平成28年11月22日(火)知事定例記者会見

司会:
 おはようございます。
 それでは、これから知事定例記者会見を始めさせていただきます。
 本日の発表案件はございませんので、ご質問ある方はよろしくお願いいたします。


質疑応答


地方消費税に関する国への要望について

時事通信:
 前回の知事定例記者会見の後に東京に行かれて、地方消費税の論議をされたと思うんですけれども、どんな様子だったでしょうか。

知事:
 まず、お会いした人ですけれども、自由民主党税制調査会の、いわゆるインナーの先生方に会っていただきました。税制調査会会長の宮澤さん、それから前会長の野田毅さん、それから小委員長の額賀さん、小委員長代理の林芳正さんの4人と、高市総務大臣はご所管ですのでお会いさせていただきました。前回の知事定例記者会見でも奈良県の主張をご紹介しましたが、その内容をご説明申し上げました。奈良県の言っている意味は、理解していただいているように思います。全国知事会が言ってきました人口基準の引き上げを基本にするということです。地方消費税の清算基準は、消費の統計があれば一目瞭然なんですけれども、消費の統計がない中、サービスと物販の販売統計に依っているという、基本的に脆弱な清算基準が、真実の消費者の消費と乖離しているのではないかということが奈良県の主張です。奈良県が得か損かということもありますけれども、地方消費税の存立にかかわる議論をしていることになるわけですので、その点はよく理解していただきました。

 奈良県の主張は、人口基準を引き上げるという全国知事会の意見を受けて、具体的に展開するとこういうことになるということを、通販、家電など、色々な点で展開したわけで、あとは、具体的な決着をどうするかというところになりますが、どのようにされるかはまだわかりません。具体的な決着については事務的な困難がいろいろとあるように思いますが、言っていることがおかしいということは誰もおっしゃらず、「もっとも」だということなのですが、税制というのは「もっとも」であることでも、なかなか具体的にできない場合が多いので、これからどのように決着するのかはわかりません。

 ただ、社会保障財源として消費税を上げるということを前回言われました。その配分の清算基準が、実際に消費した地、実際に消費された個人が夜間住んでおられる場所に配分されるということが基本であるということは誰もが認めているわけですから、その計算の仕方が真実と乖離しているのではないかという主張を繰り返し行っているわけなので、それには反論できないわけなんです。あとは、どのようにすればいいかという点についての技術論になるわけなんですが、すると今の配分基準が変わるということになりますので、今までの配分基準はどうだったのかということが継続の話であり、事務的には抵抗があるように聞いていますけれども、政治的な真実、日本の場合はより良い地方消費税の配分・清算というやり方を求めて、今、訴え続けているわけですので、理解していただけるのではないかと思います。

 要望先は、只今申し上げた5人ですが、主張の内容については理解していただき、ご賛同いただいたと思います。清算基準の内容の細かい点は事務的なことのように思っておられたようですが、大事な基準ですので、要職の方々は奈良県の持っていった資料内容についてよく聞いていただきました。具体的に聞いていただきましたので、その点はありがたかったと思っています。

時事通信:
 高市総務大臣も含めて賛同されたということですか。

知事:
 奈良県の主張については、そのように思います。ただ、事務的にどうなのかなという抵抗感が、事務方にあるような感じがします。

時事通信:
 事務的な抵抗感というのは、どういう理由でしょうか。

知事:
 現在の配分基準が変わることの説明をどうされるのかというのは事務方の責任になりますので、役人の立場に立つと今までの配分が悪かったとも言えないでしょうから、そのあたりのご苦労があるのかなという感じがします。それはこちらの仕事ではないと言いたいですが。

時事通信:
 スケジュール感についての話は、やりとりの中では出たのでしょうか。

知事:
 今度の税制改正で決着してください、理屈の通っていることはやってくださいということがお願いです。それがどうなるかが、奈良県にとっての今年の税制改正の焦点だと思います。全ての自治体にとってみても、清算基準の中身が具体的にわからないままきているのを、こういう清算基準ではおかしいのではないかと奈良県が根掘り葉掘り言い続けてきたわけです。言ってみればこれまではお任せ清算だったわけなんです。税制調査会の幹部の方々も、奈良県の主張はわかるとおっしゃっているということは、具体的な清算についてはあまりご存知ではなかったのではないかという印象もありますので、それは、この具体的な清算で額が随分変わるわけなんですけれども、予算の配分とは違うわけなんです。税制上の配分ですので、理屈が立たないと消費者・納税者は納得いかないでしょうということが奈良県の主張の強いところだと思っていますので、予算の配分の陳情と違い、税制の理屈の合わないところを是正してくださいという陳情ですから、気持ちとしてはとても強いものがあります。それで、理屈を言っているわけですから、理屈にかなうところがあれば即刻判断してくださいと訴えています。

 事務的には、今まで言ってきたことも正しい、変えることも正しければ、どのように説明するのかという悩みがおありになるような感じはしますが、それはこちらで悩むことではありませんと言いたい。事務方はそういう悩みは今まで外にはあまり言っておられなかったような気もしますが、その辺はよくわかりません。奈良県の主張はそういう理屈の主張で、予算配分の陳情ではなく、税制の理屈立ての主張だということを繰り返し言っているわけですので、それには税制調査会のインナーというのは最高の方々ですから、さすがによく理解されています。

奈良新聞:
 そのお願いというのは、今度の税制改正の時というお願いの仕方をしたわけですか。

知事:
 そうです、税制は毎年税制改正大綱で決められ、そこで明確にすると法律が変わります。この場合は清算基準が具体的に変わりますので、それを次期税制改正でお願いするということです。

奈良新聞:
 要望の際も今度の税制改正でお願いしたいということをおっしゃったのでしょうか。

知事:
 そういうことです。そうでないと意味がないですから。

奈良新聞:
 それで、納得していただいたということでしょうか。

知事:
 考えは理解していただき、納得していただけたと思います。今年行うかどうかについては、ご判断がおありになるようだということを申し上げているわけです。

奈良新聞:
 参考にさせていただく、という対応だったわけではないのですか。

知事:
 ちょっと違いますね。

奈良新聞:
 理解されたということですか。

知事:
 考え方について理解されたということは、賛同していただいたというふうに思います。反論はありませんでしたので、奈良県の考え方についてはそのとおりだと思っておられるという感触を受けました。ただし、今までのやり方を変えるという面があり、税制は理屈を立てないといけないので大変です。その点について、こういう説明すれば、前も今も正しいということが言えるというところまでは奈良県は考えていませんので、そのあたりに事務的な立場の抵抗があるのではないかという感じはします。

 税制は、あくまで納税者あってのものですし、配分基準については、地方の社会保障を担う立場の県知事としては理屈と透明性が絶対必要です。外国ではこのような議論はものすごく行われているんですけれども、日本ではこのような議論は難しくてあまりされないのです。このようなことは、奈良県が提起するまであまり触れた人はいないでしょう。ものすごく額が違ってくる可能性がありますから、ごく基本的なことだと私は思います。問題の提起は理屈ですから、どのような人でもできるわけです。外国では税制の議論はとても厳しく緻密であり、法に基づき、ローメーカーである日本でいえば議会が最終判断されるのが税制ですから、理屈で訴えるのが基本です。そのときの論理性と緻密性について、我々ももっと関心を持つ必要があると私は思っています。

 多少、奈良県の損得というのもあるんですけれども、そういうところから触発され、こんなに消費しているのに地方消費税の配分が少ないのではないかということから出発しているわけです。それが統計の取り方で揺らいでいるというのが基本的な主張です。ドイツのように、消費統計が不十分であれば人口基準で全て類推してやろうといったところまでは、日本はまだ割り切れていない。それを税制上は地方消費税という、独立税ではなく譲与税という形でやるとなっています。それは国の配分基準、使途に応じて配分するという空港整備税のように、空港の整備をするところに譲与税として税金を配分するというやり方は、予算ということに近くなるわけですけれども、それは使途中心の譲与税配分になるという主張もありますが、譲与税のほうが私は良いのではないかと思います。その使途を社会保障にするということであれば、少なくとも増税分については譲与税にすべきだと思います。社会保障財源に充てるということであれば人口を基準にすべきと、かつて主張しました。それは政治的に難しいということでしたので、現在の理屈の通らない配分基準について追及して主張しているということが、今年の訴え方、訴えの内容になっているわけです。

 税制は、公正感が必要ですので、不公正じゃないかと思われる税制はもたないということも言いました。消費税を増税すると言っているが、こんな理屈でもちますかとまで言いました。少し過激な言い方でしたが、そういうことを一生懸命訴えてきました。結果がうまくいくかどうかはまだわかりません。

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文化財に対する液体散布事件について

NHK:
 県内でまた文化財に液体がかけられてしまったということで、この事に対する受けとめと、今どういう対応をされているのか教えてください。

知事:
 文化財に液体がかけられたわけですが、しばらく前にも同様の事件がありました。仏像が狙われているということで、いろんな動機があるように思います。文化財の保護という立場は県もその役目を担っていますが、犯人の動機はどのようなものであっても、文化財の保護をしなければいけないということです。前回の事件が起こってから、県の補助で57基の防犯カメラの設置を進めました。しかし、防犯カメラはちょっと待てと声を発するわけではありませんので、防犯カメラの抑止力ということに頓着しない人はかまわず実行される。今回もそういうケースかもしれません。防犯カメラは、普通の場合は抑止力、防犯力があり、犯人逮捕にもつながるので、次の防犯ということにもなります。重要な文化財の監視をしてもらうという役目があります。

 それと、モナ・リザのケースがそうだったんですけれども、ガラスケースの中に入れてしまうという場合もあると思いますが、興福寺の阿修羅像などは、ガラスケースの中に入っていた像が露出されて、大変印象が深くなりましたので、ガラス越しではなく、直に見ることができるということはすごくいいことだと思っています。できれば、ガラスケースの中に入れないで見てもらえたら良いという気持ちのほうがもちろん強いんです。奈良には彫刻系の国宝が多くありますし、身近で見ることができるというのはとても印象深いことですので、それを維持しながら、今回のような事件が起こらないようにするということに苦慮しています。対策については文化財保護関係者、県、教育委員会が担っていますので、また協議してもらいたいと思っています。

NHK:
 その話を聞かれた瞬間には率直にどう思われたんですか。ニュースか何かで知られたと思いますが。

知事:
 前回もありましたが、今回もショックが大きいです。しかし、これは難しい問題で、先ほど申し上げた内容にある程度尽きるんですけれども、文化財にもっと親しんでもらいたいと思います。超国宝級というか、世界の国宝のようなものがすぐに見られるというのは、やはり感動の度合いが違いますので、それを維持したいと思いますけれども、その文化財がターゲットにされることもあります。昔、法隆寺の金堂壁画が焼けました。事件ではなく事故でしたが、焼失したことはとても残念です。文化財は本当にかけがえのないものですので、いい知恵が出ればと思います。99%以上の人はそのような危険性はないわけなんですが、ごくごく一部の人がそのような行為をされるということで残念に思います。何としても防がなければいけないと思います。

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県出先機関における労使協定未締結について

NHK:
 県の出先機関での労使協定について。出先機関と三六協定を結んでいなかったということで、今結んでいる最中だと思いますが、その背景事情と、これから県庁の労働環境、そしてリーダーシップをとっていく立場として、どのように臨まれるのか、聞かせてください。

知事:
 三六協定は労働基準法の現場で労使が結んで、働き方のルールを決めようという大事な協定です。言い方は少し荒っぽいですが、日本では、どちらかというと三六協定万能主義のようになってきて、労働基準法の適用の細則が、あまり法の規範としては展開されなかった嫌いがあります。個人的な意見としては、法の規範として働き方のルールを展開するほうが公正ではなかったのかと思います。それは、今の長時間労働あるいは過労死にもつながる日本の脆弱なところだと思います。

 私が国家公務員の頃は、労働基準法の適用がありませんでしたので、こき使われたというか、「こき働いた」という記憶がありますが、体力がなかったらもたない仕事です。皆さんもそのようなところがおありになるんじゃないかと思いますけれども、そのような労働規範だと、やはり今の時代、難しくなっているように思います。それが基本的な感想ということです。

 その三六協定というのは、働き方のルールを現場で決めなさいというパターン、あるいは判例が決めるパターン、法規範が決めるパターンの3つがあります。法規範があまりないから三六協定を決めなさい、あるいは三六協定がなくて紛争が起これば判例が決めるということが日本の労働規範の特徴でしたが、三六協定があれば、現場の規範であり、少なくとも目に見える規範となるので、三六協定があるほうが望ましいわけです。それがなかなか成立していなかったということは、現場の規範としてはあるけれども、文書化されていないということだったと思います。ですから、現場の規範である程度動いているので、日本人はそれでいいやと思っていたわけですけれども、例えば外国人労働者とか、その組織に属していない臨時雇いの労働者が来たときは戸惑うというのが職場の現状ですし、そんな大げさでなくても、その職場のルールになじむのに苦労されたり、なじめないといじめに遭ったりということが労働の現場ではあるのではないかと感じます。

 それで、三六協定をつくるようにという指示が国から出ていますが、基本的に三六協定はあるべきだと、管理者の立場で思っていました。三六協定は現場ごとにつくるということですので、出先事務所や病院などで就業規則などについての三六協定が必要だということは前から言っていました。これは労使の問題であり、管理者だけで決めるわけにいきません。管理者の通達ではありませんので、協議をして成立させなければいけないのでなかなか進みませんでした。改めて協議を進めて、一緒に働く規範を考えましょうという運動として取り組むようにお願いしています。

 これは、働く側の組合の人たち、組合として組織されてなくても、働く側の立場の人たちが何割か合意していただかなくてはいけません。やはり働き方について見直そうということにもつながりますので、ぜひ現場のほうで協議を進めていただきたい。三六協定は形だけつくっても、また上書き規範、上滑り規範みたいになっても困ります。この際、現実にいい働き方を考えて、例えば長時間労働是正というテーマもあると思いますし、産休というテーマもあると思います。すると臨時雇用と産休代替雇用も必要になってきますし、そのような現場では労働環境が違うこともありますので、働き方の現場での工夫をしてもらって三六協定を結ぶことができれば大変望ましいと、以前よりもさらに強く思います。

NHK:
 恐らく望ましいというより、今年度中にもう協定を結ぶんだというふうに担当課からは聞いているので、そのあたりの決意を改めて教えてください。

知事:
 現場がそう言ってくれるとうれしいです。私の指示の仕方は、とにかくいい働きかたを研究して、三六協定に結びつけばいいということで、もし時間のかかる職場があれば、作業をいつまでに結べと紙が出てきても大丈夫なのかと思わなければいけない立場でもあります。きちんと協議をして順々としてくださいとお願いしてきたんです。今年度中ということで協議が進んでいるということであれば大変うれしいことです。今年度中に結ぶという意欲が強いというのは、今初めて聞いたように思いますが、そうであれば大変結構なことだと思います。

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生駒市西松ケ丘の違法盛り土問題について

奈良テレビ:
 生駒市西松ケ丘の住宅地で無許可盛り土が行われている問題で、刑事告発を検討されているという報道があったと思うんですけれども、それは事実として間違いないでしょうか。

知事:
 その件は、かねてから問題になっていましたが、違法盛土の行為者が行方不明ということであります。もう一つの問題は、違法盛土が住民等の安全性に影響あるかどうかという課題ももちろんあります。許可を受けないで盛土をされたという点についての違法性を問うため、行為者が行方不明でも、その行為者に行政の意思が通じるよう公示送達の作業をしていましたが、12月にその効力が発生し、違法なことについての本人への指示が発効します。刑事告発についてはどういうことだったのか。

担当課:
 刑事告発も視野に入れて現在、公示送達の手続を進めているところです。

知事:
 刑事告発というところまで、事務的に視野に入れてということで、それは今の話の延長になるわけです。違法行為で盛り土しましたから、いつまでに是正をしなさいという是正命令を通達することになります。それがなされないと罪が発生しますが、その罪を判断するのは裁判所で、罪になるということ、法律違反だということを追及、訴追するのが警察・検察、関係する役所がこういう罪が発生していると言うことが告発です。告発を視野に入れるということは、是正命令に従わない法律違反が発生して、是正されれば罪までいかないということなので、是正がまず第一だと考えています。是正されない場合には法律違反による刑事告訴までいくという、担当課の意向があるということが、記事になっているんではないでしょうか。

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スイスベルン州訪問について

奈良新聞:
 先日のスイス訪問について何かお聞かせいただけるんでしょうか。

知事:
 スイス訪問についての率直な感想ですが、すごく実りがありました。ベルン州というのは立派な州なんです。スイスの人はとても生真面目です。日本人は生真面目だと思っていましたが、日本人よりも随分生真面目ですので、奈良県との友好提携協定を実りあるものにしようというベルン州担当者のすごく真面目な意欲を窺い、ありがたいことだと思いますが、びっくりもしました。段々と具体的にどのようにするのか、焦点が絞られてきました。

 1つは、もう既に始まっているところもあるんですけれども、来年度から本格的に始まる実習生の交換です。実習生を奈良から送る、スイスから日本に来ていただくということが具体的に進みそうであり、その分野は森林の実習、観光、職業教育です。職業教育の実習生の交換は来年度には進みそうです。

 その背景には、スイスは職能訓練がすごいんです。ドイツも進んでいると思いましたが、ドイツよりもはるかに進んでいます。スチューダー社という工作機械の現場を見に行って、ベルン州政府の説明を受けたんですけれども、スイスは大学進学一辺倒ではなく、職能訓練で働く訓練をしようということなんです。職能訓練の義務化があって、実習重視で3日から4日は現場で実習、1日、2日は座学をするということが法律できちんと決められており、実習の受け入れ先である民間の会社に学生が送られるんです。スチューダー社という工作機械の会社では、毎年80名ぐらいの実習生が来るんだそうです。週3日か4日実習をするんですけれども、その現場の作業の特徴は、4年間も行われるということ、手当というか、実際に作業を行うので、最初の1年は名目的でわずかですが、2年、3年、4年と手当が上がっていくということです。学びながら多少稼げるので、給付奨学金よりも効くのではないかという知恵があるようです。

 もう一つは、実習というとインターンのように感じますが、本質的に少し違うようで、lインターンだと実習先に就職前提で行くわけですが、スイスでは実習先で4年間実習を行ったからといって、例えばスチューダー社に80名行ったから、そこでみんな就職するかというと、そういうことではないんです。ほかで就職するという自由もある。職能訓練の一環ですから、そこで就職する人とほかに就職する人が分かれるんですけれども、そのスチューダー社のケースであれば、5割はそこで就職をしてくれると言っていました。これも一つのやり方です。インターンだと、就職に結びつくという効果もあるわけです。それが2つ目に驚いたことです。

 もう一つは、スイスの働き方改革に興味があり、聞いてみましたが、ドイツよりも進んでいるのは、3カ月でもう解雇ができるんです。解雇制限がほとんどなく、3カ月経てば通知するだけで解雇ができるというのがすごく大きなことです。スイスには外国人労働者もいるので、これが徹底しています。逆に、中途採用はしょっちゅうあるということです。65歳までが定年なので、この前は58歳のベテラン職人を雇ったと言っていました。労働市場にとても透明性がある、これも日本とも大いに違うところです。

 ドイツも2002年に1年半分の給料を払い金銭解雇を行えるようになりました。スイスは、解雇後の再就職の世話をするのかと聞くと、そんなことはしないという徹底した労働市場であることが印象的でした。その反面、職能教育はすごく充実しているということです。

 解雇などは労働市場の話で、また別の法制の話ですけれども、職能訓練に学ぶところは大きいと思います。実習生の交換は一つ大きいことだと思います。実習生の分野は、森林と観光と教育の職能教育一般ということです。

  もう一つは、森林について「リース・フォレスター養成校」に行きましたけれども、これも有力な提携相手です。フォレスター制度というものがありまして、森林の意味を、林業の木材生産と、治山治水の防災と、動植物の生態系維持、それからレクリエーション、この4つが森林の機能としてあるということは明確に意識されています。日本だと、木材生産は林野庁の所管、レクリエーション、治山治水は国土交通省の所管といったように、縦で分かれていますが、フォレスター制度というのをつくって、森林管理をその4つの目標のためにフォレスターに託しているということがわかりました。

 これを日本で採用できるかどうか。地方では採用できるかもしれませんが、スイスにはフォレスターの養成学校があります。奈良県では、「フォレスト・アカデミー」という名前でフォレスターの養成学校をつくろうとしており、これにぴったりの学校がスイスで見つかりましたので、その学校と提携を強化していきたいと思っています。「リース・フォレスター養成校」の学校の経営は、11のカントン(地方行政区画)の共同出資であり、広域連合なんです。11カントンの広域連合は、日本流の制度で広域連合でできている。奈良県では、これからですけれども、奈良県と和歌山県と三重県の広域連合でフォレスト・アカデミーがつくれないかと、より強く思いました。和歌山県と三重県の林業の担当者も参加していただきましたが、これから調整しなければいけません。近隣の県が広域連合でフォレスト・アカデミーができればと思っています。

 離れている県も参加した広域連合での学校の設立も可能ですが、そのような方向で、スイスではもうすでに11カントンで実行されています。その運営が黒字なんです。黒字というほどのマージンではないんですが、苦労されて赤字にはならない運営をされているというのも印象的で、その一つはいろんな教育事業をされているということ。宿舎を見せていただきましたが、立派な2階建ての学生の宿舎があるんですけれども、みんな木造なんです。3階建ての校舎も3階まで連なっている一本柱が何本も立って、地元の木を使い木造で建てておられるんです。宿舎も、隣接したところにあって、3人部屋の寄宿舎なんですけれども、大変安いんです。空いているときは観光用に貸すということです。いろんな事業の中で、宿泊、ホテルを兼業しているので、その収入もあり赤字になっていない経営をされているということです。その知恵がすばらしいと思いました。公立学校というのが前提のように思いますが、スイスの場合は官の民業のようなところもありまして、そういうことに知恵が出れば、広域連合のフォレスト・アカデミーも、赤字にならない運営がベルン州郊外の田舎ですができているので、運営についてあまり大きく打ち出さないで、地道にされているんだなと感じ、これはぜひ真似をしたいと思っています。森林の環境管理制度、フォレスター制度というのは権限が多いので、そのような制度ができるかどうかという点と、フォレスターのようなマインドを持った人を養成する教育機関をつくるということについては、大いに刺激をされました。

奈良新聞:
 今回は文書的な締結はなかったんですか。

知事:
 「リース・フォレスター養成校」と提携文書を締結しました。
 提携文は後で配付させていただきますが、今回はこちら側の趣向なんですけれども、吉野杉の板の協定書の上に直にサインをしてきました。写真を撮ってお配りすればよかったですね。

奈良新聞:
 そうですか。発表案件で発表していただいたほうがよかったかもしれません。

知事:
 そうですね。では、報道資料としてすぐにつくります。とりわけ「リース・フォレスター養成校との提携」ということについても資料を作成します。

奈良新聞:
 今回は、15日から行かれたのですか。

知事:
 15日から行って、19日の朝に帰ってきました。

 それから、スイスの議会は上下院があって、全州議会と言っていますが、日本の参議院に当たる、上院の議長が、奈良にたまたま来られていた後だったので、議長が、我々奈良県の一行を議場の中まで案内してくれました。大変ざっくばらんに案内してもらいました。建物はすごく立派なんですけれども、議場は非常に簡素で身近にできていました。上院議員の議員数は44名ですので、県議会と同じ定数ですが、議場は奈良県よりもやや小ぶりのようで、傍聴席も同じフロアにあるんです。傍聴はどうするんですかと聞くと、同じ議場に座るということなんです。

 直接民主主義という印象が物凄くありました。今、スイスでは原子力発電をやめるというレファレンダム(国民投票)が間もなく行われるということです。レファレンダムがあっても、議会の議決が要るので、すぐにはいかないようですけれども、そういう直接民主主義が非常に盛んな国であるのが印象的でした。今後は、実習生の交換や、「リース・フォレスター養成校」との協定で、「フォレスト・アカデミー」に向けて協定を強化していきたいと思って帰ってまいりました。

司会:
 ほかにご質問はよろしいでしょうか。
 幹事者さん、よろしいでしょうか。
 それでは、これで知事定例記者会見を終了させていただきます。ありがとうございました。

知事:
 ありがとうございました。

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(発言内容については、読みやすくするために、広報広聴課で編集しています。)

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