優良賞7

僕の祖父

橿原市立橿原中学校 3年 橋野 翔哉

 ぼくの祖父が、今年の二月の末に亡くなりました。それは元気だった祖父との別れで、突然の出来事でした。
 祖父とぼくは、よく一緒に旅行に行きました。北は北海道、南は沖縄まで、祖父が行ったことのない場所を選んで行きました。
 祖父は、定年退職するまで交通会社に勤めていたので、日本全国の観光地に行ったことがあると話をしていましたが、旅行に行くことが大好きで、祖父との話をする中で、「次はどこに行こうか。」ということをいつも口にしていました。また、旅行のチラシを見ることも好きで、「ここは行った。ここはまだ行っていない。」など、旅行の場所の話をすると、自分が仕事をしていた時の話なども、続けてぼくに話をしてくれていました。
 最近の祖父は、少し認知症がありました。
 でも、ぼくと一緒の旅先では、特に変わらず楽しそうに時間を過ごしていました。
 母が時々祖父は、記憶がすっぽりとぬけ落ちてしまうことがあると言っていましたが、ぼくにはいつもおだやかな顔が印象的な祖父でした。そんな祖父が、本当は今年も一緒に旅行に行くために、準備をしてくれていたことを最近聞きました。今年は、ぼくが中学三年の受験生なので、来年に行くことになっていたかもしれないけれど、考えてくれていました。
 なぜ突然亡くなった祖父が、旅行の準備をしていたとわかったのか理由があります。それは、認知症になっていた祖父が、たくさん書き残していたノートのメモからわかったことでした。祖父が、出かける時にいつも持っていたリュックサックに、小さなメモノートが数冊入っていて、たくさんの事がその中に書かれていました。ぼくの母が、それを見つけて教えてくれました。そのノートの中には、日にち、天気、テレビのニュース、歌の歌詞、自分の好きな本のこと、田んぼのこと、盆さいのこと、祖母の名前、母、父、ぼく、いとこなど祖父と関係のあるたくさんの人との出来事が書かれていました。その中に、今年の夏に旅行に行くために三年ほど前から計画をたてているメモ書きがありました。「27年夏に、妻、子供、孫と旅行。」大きく書いてありました。祖父は、忘れないように、何度も何度も旅行について書いていて、線を引いたり、丸をつけたりしていました。「今年の夏まで、残すところ後何ヶ月」など、祖父の楽しみにしてくれていた気持ちを感じました。ぼくは、それを目にして、突然に亡くなってしまった祖父の気持ちを知ることが今回できました。
 ぼく自身は、あまり文を作るのが好きではありません。どちらかと言えば、大の苦手です。でも祖父の書いてあったノートを目にしてみると、少しでも自分の考えていることや感じたこと、思っていることを文字にして残しておくのは、大事なことに思えました。祖父の残したノートには、その時々の祖父の気持ちがたくさん書かれていて、祖父の思いが読んだ人に伝わっていました。ぼくも、書くことが苦手でも、何かを書き残すという気持ちを、もう少し大切に考えてみようと思いました。
 祖父との突然の別れは、とても悲しいことでしたが、ノートのおかげで、旅行のことを考えてくれていた祖父の思いも知ることができたし、文字にして人に気持ちを伝える大切さもぼくは最後に祖父に教えられたと感じました。