never too late to start.という英語のことわざがあります。はじめるのに遅いということはないという意味です。祖母の新しいチャレンジはまさしくこの言葉どおりのことでした。祖母は年齢や経験がないことを理由にチャレンジをあきらめたりしませんでした。そしてさらにすばらしいことは、はじめたら目標に向かって努力をしたということです。祖母と僕と妹は、今年の春のピアノの発表会で連弾をすることができました。僕は祖母と連弾をするなんて少し前なら考えもしていなかったことなので、こんな貴重な経験ができたのも祖母のチャレンジのおかげだと思い感謝しています。祖母と連弾できたことは、僕の一生の思い出となりました。
 祖母は今、新聞配達の仕事をしながらピアノの他にスイミングやフラダンスなどの習い事をして毎日忙しく、そして楽しそうに生き生きと生活しています。どれも六十歳をすぎてはじめたことばかりです。祖母はやりたいと思ったことは、今からでも遅くないとチャレンジしてきました。僕はそんな祖母を誇らしく思うと同時に僕も負けていられないなという気持ちにされられます。僕は何かを始める前にすぐ無理と言ってしまうことがよくあります。小学校時代、生徒会長への立候補をすすめられた時、当選するのは無理だと思い断りました。サッカーで父から「リフティング百回」と言われた時にも、出来るわけがないと努力もしませんでした。よく考えるととても情けないことです。何事もやってみないとわからないのに、始める前からあきらめていては何もできるわけがありません。祖母を見ていてそのことがとても恥ずかしくなりました。僕はこれからチャレンジする前に無理とあきらめるのはやめようと思います。まずは来年のピアノの発表会で、前から大好きだった曲だけれど、僕の実力では無理だとあきらめていた曲にチャレンジしようと思います。今からかなりの努力が必要だと思いますが、祖母に負けないように練習しようと思います。
 いくつになってもチャレンジ精神を持つこと。チャレンジしてみることで新しい未来が開け、人生が豊かになるということ。祖母を間近で見ていて、祖母と連弾してみて僕はたくさんのことを祖母から学びました。これから先、僕の人生で大きなチャレンジが目の前にやってきたら、その時は、祖母のことを思い出そうと思います。きっと祖母が僕の背中を押してくれることでしょう。
 来年のピアノの発表会でも祖母と一緒に連弾するのが今からとても楽しみです。